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溶けかけ。
2025-08-08 21:29:59
991文字
Public
夏の花短編 『翠雨』
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たまにはみんなで
朝顔と帰省と拙宅ヌフ家族の話。
もうすぐお盆休みですね。
「はぁ
……
」
ヌヴィレットは深い溜息をついた。
朝焼け色の瞳の先には蔓を伸ばしてはあっちにくるくる、こっちにくるくると絡みついては花を咲かせるものがいた。
「キミの瞳と同じ色の花だ。
……
綺麗だろう?」なんて、いつかの彼女の言葉が甦る。
「
……
採種をしなかったのは私の落ち度だが」
少しばかり伸びすぎだ。
ヌヴィレットは花の端を探してふわりと浮かび上がると家の周りを旋回する。どうやら、かなり繁茂しているらしい。緑のカーテンと言えば聞こえは良いが家の中が暗くて敵わない。後で文句の一つでも言っておくか、と頭の中で書き留める。
「ネモフィラといい
……
手のかかるものばかり遺したものだ」
油断も隙もあったものではない。「キミも外を歩いて、人々と仲良くなるべきだ」と主張していたくせに、これではおちおち旅行にも行っていられない。
モーニンググローリー──稲妻での名を朝顔。どちらも朝に咲くから、という安直な理由で付けられた名だ。「分かりやすさは大事だよ」──想像のフリーナが呆れ顔で宣った。
「まったく
……
」
鋏を手に陽の光を獲られずに色を変えた葉を切り捨てていく。水を遣り、陽の光を浴びた花弁と葉はなんとなく喜んでいるように見えた。夏のぎらぎらとした太陽に焼かれながら、ふぅ、と一息ついたヌヴィレットの額にはじんわりと汗が滲む。人と違い熱中症になることはないとはいえ、休んだ方がいいかもしれない。
──休みも大事! プラカード掲げたフリーナの姿が頭を過ぎる。分かった、分かった、と苦笑いをしながら藤棚の下へと身を隠して、ベンチへと腰を下ろせば、聞き馴染みのある軽い足音とあどけなさを残す男女の声が聞こえてきた。
「そういえば、今日は来ると言っていたな」
ここ数日、忙しくしていてすっかり忘れていた。冷蔵用のマシナリーの中身を思い浮かべ、水しか入っていないことを思い出し唇を引き結ぶ。「食事は三食しっかり摂れって言っただろう!?」と記憶のフリーナが目蓋の裏で騒ぎ出した。
「すまないとは思っている
……
」
遠くから自身を呼ぶ声が聞こえてきて、ヌヴィレットは目蓋を上げて、立ち上がる。
帰ってきたばかりの子供たちには悪いが、買い物に付き合ってもらおう。
家族四人で食卓を囲むのは実に久しぶりのことなのだから。
朝顔(桃色)の花言葉「安らぎに満ち足りた気分」
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