たくとろ
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ロイリコ夏2025 episode1「海」

成長if・平和になった世界・ポケモン全員進化済み

ラクリウムを巡った冒険から数年、自由気ままに冒険を続けるライジングボルテッカーズは、山と海に挟まれたミサキタウンにやってきている。今夜ここで行うぐるみんのイベントのため、彼らは昨晩からこの町に滞在している。ドットはある程度の打ち合わせを済ませ、今日はみんなでイベントまでの時間を海で過ごすことになった。
海に到着して早々に、輝かしい海にウルトが勢いよく飛び込んだ。ドットもウェーニバルに引っ張られて海にダイブ。オリオとモリーはそんな様子を眺めながらパラソルを張る。フリードとマードックはキャップとサーフゴーと共にサーフィンへ。ランドウは腰を痛めてお留守番中だ。海に入る前にロイはストレッチをしていた。しっかり体をほぐして準備万端。その背後から砂を踏む音がした。

ロイ、お待たせ」
「あ、リコ!やっときた」

後ろを振り返ると、水着姿のリコが右手で左腕を掴みながら立っていた。リコの白い肌を守るのは真っ黒な水着。胸の方には小さいひらひらのレースがついていて風に揺れている。髪はリボンでまとめずストレートに流されている。

「変じゃないかな
「すっごく似合ってるよ!なんか大人っぽくてカッコいいね。それに綺麗だよ」
「ありがとうえへへ」

ロイの言葉を聞いてリコはやっと自然な笑みを見せた。ロイの視線は彼女に釘付けになっている。一方リコは少しロイから視線を逸らした。何か変だと感じて、ロイはすぐに聞いた。

「リコ、どうしたの?」
「あそのロイの体こんなに筋肉ついてたんだって思ってなんか見ちゃいけないような
「あはは、なにそれ。こんなのマードックに比べたら全然だよ」
「そうかもだけど!」

そういうことじゃない!!とリコは口に出せない気持ちを抱えてプルプルと震える。そんなリコを笑いながらロイは言った。

「僕はリコの方が見ていいのか分かんないんだけど
それは見てほしいですロイに見せるために選んだから
「!?は、はい」

せっかく潮風が心地いいのに、双方顔が真っ赤だ。思わぬことを言われて混乱しているロイと、かなり正直に言ってしまったリコ。しかし視線をどこかへやることもできず、相手の赤い顔をじっと見つめている。パラソルの下で二人を見ていたオリオとモリーはニヤニヤ笑ってお互いに親指を立てた。しばらくリコたちが見つめ合っていると、マスカーニャが花を爆発させた。いつまでやってんだと言いたげな様子だ。

行こっか、リコ」
「うん」

海に入ったロイは潜って辺りを見回す。すると岩に張り付いたカメテテを見つけた。すぐにそばにいたリコを呼んで二人でカメテテの元に向かった。流れてきた海藻をパクパクと食べている姿がかわいらしい。リコとロイは顔を見合わせて微笑む。しばらく観察して、二人は一度海上に出た。すると、二人の元にウルトの声が響いた。

「おーい!ロイ!リコ!ビーチバレーしようぜ!!」

二人は頷いて砂浜に戻った。早速ゲーム開始だ。チーム分けはリコ、ウルトのAチームとロイ、ドットのBチームだ。審判はモリーが務め、ポケモンたちはパラソルに入ってのんびり観戦する。リコもリボンで髪を結び、先攻はAチーム。ウルトが強烈なサーブを打ち込んだ。しかしこれはロイがしっかりとレシーブした。

「ドット!」
「オッケー。よし、行けロイ!」

ドットからのトスを受けてロイがスパイクを叩き込む。ボールはリコとウルトの間をすり抜け、砂を弾いた。

「イン」
「ナイスロイ!」
「ドットもアシストありがと!」
「くっそーやられた!」
「ウルト、切り替えていこう」

続いてロイのサーブ。リコが受け止め、ウルトが高く上げる。スパイクを打つためにジャンプしたリコに合わせてロイもブロックに出る。しかしそんな彼の目にある光景が映った。ボールとは別に揺れるもの。その谷に一瞬目を奪われてロイの思考が止まった。

「そこ!!」

真剣にコートの隙間を捉えていたリコは勢いよくスパイクを決めた。ドットがいるのと正反対を正確に打ち抜き、見事一点を返した。着地したリコとロイは互いに顔を合わせる。

「えへへ、これでおあいこだね!」
そうだね」
「?どうしたの?」
「いやあはは」

アレに気を取られて反応しきれなかったなんて言えるわけがない。次から後ろで守備しようロイは振り返って歩き、ドットと場所を交代する。そんな不自然な様子のロイをサーフィンから戻ってきたフリードとマードックも見ていた。

「はは。ロイのやつも男になったなあ」
「ありゃもうブロックは使えないな」

かくしてラリー再開。後ろに下がったロイを避け、この中で一番体力の少ないドットを容赦無く狙うリコとウルト。しかしロイがすかさずカバーに入って一進一退の攻防が続く。時にはラリーが十回以上にも及び、いつの間にかギャラリーも増えた。そして、ついに勝負が決着する。

「ここだ!!」
「させない!!」

ロイが打ったボールをリコがブロックして弾く。しかし落ちた先はドットの頭上だった。ドットは再度ロイにトスを上げる。リコより早く着地したロイはすぐにもう一度飛び上がり、ボールを叩く。誰もいないコートの死角。ウルトが滑り込むも、かろうじて触れたボールはコートの外へと飛んでいった。

