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せつが
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8/3伊剣ワンドロワンライお題「装い新たに」おまけ
ワンライ「装い新たに」のおまけです。
その後のふたり。お気持ち情事のにおいあり。
あのあとどうなっちゃうの? という余韻はなくなるのでご注意ください。
セイバーの性別はどちらでも。
祝祭の場を抜けだし、喧騒の残る廊下を歩きながら、ふたりは言の葉を交わさなかった。
並び歩くうち、ふとした瞬間手が触れて、伊織の指先がひらくと、セイバーの指が惑うように触れてきた。ゆっくりとそのあいだに絡まりかけるも、動きはどこかおぼつかない。伊織は、そんなためらいごと包むよう、迷う指をぐっと握り返した。
たったそれだけでこころの内に火が宿る。寄り添いあったふたりの影は、人気のない回廊を静かに歩んでゆく。
長屋を模したその一室。
戸を閉めれば、先ほどまでの賑やかさが嘘のように静寂だけが満ちている。
酔っているからと、言い訳がましく伊織の胸に身を寄せていたセイバーは、部屋に入るといっそう、ぬくもりを伊織に預けてきた。
「ああ、わかっている」
すがるセイバーのすべてをくるみ込むよう抱きしめると、背中に回った二本の腕に、応えるような力がこもり
――
伊織は、華奢なからだを力一杯抱きしめ返した。
◇
行燈の淡いひかりが照らす室内には、褥の上で交わした情の名残りが漂っている。火影に浮かぶ白い裸身を見下ろしたとき、セイバーの肩が揺れていることに伊織は気づいた。
「どうした」
その顔を覗き込もうとすると、セイバーは、つ、と視線をそらしてしまう。そうして、ゆるく
頭
かぶり
を振った。
「見苦しいな、この様は」
細く、押し殺した声がした。
情事で乱れた髪がかかり表情は見えない。だが、響きには自嘲のような翳りが滲んでいた。
「きみが皆から慕われるなんて、喜ばしいことのはずなのに
……
その視線に、こうもこころを揺らしてしまうとは」
ぽつりと、小さな言の葉がこぼれ出る。
それを
一度
ひとたび
口にしたとたん、苦いものが広がってゆくように見え、引き結ばれた口元には行燈の灯が淡く影を落とした。
「こんな気持ちは、持つべきではないのにな
……
」
私は嫌なやつだ
……
と、そう口にしたきり言の葉は途切れ、灯がゆらめく仄暗い室内に沈黙がおりた。
身にかけた外套を握る指先に、じわりと力がこもってゆく。身の内に湧くどうにもならぬ感情を飲み込もうと、もがいているようだった。
やがてセイバーは寝返りをうち、褥に顔を埋めてしまった。
羞恥なのか悔しさなのか。気高い彼にとって、きっとこの想いは腑抜けた弱さとして映るのだろう。
外套を握る手を、伊織はそっと包み込んでやる。なにも問わず、冷えたその手をただ握り、己の温度を伝えてゆく。
そうして背を向けた彼に身を添わせると、「
……
顔を」とだけ、静かに願いを口にした。
セイバーは再び
頭
かぶり
を振る。
いやいやと、先ほどより強い動きに、艷やかな髪がさらりと音を立てた。まるで幼子のようなその仕草は伊織の胸を締めつけ、言の葉にできぬ情動が喉元までこみあげてくる。
いいんだセイバー、気にするな、わかってる、わかっているからと、幾度も繰り返しながら、ただ儚いばかりの背中を掻き抱いた。
彼の背がこわばり、喘ぐように息を呑む。
あ
……
と、震える息の音がした。
そうしてなにかに耐えるよう縮こまると、身を固くしたまま、しばし動きを止めた。迷いと決意がせめぎ合うような震えが、伊織の腕にもふるりと伝わってくる。
やがてセイバーはためらいを押しやるよう自ら向きをかえると、額を胸元へと埋め
――
掠れた声で懇願した。
「
……
イオリに、おかしくしてほしい
……
」
こぼれた願いが、薄暗がりに溶けてゆく。
セイバーの裸の脚が伊織の脚に絡みつき、伝わる熱が
膚
はだ
を焼いた。願いにこもる渇望と擦り合う肌が帯びる熱さに、抑えていたものが焼け落ちてゆく。
たまらず、唇に齧りついて組み敷いた。
泣かせても、苦しませているとわかっても、その乱れが俺を想うゆえだと知った刹那、悦びを覚えてしまった。見苦しいのも、ならぬ想いを抱いたのも俺のほうだ。どうしようもないほど浅はかで愚かしい。
揺れることも、ぶざまになることも、笑顔も、すべてが愛おしかった。
だからなんどでも、繰り返すのだ。
おまえが、笑っていられるように。
伊織はセイバーのなにもかもを逃がすまいと、深々と抱きすくめた。
外の祝祭は遠く、闇の奥、互いを求める情の音だけが燃えていた。
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