cdi
2025-08-05 11:19:12
7617文字
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蒼玉の涙

キロ誕2025、キロ白パロ話(下ネタあり全年齢)
表紙画像お借りしてますhttps://www.pixiv.net/artworks/105710949

夢ってのは唐突に始まるし、とんでもない展開が待ち受けている事も多いけど、今回のは特におかしな内容だった。
これはここ数日の、少し奇妙な出会いの話。

果てしなく白い大地を歩いていた時のこと。
突然こめかみ辺りに何かが当たって、足元を見たら石がころりと落ちていた。ああ、こいつは前に河原で見つけたやつだ。表面にぽつぽつと青く光る部分があって、それがやたらと綺麗でつい持ち帰って来たんだけど。それっきり、こいつの存在をすっかり忘れていた。
「おいお前」
「えっ」
「扱いが下手すぎるんだよ。そんなんだから女にも逃げられちまうんだ」
ん?この状況は一体なんだ?
何か喋ってるな、としゃがんでみたら、その石はやたらと良い声で俺に説教じみた言葉をぶつけて来た。女の子には本当につい最近フラれてるから反論できないけどさ。つか、何で知ってんの?
「はぁ?なら具体的に言ってみろよ。扱いも何も、箱ん中入れてるから雨風に晒してる訳でもないし、日光に直接当ててる訳でもないじゃん?」
「全然分かってないな。大体俺が入れられてるあの箱、他にも何か詰め込まれてて異様に狭いぞ。たまには外の空気を吸わねえと息苦しくて仕方ねえ。何なんだあそこは」
「ん?あー、あれはスマホの空き箱……他にいい箱なくてさ。イヤフォンも入れっぱだから確かに狭いかもね」
「スマホ……?とにかく、狭くて狭くてたまんねえんだよ」
石からの主張に、俺は思わず天へ向かってため息を吐いた。収納先のクレーム言って来るやつなんて、普通居ないだろ。
「あと俺は磨けば磨くほど味が出て輝くタイプだ。分かるか?」
「それって宝石の原石って事?あんた、もしかして高い石なの?」
「それは磨いてからのお楽しみだ。はは」
「なんか面倒だなあんた」
「あんたじゃねえ、俺の名はキロランケだよ」
「キロランケ……
「お前の名前は?」
「あー俺は、……
突然始まった会話はそこでぶっつりと途切れ、べらべらと話し続けた不気味な石はそのまま地面に埋もれていった。干潟の二枚貝みたいにずぶずぶと、吸い込まれていくように。


夏の朝。
窓の外から聞こえて来る蝉の声が煩くて、仕方なく瞼を開ける。起きた瞬間から暑さがフルスロットルで殴りかかって来るの、本当に勘弁して欲しい。んで今日は結構変な夢を見た。いつもより割としっかり覚えている。妙な奴が色々不満を言って来て、えーと……
「っわ!時間やべえ!」
スマホが示す時間は家を出る十分前。まずい。今度こそ遅刻したら減給されちまう。ベッドから飛び起きて洗面所へ直行、超特急で身なりを整えた。こういう時、坊主だとかなり時短になるからラッキーだ。右手に鍵を、左手にプロテインバーを。
準備しながら今日の夢の内容を思い返していたけど、あー、空気の入れ替えが何とか、かんとか。
……、まいっか」
あの石を入れた箱を探すのは帰って来てからにする。ただし、それまで俺が夢を覚えていたらの話だ。


