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横井
2025-08-09 14:38:50
1897文字
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CONCLAVE
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ベニロレ(7)
ベニロレ。謎AU。ベニロレ同棲してくれ〜という話。
【彼について】
ローレンスはベニテスの家に訪れることを、最初は渋っていた。そしてようやく招かれてくれたと思ったら、軽くお茶をした後、さっさと帰ってしまうのだった。ローレンスの行動はベニテスを真剣に悩ませた。脈無しなのだろうか、と同僚に相談したこともあった。だが長く悩めない性分のベニテスは、ローレンスに率直に聞くことにした。
「トマス。もしわたしの誘いが負担ならば、あなたへの思いは永久に封印しますし、ただの友人として振る舞うことを約束します」
ベニテスの言葉に、ローレンスは青ざめ、とんでもない、と首を横に振った。それからしばらく逡巡すると、ようやく重たい口を開いた。
「神経質すぎる、とよく言われるんです。だから、あなたに鬱陶しく思われないか、心配で」
不安そうに、ボソボソと告白する年上の男性を、可愛らしいと思いこそすれ、どうやって嫌いになれるだろうか。ローレンスに言ってあげたかった。あなたの目の前にいる男は、それすら美点にできるほどあなたに惚れ込んでいるのだと。
そういった騒動があって、ようやくローレンスはベニテスの部屋に訪れてくれるようになったのだ。よりプライベートな空間で過ごすようになって、わかったことがある。ローレンスは床を踏み抜くような大きな足音を嫌うこと。その日の洗い物を、次の日に持ち越したくないこと。扉をちゃんと閉めないと気が済まないこと。そして、扉をちゃんと閉めないベニテスに対して、密かに苛ついていること。
その日の夜半、ベニテスは物音で目を覚ました。サイドテーブルに置いた時計に目をやると、寝入ってからそんなに時間は経っていない。隣に目をやると、ベッドが人一人分だけ凹んだまま、シーツは冷たくなっていた。ベニテスはシーツにくるまったまま、物音に耳をすませる。きっちりと閉まった扉の向こうから、シンクに水を流し、皿を洗う音がする。見ると、サイドテーブルに置いてあったワイングラスや皿は片付けられ、床に脱ぎ散らかした服は全て拾われて椅子にかかっていた。
昨晩はベニテスの家で食事を楽しんで、ワインを飲んで、キスをしてお互いの服を脱がしあった。事が終わった後、気だるげに起き上がり、皿を片付けようとするローレンスをベッドの中から引き留めた。ローレンスの凍てついた湖のような青い瞳を、まだ見ていたかったのだ。
「明日わたしが片付けますよ。疲れたでしょう。さあトマス。もう寝ましょう」
ローレンスは不承不承同意して一緒に寝入ったはずだったが、やはり我慢できずに起きたらしかった。ベニテスは人知れず、シーツの中で微笑んだ。
確かに、ローレンスは人を苛つかせるほど神経質と言えた。それでも、ベニテスは家に残るローレンスの気配が好きだった。蔵書が何冊か抜き取られていること。キッチン棚のスパイスの位置が変わっていること。紅茶のティーバッグがいつの間にか置いてあること。ベニテスにとって、家に招きたいと思うほど親密になった男性は、ローレンスが初めてだった。そして、ベッドに誘いたいと欲求を感じたのも。
小さな足音をさせて、ローレンスが戻ってきた。ベニテスのガウンを羽織っていたが、彼には少し小さくて袖も足りていないし裾からは膝小僧が覗いていた。ローレンスがベッドに入り存外たくましい腕がベニテスを引き寄せる。ひんやりしたローレンスの肌に、ベニテスの体温がうつり段々と溶け合っていく。うっとりするほど心地良い。ローレンスは、ベニテスの一部になりつつあった。
翌朝、ローレンスは先に起きていて、鏡の前で身支度を整えていた。シェービングクリームで顎を真っ白に塗りたくり、カミソリを滑らせている。単身用アパートメントの洗面所はこじんまりしている。ベニテスがいてもいなくても、ローレンスは狭い洗面台に立つ時ベニテス用のスペースをいつも開けていた。そこにおさまって、朝の冷たい水で顔を洗った。顔をあげ、鏡を見る。肌の色も髪の色も目の色も違う二人の男が、一緒の額の中に写っている。ベニテスはなにより、この光景が好きだった。
「わたしたち、一緒に住みませんか」
「はあ。いいんじゃないですか、ヴィンセント」
ローレンスについて追加情報。集中している時はあまり人の話を聞いていないこと。そして適当に返事をすること。
「イエスってことでいいの?」
「
……
え?」
ローレンスがぽかんとした顔をして、手を止める。一瞬考え込んだかと思うと、急に顔を横に向けた。真っ白なシェービングクリームの中に、鮮やかな赤い血が一筋流れている。
「ええっ?」
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