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やまだ
2025-08-06 22:22:55
1782文字
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FGO
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FGO インドラ様の話
「ほんとにアルジュナとそっくりですねえ、笑顔」
神々の王たるインドラは、藤丸立香なる人間の小娘がそう囀った瞬間に彼女の頭を鷲掴んだ。小さく軽い頭だ。インドラの片手で覆ってなお余る。
「あいだだだっ」
「神が肘置きに使ってやろうというのだ、その光栄を歓喜とともに浴せばよかろう。
……
して藤丸、なんだ、その
……
直言を許すゆえ」
インドラの立香を掴む指先に力が込もり、再び立香がぐええと鳴いた。
「先の発言について、神に詳しく話してみるがよい」
「詳しくも何も。そのままの話なんですが
……
」
食堂で酒宴を設けていたところを翌日の仕込みがあるからとエプロンを装着した複数のサーヴァントに追い立てられ、神に対してよくもこのような仕打ちを酒瓶を手に歩いていたらこの娘と行きあった。これ幸いと立香の部屋に案内させて酒を飲んでいたのだ。酒のつまみ代わりにと供された菓子は安っぽく軽薄な味がするものばかりだったが、逆にそれがインドラには物珍しい。
気が利くではないか、と誉めてやったのだったか。
ラージャ・インドラたる自分がまさか仏頂面で人間に褒詞をくれてやるような狭量をするわけがない。機嫌も持ち直していたので、それなりの顔をしていたのだろう。
「そっくりですよ、ちょっと目尻がくしゃっとなって、口角が上がって綺麗な三角形の口で大笑いした顔。あ、あと爆笑するときに顎を引くのも」
「神は爆笑などしない」
「もう初めてここに来た日のことをお忘れで⁉︎」
「そのような些事などいちいち覚えていられるか。
……
しかし、そうか。
……
似ているか、神とアルジュナは」
アルジュナは数多の人間や神々に愛された大英雄であるが、その中でもやはり両親や兄弟からの影響は大きかったはずだ。インドラなど、彼らと比してみれば我が子の人生にほとんど関わりがないようなものだ。彼を母の胎へ授けた瞬間が最大風速だったのではという気すらする。
立派なクシャトリヤとなったアルジュナを天界へ招いたときですら、父子らしい会話などまったくできなかった。
息子はかわいい。だが積み重なったあれやこれやで気後れして、それを伝えるのも憚られる。我が子アルジュナのさわやかな挙措に対して舌をもつれさせるおのれの、なんとふがいないことか。
だがそれでもこの人間は、インドラとアルジュナは似ていると言う。
「そっくりですよ」
立香は素直に頷いた。決して頭に乗ったインドラの手がそうさせたわけではない動きだった。
「あのう、インドラ神」
インドラの手を頭に乗せたまま、立香はテーブルに広がった菓子を頬張りはじめる。目線を向けると口をもぐもぐさせながら首を少し傾げた。
「もしお望みでしたら、アルジュナの近くのお部屋をご用意しますが」
「バッ
……
そういうことはもっと段階を踏んでからだな
……
!」
「アルジュナからもそういう提案がありまして。部屋が近いと、酔い潰れたインドラ神の世話に都合がいいからって」
「
…………
」
「インドラし
……
な、泣いてる
……
」
「少し黙っていろ」
ぽりぽりさくさくと軽い音の響く中、インドラは酒杯を放した手でしばし目頭を揉んだ。別に泣いてなんかない。いささか酒精が目に染みただけだ。これっぽっちも傷ついてなんかない。だって神だから。
「
……
アルジュナは凄く強くて、優しくて頭もよくて、とっても頼もしいサーヴァントです」
インドラの手の下で立香はビスケットを食べている。
「さもありなん。神の子である」
「それと、頑張り屋さんだから、たまに考えすぎちゃったり無理することがあります」
インドラが手を引いても、立香は変わらずビスケットを食べている。さくさくぽりぽりいうその音を肴に、インドラは酒を飲んだ。
「そういうところまで似なくていいんだよって、アルジュナに言ってあげてください。インドラ神」
「神に命ずるか。藤丸」
「これはお願いです。神様に、大事な友達のお父さんにお願いしてます」
インドラは返事をする前に酒を飲んだ。杯を干し、にこにこ笑う立香を見下ろし、そして薄く笑う。
「神とはすべからく人の願いに応えるもの。まして我が子の友からの願いとなれば、無視もできまい」
ありがとうございます、と言って立香も屈託なく笑った。
「その顔もアルジュナそっくりですよ、インドラ神」
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