日が暮れてから帰宅、とりあえず飯。
仕事の休憩中にふと思い立って夢占いなんてのを検索してみた。石や宝石が出て来る夢は吉夢ってやつらしい。金運アップだの財産が増えるだの、いい事ばかりが羅列してあった。そんなん書いてたら忘れる訳がなかろうよ。将来の不労所得の為に、絶対探さなきゃならねえ。
食休みする暇もなく、あの石を入れてたスマホの空き箱を探したら、あった。チラシとタオルの下に埋もれてあった。この状況は確かに息苦しいかもしれない。そっと箱の蓋を開け、久しぶりにその石を手のひらに乗せてみる。
「おー、こんなんだったねえ」
栗くらいの大きさで少し平たい形。ざらりとした黒っぽい表面に、透き通った青い部分が点々とふたつ。煌めく箇所はほんの少しの面積だけど、目を引く綺麗さが何だかいいなと思った。
家の照明の下でも青い輝きは健在だ。ころりと転がし色々な角度から眺めてみる。黒い表面とのコントラストが中々格好いい。やっぱこれ、いい石だよなあ。
……
そういや、名前。
確か夢の中で名乗り出ていたと思うけど、はっきりとは覚えていない。キ、キロ、ケロ……ケロちゃん?カエルか……
「これからはVIP待遇でおもてなししますわね」
何てったってこれは幸運の石だ。金運アップでガッポガッポだ。思わずお嬢様言葉も出てくるし、キスのサービスだって難なくこなす。んむ、んむ、と何度か石に唇をくっ付けて、どうか臨時収入がありますようにと強く願った。あ、ついでに可愛い彼女ができますように。こっちはなるはやでお願いします。
早速おもてなしに取り掛かろう。まずはこいつを磨き上げる前に、汚れを落とす為の風呂だ。



……やってくれたな」
「えっ何々?」
とびきり低い声色が地を這って、俺の鼓膜へどぼどぼと注ぎ込まれた。視界が悪い。まるで四方八方を煙幕に囲まれているみたいで、何度目元を擦っても何も変わらない。おっかないその声には当然覚えがある。あの石だ。
「俺は磨いてくれと言ったよな?なのにこの有様。わざとか?」
「わざと?何の話?あんたを磨く前に綺麗に洗ってやっただけだよ。石鹸で結構な汚れが落ちたと思うぜ?」
「話にならん。どうしてくれるんだ」
ゆっくりとした話し声は、怒りと呆れの感情が混ざり合っているように聞こえる。石のくせに?というか、今日は何故か石の姿が見えない。
「あんたがなんで怒ってんのか俺には分からないな。何か気に障るようなことでもした?」
「あんたじゃない。キロランケだ」
「キロランケ……ああ、ケロちゃんじゃなかった。キロちゃんか」
「そうだ。まあ、もう俺は以前の様な姿には戻れない。その名前だって、いつか意味が無くなるだろう」
「どういう事?」
怒っていたかと思えば、急に哀愁漂う空気に切り替わった。足元に視線をやっても、近くに落ちているであろう石は見当たらないままだ。
「あの穏やかで優しく身を包んでくれた故郷の水が恋しいよ」
「キロランケの、故郷の……
その場にしゃがんであちこちに手を伸ばしても、指先に触れるのは薄灰色の煙ばかり。結局この日はキロランケを見つける事は出来ず、会話もそこで途切れてしまった。


夏の朝。
薄いカーテンからガンガン照らして来る太陽の明るさで、仕方なく瞼を開ける。クーラーの温度調節を間違えた様で、今朝は身体の芯まで冷えていた。寒い。
寝ぼけ眼で部屋を見渡すと、机の上で静かに鎮座している幸運の石の姿が目に入った。夕べ風呂場で入念に洗ってよく乾かした後、元の箱へと戻していた筈なのに。
よろよろと起き上がり石を手にする。ころり、ころりと転がして、青い部分の輝きが……ない。光を反射して美しく輝いていたその部分は、何故か灰色っぽく濁ってしまっている。指先で擦っても、濡らしたティッシュで拭いても、全く元に戻らない。
夢の中で怒っていたのは、これか。
「やっちまったなあ……戻んないのかな、これ」
自慢の光を失った石が、手のひらの中で沈黙している。ああ、結構ショックだ。忘れ去っていた存在だったけど、これから大切に磨いてどこかへ飾ってやろうかと思っていたのに。
「ごめんね」
ガキの頃、自分の不手際で飼っていた昆虫を死なせてしまった時の嫌な気持ちが蘇る。何が原因か分からないまま、ただ呆然と動かなくなったその姿を眺めて、後ろめたさと一緒に土の中へ埋めてやったっけ。
故郷の水、か。
この石は河原で拾った。家からほど近い、県境の大きな川だ。ならば元あった場所に還すのが道理かなと思う。土の中に埋めたって、また苦しいぞって怒られそうな気がするし。
ちょっとばかし綺麗なただの石に対し、何故こんな気持ちになるのだろう。濁ってしまった部分を指先で撫でて、もう一度心の中でごめんと伝えながらそっと箱の上に置いた。



