三毛田
2025-08-04 22:41:24
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74 074. 嘘つきの涙

74日目
君の涙なら喜んで

……
 目の前で人が泣いているというのに、やけに冷静というか冷めている自分に気づく。
「理由を説明して欲しいって言っただけなんだけど」
 己の口から出た言葉なのに、やけに刺々しく何処か他人事のよう。
 でも、相手から反応がないとイライラするから、やっぱり他人事じゃない。
 こんなただ泣いて同情を誘おうとしている奴なんか放っておいて、丹恒とテスト勉強したかったのに。
 彼は優しいから、無下にするのは良くないと俺を送り出し。
「丹恒が優しいから、相手にしてるだけなんだけどな」
 思わず口から出てしまう。
「え?」
 相手は驚いたような表情。
「無下にするなって言うから、来ただけ。本当は、すぐに帰って丹恒と勉強したいんだ」
「で、でも」
「クラスメイトだから、丁寧に接した。それは、誰だって同じ。好きになるなら内は、その人の勝手だ。でも、俺には丹恒がいる。それを知っていても想いを伝えてくるのは勝手。でも、その気持ちを押し付けてくるなら俺はそれを拒むだけ」
 そう。
 俺は向けられた感情を拒絶することしか出来ない。
 だって、俺には丹恒だけだから。
「みんな知ってるし、お前だってそのことを知ってるだろ」
「で、でも」
「チャンスはない。あり得ない」
 何を言われようと、俺の気持ちは揺るがない。
 丹恒を手放すなんてありえない。絶対。
「それじゃあ」
 伸ばされた手を振り切り、鞄を掴んでさっさと玄関へ。
「た、丹恒?」
 そこには丹恒がいた。
「お前も今帰りか」
「丹恒、何で」
「図書館にいた。少し集中しすぎたな」
 眉間を揉んだ後、靴を地面へと下ろし。それから、上履きから履き替える。
「一緒に帰ろう」
「ああ」
 はにかんでいるのに、どこか哀しそうで。
「丹恒」
 門を出た先で、そっと彼の目元に触れる。
「ッ穹」
 驚いたように目を丸くする。でも。
「泣いた?」
「泣いてない」
「嘘吐き」
 そう告げると、一滴の涙。
 彼の涙は美しい。さっきの少女とは比べ物にならないほど。
「丹恒、好きだ」
「こら。舐めようとするな」
 舐めようと思ったら阻止されてしまった。残念。
「不安だった?」
……不安じゃない。と言ったら、嘘になる」
「俺は丹恒一筋だから」
「相手がどんな美女だったとしてもか?」
「うん。丹恒以上に魅力のある人間はいないからさ」
 そっと頬を撫でて、それからキス。
 舐めるのは駄目でも、キスはいいらしい。
「確かに、穹以上に魅力のある人間はいない」
「それは嬉しいなぁ。大好きだよ丹恒」
 そっと好意を彼へと囁いた。