三毛田
2025-08-06 22:18:32
1094文字
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76 076. たまには君からのキス

76日目
たまには望んでもいいだろう

「丹恒先生、ん〜」
「なんだその顔は」
「ちゅ〜してよ、ちゅ〜」
 唇を突き出しながら迫ると、嫌そうな表情を浮かべて俺の顔を手で押し返す。
「丹恒がちゅ〜してくれないなら、俺からちゅ〜しますけど?」
「やめてくれ。必要ないだろう」
 凄い拒絶された。
 これで傷つくほど、やわではない。基本塩対応の丹恒に対して、いちいち傷ついていたら精神的にも身体的にももたないし。
「ちゅ~」
「だから」
 拒絶するように差し出した掌に、キス。
 驚いたように目を丸くさせ、急いでひっこめると消毒薬を振りまいて。
 そ、そんなに嫌だったのか!? と、それだけはショックだった。
「丹恒、ちゅ~」
 彼と前よりは仲良くなれた頃。同じようにキスを迫る。
……そんなにキスをしたいのか」
「うん!」
 元気に返事をすると、呆れたように深いため息。
「ほら」
 頬を差し出してきたので、そこにキス。
「丹恒も、ほら」
 俺が頬を差し出すと、躊躇いがちに一瞬だけ唇を触れさせ。
 すぐに離れてしまう。
 残念だと思っていると、耳が赤くなっていることに気づいた。
「可愛い」
 それが聞こえたようで、キッとこちらを睨む。
 素知らぬ顔で口笛を吹く。
「丹恒、チューして」
「仕方ないな。ほら」
 キスしていい? って聞くよりも前にキスしてって告げれば。
 本を閉じて己の太腿を叩く。
 内心ドキドキバクバクしながら丹恒の膝に跨って顔を差し出す。
 額から順に、瞼、花、頬、顎。それから唇へ。
「きゅう」
 優しく柔らかく、甘い声。
 恋人になってくれた蒼龍ちゃんは、俺に甘い。でろっでろに甘い。
 俺からキスしても嬉しそうにしてくれるし、俺にキスしてくれる時なんかもうこっちが恥ずかしくなるくらい蕩けた優しい目を向けてくれる。
「穹、好きだ」
「お、俺も」
 普段ならば、こんなに素直に俺への好意を口にするわけないのに。
 まあ、向けてもらえるのは嬉しいけれど、ちょっとだけ複雑だ。
「今日は、キスしてくれないのか?」
「する! します! させてください!!」
 食い気味に告げればクスクス笑い。
 そっと目を閉じてキスを待つ。
 えっろ。
 その言葉を飲み込み、そっと唇を重ね。
 数回啄むように唇をつつくと、背中に腕が回って。
「痛い痛い痛い!」
 掌ごと背中に食い込むかと思った。
 バシッバシと、不機嫌なのかよくわからない勢いで尻尾を床に叩きつけ。
「丹恒先生?」
「そのキスは、あまり好きではない」
 不満そうに唇を曲げていた。可愛すぎだろ。
「じゃあ、軽め?」
「舌も入れていい」
「は、はい」