真夏のど真ん中の夕方、空は一面オレンジ色。風もないし、まだまだ暑さを感じる時間帯だ。そのせいか、土手の道を散歩している人は少なく感じる。
特に予定がない休日だった。日中、この石の復活に時間を費やしてみたものの、結局青い輝きが元に戻る事はなかった。
……確か、拾った場所はこの辺りだった筈。
大小様々な丸っこい石が敷き詰められた河川敷に降りて、拾った時の情景を思い返す。落ちている流木は形が良ければ高く売れるとどこかで聞き、小遣い稼ぎの為にここまで来ていた。いくつか拾った流木は全然売れなくて、結局ゴミになったっけな。たまたま目に入って拾ったこの石は、こんな姿にさせてしまって。
意を決して手の中にある石を握り込む。こういうのは思い切り川へ投げ込んで、何か決め台詞を吐くのが定石だろう。指の腹でざらりとした感触を確かめて、腕を思い切り前へ振りかぶった。石は放物線を描きながら落下して行き、最後にはどぶん、と音を立てて川の中へ戻って行った。
「あばよ、キロランケ」
水面にできた波紋が広く大きくなり、次第にまた元の姿へと戻っていく。
故郷の水の中で達者に暮らせよ。心の中でそっと呟いて、穏やかな川に背を向けた……その時。
「ってえ!な、何!?」
突然、俺の背中に何かを投げつけられた。その衝撃で足元がよろめいて、背中には鈍い痛みが広がる。状況を把握できないまま恐る恐る振り返ると、ザバザバと派手な水音を立てながら、黒っぽい人影が川から上がってきた。
「ゔわーーっっ!?」
馬鹿でかい叫び声を上げて、俺はその場に座り込んだ。びしょびしょに濡れた人影は着物を着ていて、ゆっくり一歩一歩こちらに近づいて来る。どう考えたってマジもんの幽霊じゃねえか!完全に腰が抜けて力が入らない。幽霊の顔なんて絶対に見たくないっての!ぎゅっと強く目を瞑り、出鱈目なお経を口に出したその時だった。
「最後の最後で雑に放りやがって。お前には思いやりってのがねえのか」
頭上から降ってきた、十分聞き覚えがあるその低い声。いつの間にか、俺はまた夢を見ていたのか?でもまだ確信が持てない。目は硬く瞑ったまま、名を呼んでみた。
……キロランケ?」
「ああ」
なだらかな声の返答に、混乱する脳を説き伏せながらゆっくり瞼を開ける。やはり目の前にいるのは石ではなくて、着物を着たでっかい男だった。幽霊ではなさそうだけど。
「ええと……どういう事?」
足元から上に視線を這わせて最後に目が合うと、キロランケはニヤリと口元を吊り上げた。よく見りゃ嫌味なくらい男前な顔立ちだ。長い髪からはぽたぽたと雫が滴っている。ていうか髭濃いな。
「どこまでが夢でどこからが現実なのか分かんねえよ。何であんた、人になっちゃってんの?」
「何言ってんだ。俺は俺だよ」
「ついさっきまで石だったでしょ」
「ああ、少しばかり体が大きくなった自覚はある」
「少しどころの話じゃねえだろっ!」
このちょっと憎たらしい会話の応酬、凄く身に覚えがある。夢なら早く覚めてくんねえかな?
「とりあえずあんたを故郷に返してやったんだ。礼くらい言ってくれても良いんじゃない?青い石んとこ、曇らせちゃって悪かったな」
そう話しながら立ち上がると、キロランケは俺の肩を掴んでグッと顔を近づけて来た。至近距離で見つめ合い、その瞳の色に思わずああ、と声を漏らした。夕日を背にしても輝いている、その透き通った青。見れば見るほど深みを感じる、今にも吸い込まれそうな青色の瞳。……そうだ。この色に俺は一目惚れしてしまって、独り占めしたくて家に持ち帰ったんだ。
「俺が生まれたのはもっと上流の方だった。長い時間をかけてここまで来る途中、体がどんどん欠けて、削られ、気がつけば以前の大きさとは比べ物にならない、ちっぽけな存在になっていたんだ。でも、お前が俺を綺麗だと言って見つけてくれた時は嬉しかったよ。まさか拾われたまま忘れられるとは思ってなかったけどな」
「それはごめんって」
「そういえばお前の名前を聞いていなかった。何て言うんだ?」
「言ってなかったっけ。白石由竹だよ」
「シライシ。お前と話せて楽しかったよ。故郷の水に戻してくれてありがとうな」
そう言ってキロランケは俺の体から離れ、また川の方へ足を運んで行った。気の利いた別れの言葉も言えないまま、ざぶざぶと再び川へ戻っていくキロランケの背中を見つめる。
今度こそ本当におさらばだ。
日没前の焼ける様な夕日に、キロランケの輪郭がぼんやり滲んでいく。それが妙に美しくて、ちょっとだけ寂しく思えた。
ザブザブ進んでいく水音がどんどん遠ざかり、遂に聞こえなくなる。
川の中央部辺りまで辿り着き、太ももの辺りまで水に浸かっているキロランケが、ぐるりとこちらへ振り返った。
何だろう、様子がおかしい。
「おい、川に戻れねえぞっ!」
……は?」
キロランケの悲痛な叫びが河川敷に響く。知らねえよ、と思いながらその様子を眺めていると、オロオロした表情を浮かべながらまたこちらへ戻って来た。最初に現れた時の堂々とした姿はどこへやら。またびしょびしょになりながら岸へ上がり、大きなため息をつきながら口を開いた。
「とりあえず……体が元に戻るまで、俺を持ち帰ってくれないか?」
「なぁんでだよっ!?」
今度は俺の突っ込む声が川に響き、やがて水音に吸い込まれていった。ああ、早く目覚めてくれ。凄く厄介な事が起こり始めている。目の前にいるキロランケをまだ信じきれないまま、俺はただ立ち尽くすしかなかった。




