moto
2025-08-11 13:43:29
826文字
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夏の午後

さまささワンドロワンライお題「とける」「ハンバーグ」


カーテンの裾から白い塊が溶けだしている。室内はエアコンがよく効き冷えているというのに、なぜ、わざわざ夏の太陽がジリジリと照らす窓際で寝ているのだろうか。左馬刻、一度呼んでもなんの反応もなし。左馬刻、左馬刻〜と何度か呼ぶと、渋々というように毛長のしっぽがパタパタと動いた。
「そこ暑いやろ。もっとこっち来ぃや」
 ようやくのそりとカーテンの裾からふさふさの顔が覗いた。寝起きのせいなのか目つきがかなり悪い。そしてかなり不本意そうに見える。ナーと言いながら大きくあくびをし、そのままパタリと横になる。簓の言うことなどまるで聞く気はないようだ。猫も熱中症になるんやで〜と簓は左馬刻を抱き上げた。溶ける身体は柔らかく、うねうねと簓の腕から逃れると肩へ回り、軽々と床に着地した。フン!と鼻息荒くそこへ横になる。
「ほら〜毛があちあちのあっちっちーやんか」
 無防備に伸びゆく身体を、簓が撫でると、ますます伸びていく。ついでにブラッシングしてやろうとブラシを持ち出す。とめどなく毛が抜けていく。左馬刻は簓のブラッシングを気に入っているので大人しく気持ち良さそうにしている。
「なあ、左馬刻。今日の晩御飯はハンバーグにしよかと思ってんねん。チーズも入れたろかな〜。のせるのもええけど、中から溶けたチーズが出てきたらむっちゃテンション上がらへん?」
 毛はどんどん抜ける。左馬刻はゴロゴロと喉を鳴らしている。

 目を開けると、目の前になんとも言えない顔をしている左馬刻がいる。簓の手はそんな左馬刻の髪をわしゃわしゃにしていた。
「あれ……おはよぉ?」
「はよ」
 簓の手から逃れた左馬刻が身体を起こし、乱れた髪をかきあげる。いつもの夢か。猫の左馬刻シリーズ。簓は笑みをもらして、手を伸ばす。
「なあ、左馬刻。今日の晩御飯はハンバーグがええな。チーズ入っとるやつ」
「朝からもう晩飯の話かよ」
 左馬刻は呆れながらも、再びわしゃわしゃと大人しく撫でられている。