syanpon
2025-08-04 20:12:15
1481文字
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気が付かない保護色

「おんなじものを身に纏えばあんたが誰のものかもわかるでしょう……なーんて」

オトスバ
リゼロスオットー√世界線

「へ」
「あ?」

 扉を開けると友人兼恋人が自分の外套にくるまっていた。

 緑に包まれた友人はオットーを視界に認めるとギョッと顔を引き攣らせ、油のささっていない機械のようにギクシャクとした動きで外套を脱ぐと気まずそうな顔でそれを横に置いて誰にともなく弁明をはじめる。

「あの、いやえっとこれはだな……好奇心! そう、好奇心!」

 まるでイタズラが見つかって恥ずかしがる子供のように、額や耳だけでなく首までわかりやすく赤く染めたスバルに首を傾げる。
 興味本位で色々なことに首を突っ込むスバルのことだ。
 好奇心だと言われても納得はするのだが、それならばもっと早くにオットーの外套を強奪して試着していたっておかしくないはずなのだ。
 ここまで一瞬、きゅっと眉根を寄せて考え込んだオットーの思考は立ち直ったスバルの「夕食だろ? 早く行こうぜ!」の声に塞がれてしまう。

***

 1人になると堰き止められていた思考が再度戻ってくる。なんで自分の服を纏っていたスバルのことがこんなにも頭から離れてくれないのはわからないが気になるものは気になるのだ。

 初めての友人であり初めての恋人。スバルとの間に結んだ関係性はどれもが体験したことのないものであり、客観的事実と自身の感情が一緒くたにもなりやすい。スバルへの恋心を自覚したのだって頼れる相棒が呆れたように指摘してきたからである。
 聡明でよく気の利く彼女には本当にいい婿を見つけてやらないといけない。

 ゆら、ゆらとゆれながら考える。

 身長はそれほど変わらないというのに座っていたからだろうか足先まですっぽり覆われていて可愛らしかったな、とか。

 鼻先まで外套にうずまっていたけど変な匂いしていなかったらいいな、とか。

 別にかくれてこそこそしなくたって堂々と僕にねだって借りてその姿を見せてくれればいいのに、とか。

 あの人の服装は良くも悪くも目立つから一緒の格好をしていた方がいいんじゃないか……

「あ」

 思考の海から顔をあげる。
 今自分の顔を鏡で見ればきっと満面の笑みを浮かべているに違いない。

***

「ナツキさん」

 次の日の朝、在庫の確認を行なっているとオットーに呼び止められスバルは驚いて肩を跳ね上げる。

 正直にいってめちゃくちゃ気まずい。

 こっそり彼シャツならぬ彼マント……外套をしていたところを本人に見つかってしまっているのだ。多分にやけながら匂いを嗅いでいるところまでバッチリ見られている。
 穴があったら入りたかったし逆の立場ならおそらく一週間はそのネタを擦り倒している自覚がある。
「なんだよ……わぷっ」
 ゆっくりと振り向けば目の前が緑で染まる。
 真新しい繊維の香りが鼻をくすぐり手渡されたそれを見てみるとオットーの着ている外套と同じものだった。

 驚きを瞬きであらわせば、目の前の男は嬉しそうに胸を張っている。

「まったくナツキさんも欲しかったなら、そういってくれればよかったのに」

「え?」

「確かにあんたのその服は目立ちますからねえ。僕と一緒の服なら無難ですし!」
「えっとお」
「今は僕の予備しかないんですけどきちんと採寸して今度仕立てにいきましょうね」

 顔を輝かせるオットーに比例してスバルの顔は呆れ顔になっていく。
 
 そうだこいつ少しズレているんだった。

「ナツキさん?」
「あー、うん、いやそうねありがと……
 
 遠目にフルフーに目をやると彼女は困ったように一つだけ鼻を鳴らすにとどめていた。