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usagipai
2025-08-07 00:55:12
1030文字
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うちよそ
風鈴が鳴ったのは、もう何度目だろう。
夜の帳が完全に落ちて、「ももやえ」は世界で一番静かな場所になった。
てまりは、二人の間に座らされていた。
背中に晨焔の胸、視界に黎昊の優しい微笑み。
そのどちらからも逃げられない。けれど、不思議と怖くはなかった。
てまり「
……
あの、私
……
」
晨焔「“まだ早い”とか言うなよ。わかってる」
黎昊「
…
」
その言葉に、てまりの胸がきゅっと鳴った。
逃げたいわけじゃない。
ただ、初めてだから、どうしていいかわからなくて。
でも──手を握られて、抱きしめられて、キスをされて。
“愛されている”と確かに感じた。
てまり「
……
おふたりとも、優しいですね」
晨焔「違う
……
お前には、優しくしたくなるだけ」
黎昊「
……
優しくされるの、慣れてないのは俺たちの方だ」
手が、そっと彼女の頬を撫でた。
頬から顎、そして耳へ。
もう片方の手は背中を包むように──言葉の代わりに、温もりが語る。
晨焔「なあ、てまり
……
今夜だけは、逃げるな」
「逃げても追うけど
……
それじゃ、可哀想だからさ」
てまりは静かに、こくん、と頷いた。
顔を赤らめながらも、どこか覚悟を決めたように。
てまり「
……
いま、ちょっとだけ
……
怖いです
…
でも」
てまり「ふたりに、優しくされたら
……
そのうち、慣れちゃう気がするの
…
」
黎昊「
……
慣れろ。ずっと、俺たちに優しくされていればいい
…
」
晨焔「ははっ
…
あと
……
欲張り言うなら、俺たちにも、優しくしろよな」
そっと、着物の襟が落とされた。
肌に触れる指先は、ひどく丁寧で──どこまでも熱かった。
唇が、項に触れる。
背後の晨焔が、ふうっと息を吹きかけるだけで、てまりの体が震える
晨焔「こんなに柔らかいの、ずるい」
黎昊「ッ
………
」
そっと、胸元に落とされたキスは、信じられないほど優しかった。
言葉でなく、肌で伝えてくる愛情。
それがどれほど強く、深く、そして
――
重いか。
けれど、てまりは逃げなかった。
壊されるのではなく、きっと、この人たちの中でしか生きられないとわかっていたから。
てまり「
……
黎昊様、晨焔様
……
」
てまり「わたし、もう逃げません。今夜は──ここにいますから」
二人の顔が重なって、彼女の唇に優しいキスを落とした。
一度、また一度。
ぬるい春の夜に、三人の熱だけが濃く、やわらかく交じっていく。
──誰にも、邪魔されない世界だった。
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