川での出来事はどうやら現実らしい。あれからいつまで経っても目は覚めず、後ろからごちゃごちゃ言われながら気付けば自宅前。当たり前の様について来て、普通に家に上がられて、川の匂いを纏ったぐしょぐしょの着物のまま部屋に入ろうとした所を慌てて止めた。
「この着物、普通に洗濯機回しちまって大丈夫なのかよ。結構でかいな」
「知らん」
「知らんって……え、あんたふんどし履いてんの?」
とりあえず脱いでシャワーを浴びてくれと頼んだら、着物の下に履いていたのは何とふんどしだった。今時そんなの好き好んで履くかね?やっぱこれ、夢じゃないか?
「なあ、シャワーって何をどうすればいいんだ?裸になる必要あるのか?」
「風呂は裸で入るんだよ。ほら、こっち」
そう言って浴室の扉を開けると、キロランケは「あぁ!」と大きな声を上げ、青い瞳が俺をぎらりと睨みつけた。
「ここ、お前が俺を汚した場所じゃねえか!熱い水と何かぬるぬるしたやつ塗りたくりやがって!」
「その言い方は語弊を生むからやめて!あん時は悪かったってば、もう許してぇ」
この会話、まるでタイムスリップしてきた侍みたいじゃないか?現代の生活様式にいちいち驚くあれだ。最近、映画で見たんだよな。こりゃ本当に石が人間に化けた石の妖精なのかもしれない。
「まあさ、暫くその姿で生活するならニンゲンの常識を身につけてかなきゃいけないっしょ?風呂は基本、毎日入るもんなの。汚れたままじゃ男前が台無しだぜ」
「そうなのか」
「そうなのよ」
「分かった、入る」
頷きながら俺の言葉を素直に受け止めるキロランケが、この時少しだけ可愛く見えた。でもそんな感情が生まれたのも一瞬だけだ。キロランケが丁寧な手つきでふんどしを外すと、そこからぼろんと飛び出てきたモノに驚いて思わず二度見してしまった。
「え、待って、デカすぎない?」
こいつ石の妖精だろ?そんなモン持ってる必要ある?全然可愛くなんかない!
「ん?シライシのは違うのか」
「違うって言うか……みんな違ってみんな良い、というか」
「よくわからん。見せてみろ」
「ばっ!!やめろって!」
興味津々なキロランケの手が俺のズボンに伸びてきて、無理やり脱がそうとしてくるもんだから必死に抵抗した。わーわー喚きながら阻止したけど、結局最後は俺が力尽きてずるりと脱がされて。
俺の可愛い股間を見たキロランケは「あぁ」と声を漏らした後、するするとズボンを元に戻してくれた。何か悪かったな、と一言添えて。
俺はそっと心の奥で泣いた。

