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めめた
2025-08-09 12:48:10
1042文字
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シルセベ:聞こえる
息抜きにかいたやつ。みじか〜い
痛いほどに手を握られて、振りほどく気にもならなかった。
まっすぐに見つめてくる瞳は懇願していて、気分は悪くない。いつだって先輩風を吹かせるその態度が、今だけは形を潜める。勝ち誇った気になって、迫る唇を迎えようとした。
「っ待て
……
!」
迫る口元を片手で押さえて、息を潜めた。とく、とく。鼓動の音が聞こえる。平時よりも少し早いリズムは、緊張と期待を孕んでいる。
「なぜだ? セベク」
押さえた手は簡単に剥がされて、その手のひらにキスをされる。
カツン
――
と、音が聞こえたのにシルバーは反応して、改めてセベクを見た。
床を蹴る靴の音はやがて遠ざかっていく。
「もういいか?」
握ったままの手にすり寄ってシルバーは言う。自分の呼吸の音があからさまに驚いたように鳴って、セベクは居たたまれなくなった。
「駄目だ
……
まだ」
遠くに話し声が聞こえる。こちらに向かってくる様子は無く、きっと談話室から聞こえる声だ。
「これでは何時まで経っても出来ないじゃないか」
寮内のいつ誰が通るともわからない場所で触れ合おうなどと試みるのが間違いだ。けれど、そうでもしなければ人目のない場所なんてものは滅多に無く、一向に触れ合いが出来ないことには変わりない。
コツ、と自分が鳴らした音にも反応をしてしまうのを情けなく思うが、今、自分がどんな顔をしているのかを想像すると過敏にもなる。
こんな姿、目の前の男以外には見せたく無いのだ。絶対に。
「こんなところで
……
っ!」
まだ寮生の活動が多い時間では無理だ。そう思ってセベクはシルバーの身体を押し退けようとしたが、耳輪を撫でられて口を噤んだ。
「嫌だ」
シルバーを良い奴だなどと言う者は多いが、ただ頑固で融通の利かない奴だ。とセベクは思う。
耳を撫でた手がそのまま、耳朶を揉んで、手のひらが全体を包む。
「これで聞こえないか?」
片耳を塞がれて、逆の耳元で唇の紡ぐ音が吹き込まれる。鼓動の音が聞こえなくなり、吐息の音が代わりに聞こえた。
「俺の音だけ、聞いていろ」
聞き慣れた声に、舌が動く音と唇が動く音が混ざって聞こえて身を捩る。
逃がすまいと、シルバーの手が両耳を塞ぎ、次いで唇がセベクのそれを塞いだ。
くちゅ
――
唾液の絡まる音、舌がうごめく音。頭の中で響いて逃げ場を無くし、思考がままならない。
「セベク
……
」
至近距離で呼ぶ声は耳を塞がれていてもよく聞こえた。その声色までもが、ハッキリと、それだけが響いた。
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