sisimi 
2025-08-05 21:54:42
599文字
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傍らの花

 
浮世絵の父水

↓この文をもう少し長くしたもの
「時期外れの雪、友と歩む桜の下。灰の様に積もり行く雪で視界が染まる。要らぬと言うに差し掛けられる蛇の目の傾きは友の心を表して、その肩を白く染めていた。すぐに引き寄せ覆い隠してしまってもよかったが、冷えを口実に床であたため合うのもまた良いだろうと男は刻を待つことにした。」


 

 桜の下、時期外れの雪が地面を覆っていた。灰の様に静かに降り積もる雪が視界を染めてゆく。
 雪が音を吸い、世界に独りだけの心地になるようであった。遥か遠い昔にもこの景色を見たような気がして、目を凝らして目の前の景色の中に記憶を探す。静寂と孤独と冷たさ、情景に結び付いて思い起こされる過去が胸中にしんしんと積もり満ちてゆく。
 ふと視界の端に差し掛けられた蛇の目が映り、己が独りではなかったことを思い出す。同じようにどこか遠くを見ている友が傾けるそれは冷たい灰を遮り、此方を慮る傾きはそのまま友の温かさであった。

 雨雪から身を守る傘など要らぬと言う己に対して、毎度変わらぬ態度を貫く男よ。冷えてはならぬのはお主の方であろうが。胸の内で小言を吐く。
 ちらりと寄越される友の視線を感じるがそれには見て見ぬふりをして、遠くに視線を置いたまま煙草をふかした。

 咥内の煙を味わいながら考えるのは、この男をどうしてやろうかという事である。
 このままここで友を引き寄せ、その黒髪や肩を濡らし染める白を払い落として腕の中に覆い隠してやるか。それとも冷えた友の手を引き連れ帰り、寒さを口実に互いの熱を分け合うか。どちらがよりこの男の好い顔を引き出せるだろうか。

 桜見の途中ではあったが、今は特別な装いをした傍らの花を愛でるが至当。
 白い男は煙草を捨てると友の冷えてしまった手を掴んだ。