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ふじしろ
2025-08-10 19:53:28
2735文字
Public
浄皇
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【8/31サンプル】naught
浄皇/R-18/A5/本文38ページ/400円
希死念慮を持つ少女と浄皇紀の話。
・生死感を扱っています。特に浄さんの解釈が酷いです。
・アンネームドのモブキャラ、カオワが出てきます。
・襲い受があります。
上記について問題ないという方に少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。
※サンプルはどなたでもご覧頂けます
「今日は皇紀の話を聞くまで帰らないよ」
そう言ってすっかり出来上がった静流は俺の顔を睨む。
静流の飲みに行こうと言う誘いは割と頻繁にあり大半は無視するなり適当にあしらって有耶無耶にするのだが、それでもどうしても引かないことがあってたまに付き合わされる羽目になる。
今日も久しぶりに断り切れずに静流に付き合わされて娯楽地区にある朝までやっている居酒屋で二人で飲んでいた。
平日の日付も変わった深夜だが給料日直後だからだろうか、店は意外に多くの客で賑わってた。
適当に騒がしい店内は居心地は悪くなかった。
彼と飲む時は大抵は静流がずっと取り留めもない話をして俺がそれを聞いているということが多いのだが、何故か今日の彼は俺に喋らせたいらしい。
面倒な絡みだなと黙っていると静流は酔って据わった目で再び俺を睨みつけてきた。
「なぁ、聞いてる?」
唇を尖らせ彼は俺のグラスを持つ手を掴んで乱暴に揺すった。
たまには話を聞きたい、彼にもそういう日があるのだろうか、相変わらず俺を睨む静流の顔を眺めそういえばと思う。
そういえば静流になら話してみたいことがあった。
とは言え本当に話すかと言えば答えはノーだ。
しかしこれだけ酔っていれば寝て起きたら全部忘れてしまうだろう。
「気になるヤツがいる」
そう切り出すと静流は目を輝かせて話に乗ってきた。
(中略)
ウィズダムの営業中、テーブルについていた宗雲が席を立つのが目に入った。
エージェントからの連絡ではないか、そう思いレディに断りを入れてバックヤードに引っ込んだ宗雲を追う。
思った通り宗雲はライダーフォンを耳に当て会話をしているようだった。
「気遣いは不要だ。俺たちで向かう」
その後多少のやり取りをして宗雲はライダーフォンを耳から離した。
「カオストーンが見つかったのかい」
声を掛けると宗雲は少し驚いた顔をして俺を見た。
「ああ。今回のローテーションは颯と皇紀だが
……
」
そう言うと宗雲は言葉を詰まらせた。
今日の予約状況が頭に浮かんでいるのだろう。
既にそれなりに遅い時間だから皇紀の方は問題ないだろうが颯は予約が詰まっているはずだ。
「良ければ俺が行こう」
「お前もまだ予約が入っているだろう」
「多少時間をもらえれば何とでもするさ」
俺の申し出に宗雲は顎に手を添えて少し考えている様子だった。
商業地区において多くの小売店が店を閉めたあとの時間にカオストーンの情報が上がることは少ないが、もしあればエージェントはウィズダム営業中であっても真っ先に俺たちに連絡をくれる。
カオストーンはどのライダーたちも欲しがっているものだ、得るチャンスは当然逃したくはない。
だからその公平性は俺たちがエージェントを信頼する理由の一つだ。
ロッカールームへと向かい、スマホを手にレディたちへと連絡を開始する。
程なくして戻ると宗雲は驚いた顔を見せた。
「もう終わったのか?」
「ああ。埋め合わせを約束してリスケしてもらったよ」
「一体どう話をしたらこんなにスムーズに行くんだ?」
「実家の犬が死にそうだって言ったのさ。みんな快く応じてくれたよ」
そう言うと宗雲は心底呆れたような顔をして、俺のいない間に来ていた皇紀は嫌そうに顔を歪めた。
皇紀はこういう嘘には嫌悪感を示すのか、なるほどと思う。
もっとも嘘としても品のないものだ、別におかしなことではない。
ただそれでも何となく気になった、それだけだ。
「それじゃあ、行ってくるとしますか」
何事もなかったかのように言うと、皇紀は小さく舌打ちをして俺の後に続いた。
Siruの情報を元に裏通りを進むと細い脇道の奥に店の照明や看板に照らし出された見慣れた緑色の入口を見つける。
場所的にあのカフェからそう離れていない。
俺の脳裏にカフェで時間を潰している少女の姿が過ぎった。
「おい、行くぞ」
皇紀は顎で入口を示しながら俺を見る。
そのまま入口に向かっていく彼の後を追い掛けた。
■
「これは
……
」
浄が小さく呟く。
入口に入った際に包まれた眩い光が晴れて目を開けるとそこには今まで見たことのない光景が広がっていた。
浄も言葉に詰まったのかそれ以上何も言わずに辺りを見回しているが、俺もそれは同じだった。
石の色だろう、僅かに緑がかった空間は透明で何も無い世界。
言い表すならそういうことなのだろう。
この場に立ってはいるものの、足下にもただ透明な空間が広がっているだけで奇妙な感覚を覚えた。
服装は変わっていない。
第二世代ってヤツではないのか、しかしそう考えるのは早急な気がした。
それくらい何も無いこの空間は異質に思えた。
何も無いならば逆に垂直に立てたりするのだろうか。
そう思って片足を上げ、足裏を着けそうな面を探す。
しかし足先は空を切るだけで、見えない面は別に存在しないようだった。
「天地はあるんだな」
「確かに浮いているという感じではないね」
浄の言葉にそうだなと思う。
天地もあって重力も存在し空気もある。
何も無いというのは見た目だけのことなのかもしれない、そう思った。
「しかしこのカオスワールドの主を探さなきゃいけないが、どうしたものかな」
僅かに首を傾げ、顎に手を添えながら浄は言う。
確かに見ている限り三六〇度同じ景色が広がっているだけでどこに向かったらいいのか判断出来そうにない。
だが本当に何も無いわけではない、ならば何か感じ取れるのではないか。
俺はそのままゆっくりと瞼を閉じ、気を落ち着けるために小さく息を吐いた。
山で獣の気配を探すように神経を尖らせる。
「あっちだな」
目を開け微かに何かの気配を感じた気がした方へと顔を向けると、浄は驚いたように目を見開いた。
「さすがだな」
感心したように声を上げる彼を横目にフンと鼻を鳴らしてみせる。
結局他に当てもなく、取りあえず二人でその方向へと歩き出す。
少し歩いても景色は何も変わらず、このカオスワールドはどのくらい広いのだろうと考える。
歩いている間珍しく浄は何も話さず、ただ真っ直ぐ前を向いていた。
もしかしたらこの場所に何か思うことがあるのだろうか。
ヤツが喋らないのは何だかかえって落ち着かない、何とも言いようのない不安のような気持ちが胸を過ぎる。
どのくらい歩いただろう、十分か十五分といったところだろうか、遠くにぼんやりと影を捉えた。
そのまま進んでいくと影は人の形になり、そこには膝を抱えて座っている人間がいた。
着ているものは学校の制服のようだ、スカートを履いているから女性なのだろう。
頭を膝に付けた彼女の顔からはカオスが生成される際に見られるモヤが立ち上っていた。
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