Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ゆうな
2025-08-10 20:18:51
3193文字
Public
Clear cache
【噂】
轟が爆豪のことをとっても好き。プロヒ両片想いばくとど。
#爆轟版深夜の真剣60分一本勝負
◆Pixiv:ログ3に格納済み
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26846867
爆豪に、告白をしようと決めていた。
長年秘めてきた想いを、今日こそ伝えるつもりだった。
「ごちそうさまでした。今日も美味かった」
「たりめーだ」
今夜だって誘われて、爆豪の住むマンションで夕飯を済ませたばかり。飯は作ってくれるから洗い物は俺の役目で、勝手知ったる我が家のようにスポンジを手に取り洗剤を泡立てる。
こうしている間に爆豪は風呂に向かうのがお決まりの流れだ。俺は洗い物を終えたらすぐに帰るか、ちょっと寛いでコーヒーを飲んだりして過ごして、たまにソファで寝落ちた日なんかはそのまま泊めてもらったりと、だいぶ甘やかされているなという自覚はあった。
俺の知る限り、爆豪がこうやって頻繁に時間を共にする相手は他にいない。だからちょっと安心していたし、なんとなく爆豪も俺のことを好いてくれている気がしていた。だから今日、俺は爆豪に告白するつもりで家に来た。
それなのに。それなのに、だ。
いつもならさっさと風呂場へと向かう爆豪が、キッチンの柱に体を預け、腕を組んで俺の横顔をじっと見つめている。
「なあ。俺たち噂されてるらしいんだわ」
「噂? なんて」
シンクの中で泡に塗れた食器が増えていく。
お、この皿、俺が石川で手作りした土産だ。さっき爆豪が取り皿に使ってくれてたやつ。ずっと大事に使ってくれてるみたいで嬉しい。
たったそれだけで心がふわりと浮き立った気がして、静めるように泡を洗い流す。
「付き合ってるんじゃねーかって」
つるりと落としそうになったコップをすんでのところでキャッチする。これは爆豪が俺用に買ってくれたやつだ。こんなところで割るわけにはいかない。まだ二回しか使ってないのに。
いや、そうじゃなくって。爆豪、今なんて?
「誰と、誰が」
水を止めて爆豪を見る。赤い瞳はいつもと変わらず俺のことをまっすぐに見つめ返す。
「だから、おまえと、俺が」
「どうして」
「こないだ拡散されてた動画」
すぐに思い出した。先週、居酒屋で一緒に夕飯を食っていたときのことだ。カウンターで隣に座り話を聞いていた爆豪が、ふと俺の口元についていた米粒を取った。かき込んだ丼飯の、タレが染み込んだ一粒。思わず指先を目で追うと、爆豪はなんの躊躇いもなくそれを自分の口に入れたのだ。
彼は少し潔癖のきらいがあると思っていたから驚いたけれど、あまりにナチュラルにするものだから、俺は一言礼だけしてそのまま会話を続けた。
その一連の流れを、その場にいた一般人が隠し撮り(真似しちゃダメだ)してSNSにアップし、瞬く間に拡散されたらしい。と、ここまではサイドキックから聞いていたが、まさかそんな風に騒がれていたなんてまったく知らなかった。
「あんなことで
……
」
ほとんど独り言みたいだったからか返事は返ってこなくて、代わりに綺麗な眉間に皺が刻まれる。見たことがない表情だった。
あ、嫌だったのか。俺とそういう噂されるの。
そのことに気付いてしまい、浮かれた心が今度は確実に全部排水口に流れて落ちていった。好かれているだなんて、とんだ自惚れだったみたいだ。唇をぎゅっと噛んでシンクに視線を落とす。
離れない爆豪の視線が痛いのか、自分の胸の奥が締め付けられる痛みなのかわからなかった。
「あんなこと、ねえ」
爆豪がはあっと息を吐き視界の端から姿を消した。風呂に向かったのだろう。俺は最後に残った小鍋をスポンジで擦る。
さっきおかわりまでした和風スープは優しい味付けで、俺好みだと伝えたら、爆豪が、俺も好き、とぽつり呟いていたのが遠い昔のことのようだ。つい力を込めた拍子に跳ねた泡が頬に当たる。今日はもう帰れと言われているようで、余計に虚しさが込み上げてくる。食器は綺麗になったというのに、俺の心は曇った硝子みたいに霞んでいた。
もしOKをもらえたら、寝落ちしなくても泊まれたりできるのだろうかとか、二人の時間が増えたりするのだろうかとか、勝手に想像を膨らませていた。
でも今日俺が告白をしてしまったら、まるで噂に煽られて流れで言ったみたいだ。爆豪にそんな気持ちは無かったというのに、一人で浮かれて恥ずかしい。帰って頭を冷やすべきだろう。リュック型のヒーロースーツを肩に掛け、玄関で靴を履こうとしたそのとき。
轟まだいんの?
