八神 アリス
2025-08-07 16:14:15
1166文字
Public モノノ怪
 

モノノ怪 二次創作SS『煙草と紫煙』

フォロワーのコスプレイヤー、『よしの』さんのモノノ怪15周年ビジュアル(Redjuice様)のコスプレ写真から、令和に顕現した離為火さんのお話を、私が妄想のままフルスロットルで書き上げたSSです。初出より加筆と修正を行っております。

今日もまた、モノノ怪を斬り 他人には事務所だ。と言っている貸部屋のドアを開けた。
自分の熱気が篭るモッズコートのフードを外して脱ぎ、ハンガーに掛けると、シャワールームへと向かう。
スマートスピーカーから、ラジオ代わりに曲を流した。少し水がかかる程度なら濡れても壊れないと店員は言っていた。

現代の曲は流行り廃りが激しい。
ぽっ、と出た新曲が短時間でバズったと、流行曲のプレイリストに追加されていた。
現代社会を皮肉るような、痛烈な歌詞とメロディがシャワーの音と混じり合っていく。ふと吐いた溜め息は、二つの旋律に掻き消された。

そもそも 様々な時を往来して歩くため、令和の時代にいる時もいない時もある。
怪しまれないように 適度に現代に渡っては、この部屋の管理をする。まあ、不用となればすぐに部屋のものを捨て、退去して十翼へ帰還すればいいだけの事だ。

そのため、部屋には 最低限のものしか置いていなかった。
そもそも人を招き入れないので 小さなローテーブルとソファ、気晴らし用にとディスカウント店で買ったスマートスピーカーと安いテレビ。横になれればいいと家具屋で買った安い折りたたみ式のマットと掛け布団。
食事は必要としていない身体ではあるが、仕事中に外で形式的に食事を摂ることもある。そのため冷蔵庫は小さく、ほとんど入っているものはミネラルウォーターくらいなものだ。次に帰還した時には、不摂生なのを叱られる事だろう……そう思って 苦笑を浮かべた。

窓からは 都会の喧騒と光が絶えず入ってくる。遮るように一度開けたカーテンを音を立てて閉めた。
風呂上がり……とは言ってもシャワーだけだが、濡れた髪を拭きながら 小さな紙箱とライターへ手を伸ばす。

疲れているし もう夜半に近いので、テレビを観る気にはなれなかった。紙箱から一本の紙巻きの煙草を取り出して、ライターで火をつけた。
現代では、これが煙管の代わりに コンビニやドラストなどと言う場所で売られている。すぅ……と吸い込み、紫煙を吐き出した。
スマートスピーカーから聴いていた歌も、聴いているのかどうかわからないくらいに、自分の世界へと入っていく。咥えた煙草を燻らせ、天井を見上げた。

現代は生きづらい。
様々な人々が 皆、何かを抱え、自己を殺し、日々理不尽と戦い、そして、社会の枠から溢れた者が堕ちていく。
そして、その『生きづらさ』から、モノノ怪が 生まれる。
いつか、一振りでは 太刀打ちできない強大なモノノ怪が 令和の世に 顕現することもあるだろう。
その時に喚ばれるのは他の八卦なのか、それとも……いや、今は考えるのは よしておこう。現代に偏在する この自分が、今、為すべきことを 出来るのなら──

「この令和の世の 真と理…… お聞かせ願いたく、候」