三毛田
2025-08-08 22:09:48
1073文字
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78 078. ぽつりと落ちたインク

78日目
それは君の色

「やっべ」
 流行りのガラスペンとインクで、丹恒へラブレターを書いていた。
 のだが、付けたインクが多かったようで垂れてしまう。
「書き直しだ〜」
 ついでに言うと、三枚目。
 一つ目は下書き。まあこれはカウントしなくてもいいか。
 二つ目は、力が入りすぎて途中で破けた。穴を開けてしまったというのが正しいかも。
「はーい。開いてます」
「パムからおやつを預かってきた。せめて紙は一カ所にまとめておけ。滑って転んだら、痛いのはお前だ」
「わかってるよ」
 ノックの後、入ってきたのはお盆を手にした丹恒。
 床に散らばる未使用の紙を見て、小言が入る。
 手早く片付け、インクの蓋も確認してから道具と共に端へ寄せ。
「ホットケーキだ!」
 金色の蜂蜜が、角切りバターの上から流れ落ちている、アニメとか本で見かけるソレ。
「飲み物はアイスココア。召し上がれ。と言っていた」
「い、いただきます!」
 四枚重ねのホットケーキは、ふわふわで。ナイフを入れると、少し反発。
 でも、下まで入れてしまえばこっちのもの。
 断面に、溶けたバターとはちみつが垂れていって。
「ん~!」
 切り分けたもの射、溶けて柔らかくなった蜂蜜とバターを絡めてから口へ運べば。
 俺の語彙力では表現できない幸福が、口の中へと広がっていく。
「ところで。これは何だ?」
「あ! 丹恒、読んじゃ駄目!」
 俺が声を上げると、驚いたようにビクッと肩を揺らし。
「な、なんで」
「お前に渡すラブレターだから、まだ駄目」
「それを俺に言っていいのか」
「何も教えないで渡すよりは、いいかなって。丹恒は、ホットケーキは?」
「一切れもらおう。違う。一枚分だけだ」
 三枚ほどフォークに刺して差し出すと、一枚でいいと言われてしまった。
 残念。美味しいのに。
「ああ。パムが焼いたものは美味いな」
 ホットケーキで気がそれたのか、ラブレターの事はそれ以上追及されなかった。
「うーん……全部食べたら、夕飯入らないかも」
「そう言うと思って、実はおかずも貰ってきてある」
「丹恒の分のご飯は?」
「おにぎりを」
「一口」
 肩をすくめた後と、おにぎりを包んでいたラップを開いて俺の口元へ。
「から揚げだぁ」
 嬉しくてだらしない声が出てしまった。生姜醤油味のから揚げを頬張る俺に、丹恒はくすっと笑い、自分もから揚げを口へ。
 碧のインクが、雫のように垂れた失敗した用紙が視界の端に映っている。
 丹恒のイメージカラー。俺の好きな色の一つ。
「穹?」
「丹恒の事、好きだなって」
「そうか」