「勝者、Bチーム」
「やったあ!ドット、ハイタッチ!」
「ああ。ナイスファイト」
「がーーー!!負けたあ!!」
「惜しかったね

パチパチと拍手が響く。中には黄色い声援も混じっていて、ロイは少々困惑している。悔しがるウルトはもう一戦だ!とロイたちに持ちかけたが、ドットは体力の限界。リコも疲れたのでビーチバレーはお開きとなった。ネットを片付けてドットはパラソルに入った。

「ドット、大丈夫?」
「うんでも動きすぎたかも喉乾いた」
「じゃあ私、海の家でジュース買ってくるよ」
「僕も一緒に行くよ。みんなの分買おう」

するとルカリオとグレンアルマも手を挙げた。どうやらついてきてくれるらしい。荷物持ちの手が増えるのは助かる。リコとロイは二匹を連れて出発した。道中、楽しげに話すリコとロイを見ながらルカリオとグレンアルマは話していた。ルカリオ曰く、今日の二人の波動はかなり激しく揺れているらしい。それを聞いて、確かにブリムオンも似たような話をしていたとグレンアルマは納得した。実際、二人ともいつも仲がいいし、時々変になっているが、今日は一段と気持ちが昂っているのは見ていても分かる話だ。そうして海の家に辿り着いてジュースを買った。ポケモンたちの分もあるのでかなりの数だ。四つの袋に分けてもらい、それぞれ一つずつ持ってみんなの元に歩き出した。しかし、しばらくしたところでリコが足を止めた。

「ごめんロイ私ちょっとお手洗いに行きたい
「分かった。じゃあリコの分ちょうだい。先に戻っとくね」
「ありがとう」

リコから袋を一つ受け取ったロイは再び歩き出した。みんなの元に戻ったロイと二匹はジュースを配る。ごくごくと飲んだドットは生き返ってすっきりした様子だ。ロイもジュースを口にして一息つく。やっぱりみんなで過ごす海は楽しい。自然と頬が緩んだ。
十五分ほどして、フリードは再びサーフボードを手に取った。今度はウルトとオリオも行くみたいだ。ウェーニバルもドットの手を引っ張って誘っている。準備を終えたフリードがロイに聞く。

「ロイはどうする?」
「うーんまだリコが戻ってきてないし
「そういや遅いな」
「何かに巻き込まれてなければいいが
「リコなら大丈夫だと思うけど僕探してくる」

トイレに行っただけにしては遅い。あまり体調が悪かったようには見えないけど、やっぱり心配だ。ロイは駆け足で海の家の方へ向かった。早速着いて辺りを見回すと、リコを発見した。その周囲には数人の男が立っている。

「ねえいいじゃん、俺らと遊ぼうよ」
「一人なんでしょ?楽しいことしようぜ」
「いやあの
「色っぽい水着してさあナンパ待ちだったんじゃないの?」

自分より背の高い男に囲まれ、周りには頼れる人もポケモンもいない状況。みんなで来てることを説明しようとしても、言葉を遮られて話せない。徐々に距離を詰められ、後ろは壁で逃げ場はない。力では絶対に勝てないからもし腕を掴まれたら逃げられない。リコは恐怖で足が震えていた。

「なあ、そろそろ気持ち決まったっしょ?」
「い、いや!」
「えー俺らもできれば強引なのは〜」

段々と迫られてリコは下を向いて竦んだ。助けてロイ声にならない想いを浮かべた時、声がすると同時に足に砂がかかった。

「やめろ!!」

顔を上げると、目の前にはロイの背中があった。大きく頼りになるそれが、一瞬にしてリコの震えを止めた。ほんとに、きてくれた。

「ああ?なんだよお前」
「この子は僕の彼女だから。手を出さないで」
「ロイ

後ろ姿しか見えないけれど、きっとロイは怒ってこの人たちを睨みつけてる。私を守ろうとしてくれてる。彼女彼女あくまでこの人たちを追い払うための嘘だって分かってても、体が熱くなって勝手に動く。リコは俯いてロイの腕にしがみついた。顔をもう一度上げると、ロイがこっちを向いて微笑んでいる。すぐにまた男たちの方を向いたロイは彼らを強く睨む。

「分かった?さっさと離れて」
「ちっマジで彼氏かよ行くぞ」

男たちはリコとロイから離れてどこかへ歩いていった。遠くへ行ったのを確認して、ロイはリコの方を向いた。その表情は優しい。

「リコ、大丈夫?」
「うんロイ、心配して戻ってきてくれたんだね。ありがとう。上手く逃げられなくて困ってたんだ」
「ううん。僕がリコのこと置いてったのがいけなかったよ。少しくらい待つべきだった。ごめんね、怖い思いさせて」

ああ、ロイはほんとに優しいな。ロイは何も悪くないのに、守ってくれただけで嬉しいのに。余計この腕を離したくなくなっちゃう。

「そうだ。彼氏とか、勝手に言ってごめんね。周りの人にも聞かれたかな
「それは全然でも、またああいう風に話しかけられるかもしれないしロイがよければ今日一日だけ彼氏のフリ続けてくれないかな?」

ずるい。こんな提案をするのはずるい。ロイの優しさに甘えて自分のしたいこと押しつけてる。こんなの、本当はダメなのに。
ロイの目には上目遣いで甘えるリコが映っていた。不安げで申し訳なさげで、きっといいことだとは思ってない、そんな顔。でも、リコには安心して笑っていてほしい。それに、このお願いはちょっと嬉しい。

「いいよ。じゃあ僕はリコの一日彼氏だね」
「ほ、ほんとにいいの?」
「ああ。リコのこと、もう一人にしないからね」
!うんありがとう、ロイ」

組んだ腕はそのまま、二人は笑顔を向け合った。そしてみんなの元に並んで歩いていく。早く戻ってみんなを安心させたいけれど、歩幅は小さく、緩やかな速さで。もう少しだけ、二人だけの時間を続けていたいから。


次回、「肝試し」に続く。