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ユズリハ
2025-08-10 00:45:53
796文字
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十分間
暑さでぼんやりしているおちょもだ!
お題:彼女/これを自分のものにしてしまいたい、とぼんやり考える山鳥毛の話
遠くから蝉の鳴く声が聞こえる。山の方からだろう。
気休めにもならぬ温い風が山鳥毛の頬を撫ぜ、通り過ぎていった。ため息をひとつ吐き、顎を伝った汗を日頃よりやや乱雑に拭った。
山鳥毛は小鳥を待っていた。目の前には、ふたつ置かれた氷水のグラス。小鳥は冷やした果物を取りに行くと山鳥毛に伝え、席を立った。そろそろ5分程経つ。
からり。溶けて崩れた氷が音を立てた。グラスの外側に隙間なく付いた水滴が集まり、伝う。唾を飲んだ。喉は渇いている。
にも関わらず、山鳥毛は手を伸ばさない。小鳥が戻ってきて、空になったグラスを見れば、今度は水を取りに行ってしまうだろうと考えたからだ。
グラスから無理やり目線を剥がし、窓の外へ目をやる。サングラス越しに目を刺す烈日と、木の根元で真っ黒に蟠る影。葉は憎らしいほど青々として、空は顔料を塗りたくったかのように青かった。そうして遠くに見える、眩しいほどに真っ白な入道雲に目を細めた。眇めたと言った方が近いだろう。
不毛な暇潰しの後に、どうしても視線が氷水に惹きつけられる。含めばきっと、喉から胃まで冷やして通り抜けるであろうと思われた。目を伏せて、小鳥の通り抜けた廊下を見やる。きっと小鳥も責めはしない。むしろ、これは山鳥毛自身の、くだらない格好付けであった。わかっている。自嘲のため息を小さく零して、グラスをつかんだ。
「お待たせしました、山鳥毛さん!」
つかんだ。そのままの姿勢で、廊下の方を振り向く。やや歪に切り分けられた西瓜と、塩の小瓶と、氷水の入ったピッチャーを両手に抱えて、待ち侘びた小鳥がそこにいた。
「
——
いいや、少しも」
手に付いた水滴を手拭いで軽く拭い、立ち上がって、いかにも重たげな大荷物を取り上げてやる。
「さあ、座りなさい。暑かっただろう」
ほっとしたように小鳥が笑う。ああ。喉の渇きなどよりも、余程。
遠くから、蝉の鳴く声が聞こえる。
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