その日から、石と会話する変な夢は一切見ることがなくなった。代わりにでかい謎の男との奇妙な生活が始まったワケだけど、その日常話は長くなるから、また今度にでも。


◆◆


晩飯を済ませて、二人でぼーっとテレビを眺めていた時のこと。たまたまつけたチャンネルで、今をときめく女優の子のキスシーンが始まった。ドラマなんて滅多に見ないけど、可愛い子のキスがばーんと映し出されたら、そりゃドキドキしながら見入っちゃうもんだ。で、そんな時でもお構いなしに横から話しかけてくる男がひとり。
「なあ」
「何?」
「お前、これ俺にもしてきたよな?」
真面目な顔して画面を指差しながら聞いてくるキロちゃん。ああ、言われてみればしたような。まだキロちゃんが立派な石の時、ふざけて二、三度……もう半年ほど前の話だ。
「したね。よく覚えてんじゃん」
「これはどういう意味なんだ?」
「あー……意味は、相手への好意を表してるって感じ?」
「好きだとは言わずに口をくっ付けているのか」
「そうだよ。分かった?もういい?」
この質問攻めの感じ、嫌な予感がする。俺は無理やり会話を終わらせたつもりだったけど、キロちゃんの興味津々なお口は止まらない。
「何故口をくっ付けるんだ?」
「気持ちいいからじゃん?多分ね。はいおしまい」
「白石も俺にこうした時、気持ちいいと思ったのか?」
……もう勘弁してくれよぉ。あんたが硬い石だった時の話でしょ?気持ちいいも何も、口同士じゃなかったしさ」
「なるほど」
そう言うとキロちゃんは俺との距離をずずいと詰めて来た。目を逸らしても分かる、キロちゃんからの熱視線。やばい、やばいぞ!逃げる暇もなく肩を掴まれ、そちらを振り向けば満面の笑みを浮かべた髭面が。
「じゃあ、ちゃんとしてみよう。気持ちいいかどうか、折角だから知りたい」
「うわ嘘、待っ……!!」
随分とご無沙汰だったキスを、こんな形でするとは思ってもみなかった。強く押し付けられたキロちゃんの唇に「痛い!」って文句を垂れると、今度は上手くやるからっつってアホほど優しくくっ付けられて。石のくせに柔らかい唇してやんの。……くそ、何でだよ。
酷い流れで行き着いた野郎同士のキスなのに、ほんの少しだけ、気持ちがいいと思ってしまった。悔しい。この後もう一度だけして、つらつらと感想を聞かされるハメになる。羞恥心に潰されて、いっその事気絶してしまいたかった。


石の神様、早いとこキロちゃんを元の姿に戻してやって下さい。俺の身と精神が持ちません。とは思いつつ。また近々、あの川へ散歩にでも連れて行こうかな。キロちゃんが喜ぶからね。