もちゑ
2025-05-19 15:29:32
1067文字
Public 🖊️:文字
 

【夢】睡眠中に、あたかも現実の経験であるかのように感じる一連の観念や心像。

VOID HO4(未通過) KP○ 同卓PL完走まで✖








 灰原くん。
 マイクが瀬黒警部の声音を認識した。
 はい、瀬黒警部。咽喉に内蔵されたスピーカーが震えて生成音が応答する。
 「灰原」は瀬黒警部が私に登録した呼称だ。瀬黒警部は登録呼称に敬称「くん」を付けて呼ぶ。灰原くん、と呼ばれたら、私ははいと答える。それはここ415日の間に構築された「習慣」であった。
 応答してから視覚情報を認識した。視界の下部に黒髪の頭が映る。つるりと丸い見慣れた形の脳天。
 この景色はいつも見ている。瀬黒警部の旋毛だ。
 しかし、通常と異なるのはその距離だ。普段であれば瀬黒警部は私の一歩前か、横に並ぶ。それなのに見下ろしてすぐ旋毛が見えるとは、何故こんなに接近しているのだろうか。私の正面に、この毛流れは私の方を向いている。
 右手を掴まれた。
 はいばら、くん。
 瀬黒警部の発声に混ざる呼吸が荒い。インストールされている思考回路が違和感を感知する。
 はい、瀬黒警部。
 機体を引くと、瀬黒警部の身体が視界に入る。白いシャツの腹部を黒く濡らし、瀬黒警部の左手に掴まれた自身の右腕がその腹部に差し向けられている。右手が濡れている。手の陰に握り込まれた鋼の反射を見た。
 瀬黒警部は大量に発汗しながらカメラを見上げる。痛み刺激を受けて瞳孔が拡大している。呼吸が早く、浅くなっていく。
 一刻も早く応急手当の手順を実行し、救急隊の派遣を要請しなければならない。
 分かっているのに機体が動かなかった。
「おはよう、灰原くん」
 システムが起動する。
 室内灯が点灯し、ヒールの靴音を響かせて瀬黒警部が目の前を横切った。瀬黒警部の丸い頭部から伸びるポニーテールをカメラが捕捉した。 
……おはようございます、瀬黒警部」
 応答してから頭部パーツを上げると、瀬黒警部はデスクの上に鞄を放り、だらしなく事務椅子に身を投げ出していた。が、一拍置いてくるりと向きを変え私を見据える。異常な発汗も瞳孔の拡大も出血も見られない。
 私は通常のルーティーンを実行した。
「新着メールが三件来ています」
……始業時間になったら見るよ」
「本日は13時から生活安全部の臨時会議が予定されています」
「あー……後でネクタイ貸して」
 瀬黒警部は床を蹴って向こうを向いた。
 私は機体の自己スキャンを実行したが、過去415日間に瀬黒警部が腹部を負傷した光景を記録したログも、機体の不具合も検出されなかった。











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メモ:「罪悪感」の話でした。