Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
傘道
2025-08-10 13:16:05
2413文字
Public
ビリイト
Clear cache
鉄屑が遺す手紙
オクヤマさん(
https://x.com/okuyama786?s=21
)へのプレゼント小説です。
znzrの🔫🔦です。
いつか鉄屑になったら。
それでも隣にいることができるだろうか?
「パイセン、なまったっすね。」
郊外で久しぶりに会った後輩から言われた言葉。
なまった。
確かに鈍ったかもしれない。
確かに弱くなったかもしれない。
もうライトが憧れる先輩じゃなくなったかもしれない。
理由はよく分からないが、その事実で論理コアが痛いほど鼓動する。
火力制圧用高知能戦術素体から戦闘能力を取り上げたら何が残るんだろう?
「俺が戦えなくなったらどうなるんだろうな?」
ビリーはビデオ屋の店長にそう話しかけた。
アキラはキョトンとした顔で、入り口の扉に寄りかかる機械人を見つめた。
「急にどうしたんだい?」
「いや、俺から戦闘を取り上げたら何が残るんだろうなぁって思ってな。」
「スターライトナイトとモニカ様の大ファンというとびっきりの個性があるだろ?」
「んー、そうなんだが
…
仮に俺が戦えなくなったら
…
俺、邪兎屋に居られないじゃないか。店長と一緒に仕事できないんじゃないか
…
」
俯いた機械人にアキラは涼しげな表情を崩す。
「本当にどうしたんだい?もしかしてどこか調子が悪いのかい?もし悪いならエンゾウさんかグレースさんに診てもらおう。」
「いや、身体の調子は問題ないんだ。ただ俺弱くなっちまったから
…
いつかスクラップになるかもな。」
その時が来たらどうしよう。
そう呟いたビリーの元にアキラは駆け出す。
「ちょっとセンチメンタルになってるかもしれない。何か気が紛れるものでも観よう。そうだ、ビリーの大好きなスターライトナイトの映画を今から観ようよ。」
だからそんな寂しいことを言わないでくれ。
そう言ってアキラはビリーの手を引いて、2階に連れて行った。
二人は知らない。
入り口の扉の向こうにビリーの後輩であるライトが居たことを。
そして二人の会話を聞いていたことを。
拝啓
ニコの親分へ
拝啓
アンビーへ
拝啓
猫又へ
拝啓
店長へ
拝啓
おやっさんへ
拝啓
アネゴへ
拝啓
ライトへ
ビリーは手紙を書いた。
内容は自分が出会えてどれだけ幸せだったか。
どんなに楽しかったか。
思い出を書いた。
ニコの手紙には、ビリーの私物は親分のものにして売ってくれと書いた。
少しでも邪兎屋の経営を助けてくれたらいい。
アキラの手紙には、スターライトナイトの特別版を返すと書いた。
アンビーに譲ることも考えたが、貴重なものをくれた店長に返して店の売り上げに貢献できたらいい。
最後にライトの手紙を書いた。
思い出を書いて、書いて。
最後に「弱くなってごめんな。」と書いた。
弱い先輩からもらって嬉しくないかもしれないけど、それでも楽しかった思い出を伝えたかったから。
これで思い残すことは無くなった。
あとは手紙を届ければ、いつスクラップになっても大丈夫だ。
ビリーが書いたのは手紙ではなく、遺書だった。
スクラップになったら俺はどうなるんだろう?
スターライトナイトが掲げる星のように夜空に浮かぶことができるだろうか?
ビリーは新エリー都の星空を見つめた。
都会の光が邪魔してうまく星が見えない。
それでも黄色のアイライトには星が見えていた。
「パイセン!」
幻聴なのか後輩の声が聴こえた。
「ライト
…
弱くなってごめんな。」
幻聴に答えたのは手紙に書いた締めの言葉。
弱くなって、憧れじゃなくなって。
謝罪の言葉を発した。
「パイセン!」
ライトがビリーの肩を掴む。
揺さぶられて幻覚ではないことを理解した。
「ライト!?」
「パイセン!」
ずっと後輩が自分を呼ぶ。
ジャケットが皺になるくらい握りしめられた。
「どうしてここに
…
あ、でもよかった。」
ビリーはなぜか泣きそうな顔になっている後輩に3枚の手紙を渡した。
「これおやっさんとアネゴとライトに書いた手紙。郊外にいつ行くか迷ってたんだ。受け取ってくれ。」
ライトは震える手で手紙を受け取った。
「俺がスクラップになったら開けてくれ。」
ビリーがさらりと重いお願いをするとライトがさらに震えた。
手紙を落としそうになるのをなんとか堪えて、ビリーを見る。
「俺のせいっすか
…
」
「ライトのせいじゃねーよ。俺が弱くなったのは事実だし、こんな世の中だ。いつスクラップになってもおかしくないんだよ。」
思いを残す良い機会だった。
だから気づかせてくれてありがとう。
そう伝えるとライトはビリーに抱きついた。
「郊外にいた時より弱くなったかもしれないけど、アンタが俺の憧れであることは変わりないんだ!」
赤いジャケットに顔を埋めて、悲痛な叫びを上げる後輩を見てビリーは戸惑う。
「俺から戦闘を取り上げたら何が残る?」
「戦闘ができなくても、弱くなっても
…
消えないでください。パイセンに惚れてるんです。ビリー・キッドが好きなんです!」
あぁ、火力制圧用高知能戦術素体でも先代のチャンピオンでもないんだ。
ライトはただのビリー・キッドが憧れで好きなのだ。
「なんでだろうなぁ。」
ビリーはライトを抱き返しながら、夜空を見上げた。
「心残りはないはずだったのに
…
なんかまだスクラップになりたくねぇ。」
手紙を贈る予定だったみんなの顔を思い出す。
ライトだけじゃなくて、みんなただのビリー・キッドを愛してくれるだろうか?
「ライト、手紙を受け取ってくれ。何も残せないのは嫌なんだ。でもすぐにスクラップになるつもりはない。ずっと先のことになるかもしれないけど、手紙を持ってくれると嬉しいぜ。」
ライトはジャケットに顔を埋めながら頷いた。
ジャケットが熱い雫で濡れる。
星たちが二人を見守っていた。
どうか鉄屑の私を愛してください。
どうかいつまでも私の憧れでいてください。
どうか手紙の封を切る日がずっと先でいてください。
どうか少しでも長い時間貴方と一緒に居させてください。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内