syanpon
2025-08-07 22:44:35
835文字
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僕の特権

オトスバ
現パロ


 ナツキスバルの声は大きい。

 いつもリアクションは全力で身振り手振りまで使ってその時の感情を表現してくる。
 だから彼が近くにいる時はすぐにわかるのだ。
 僕が彼に告白をした時、ボタボタと効果音がつきそうなくらいに泣いてたのは今でも記憶に新しい。
 そんな彼であるから恋人同士のそういったふれあいの時だって大きな声をあげるのかな、なんてことを思っていたのだ。

「オットー」
「はい、なんですか?」

 2人横並びに座ってる中彼が僕に声をかけてくる。
 黒瞳がこちらを向いたから僕は彼に向かって腕を広げた。彼はクスクスと笑いながら僕の腕の中に倒れ込む。
 ぎゅうと抱きすくめると自分の心臓の音まで聞こえてきそうだった。

……おっとー」
「はい、僕ですよ」

 普段の彼の声はよく響く大きな声なのにこの時だけ、僕と2人きりの時だけはとびきり小さくなる。その声を聞き漏らさないように、控えめに甘えようとしてくる彼の望みを聞くのがどうしようもなく楽しい。

 だってこれは僕だけの特権であるから

……なぁ、もうちょいだけ、つよく」

 彼のおねだりはいつもささやかだ。以前は自分からこういうことは言ってくれなかったんだから大変な進歩だと思う。隙間がないくらいに彼の体を抱きしめて、見た目よりもずっと細くて柔らかな髪を撫で付けれると人慣れした猫みたいに僕の手に頭を擦り寄せてくる。

 「頭撫でられんの、すき」

 ふにゃふにゃと小さな声で教えてくれる。
 ……こういう時に僕はどうしていいのかわからなくなってしまう。

 好きです、なんて言葉じゃこの特別感を彼に伝えられないような気がして。かといってこの感情を正確に伝えることができる言葉がこの世に本当にあるのかだって疑わしい。

……好きです」

 結局は月並みな言葉しか出なくて、彼よりもずっと小さな声だったかもしれない。ただ、抱きしめた腕の中で笑い声が聞こえたから。
 それでよしとしてしまうのだ。