爆豪の声が響いた。風呂場からだ。洗面所の扉を開けて、どうした? と声をかけるとシャワーの音が止まる。
「わりー洗顔切れたから取って。洗面台の下の扉、上の段の左。青いやつ」
しゃがみ込んでそれらしき物を探す。風呂は何度か借りているけど、さすがにこんなところを漁るのは初めてだ。
掃除用の洗剤が俺の使っているのと同じ物だったり、奥の方に髭剃りのシェーバーが転がってたりしたけど、目当ての洗顔は見当たらない。尋ねようと顔を上げると、むわっとした湯気と共に爆豪が現れて「お」と間抜けな声が出た。
洗い場から目線を合わせて扉の中を覗き込む爆豪に「遅くてわりぃ、でも洗顔ねェぞ」と伝える。ポタポタと髪の先から雫を落としながら、奥に光る瞳がゆっくりと俺を見た。
ひた、と頬に手が触れて肩が揺れる。そのままぐいっと肌を拭われた。どうやら顔に泡が付いたままだったらしい。勝手にうるさくなる心臓を必死に抑える。
「おまえ、ここになんか付けんの好きな」
爆豪が形の良い眉を少し下げた。
あまり見せないその笑い方が、俺は大好きで。
「轟」
厚い手のひらは離れようとしない。あたたかい水滴が顎まで伝う。
「俺と噂流れんの、いや?」
「っそんなわけない」
「じゃあなんで」
おまえに告白しようとしていたから、とは言えなくて、でももうここまで言えば勘の良い爆豪なら気付くはずだ。それでも俺に言わせようとしてくるちょっと意地悪なところも、俺はたまらなく好きだった。爆豪の好きなところばかりが、しゅわしゅわと生まれる炭酸みたいに次々と浮かんでくる。
今日は言えないと、帰ろうとまでしていたのに。
気恥ずかしさに顔を逸らす。けれど垂れる赤髪を耳に掛けられながら「とどろき、おしえて」ともう一度。
そんな風に呼ばれてしまったら俺が無視できないことを、爆豪は絶対にわかっている。
顔を上げる。視線が絡む。爆豪は、俺を見つめる時の顔をしていた。見慣れた顔だった。
でも、その赤い瞳がこんなにも優しい眼差しだったことを、俺はたった今知ったのだ。ずっとずっと爆豪は、この目で俺を見ていたのだ。
喉が詰まりそうな感覚を飲み込んで、声を絞り出す。
「
……
ばくごうのことが、好きだって、今日言おうとしてたんだ」
ぽろりとこぼれたような告白に、爆豪はぱちりと目を瞬かせる。
「あー
……
噂話がキッカケみたいになるのが嫌だったんか」
全部わかってくれていることが嬉しくて、じわじわと目の奥が熱くなる。こくりと頷いて「そんな噂されなくたって俺はおまえのことがとっくに好きなのに」と白状する。止めることなんてできやしない。
爆豪は少し口を尖らせた後に目を細めて「頑固なやつ」と笑った。
「俺はクソ鈍感なてめェが少しは意識すっかなと思って『あんなこと』したけど」
余計だったかもな?
ぐっと引き寄せられるとシャツがぐっしょりと濡れて肌にまとわりつく。
「俺も好きだよ、轟のこと」
鼻の奥がツンとする。ああ、もう、このままじゃ帰れない。乾燥機でも部屋干しでもなくて、明日、外で干したこの服が太陽のにおいでいっぱいになるその時まで、二人の時間を過ごしていたい。
ず、と鼻を啜って、とりあえず服着ろよ、と裸の背中を叩く。
洗顔ちゃんと探せやとびしょ濡れの体で押してくる姿さえも愛おしくって、きっと俺も爆豪と同じ目をしているのだろうなと思った。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内