抱きしめたままで

ザックス✕エアリス

 柔らかな光が降り注ぐ教会。ひび割れた天井から差し込む陽が、壊れた床の隙間から顔を出す小さな花々をきらきらと照らしている。
 エアリスはしゃがみ込み、小さなジョウロを両手で抱えて水を与えていた。彼女の唇がふわりとほころぶ。
 その時、バタバタと足音が近づいてきて、扉が勢いよく開いた。
「エアリスー! 待たせたか?」
 黒髪を跳ねさせ、息を弾ませたザックスが教会へ飛び込んでくる。エアリスはぱっと顔を上げると、にこりと笑い――すぐに頬を膨らませた。
「ううん! でもね、見て。また靴、ドロドロ~」
 ザックスは足元を見下ろし、「あちゃー」と苦笑して頭をかいた。
「ごめん、ごめん!  任務終わってすぐ飛んできたからさ……エアリスに会いたくて」
……もう、しかたないなぁ」
 エアリスは立ち上がり、手に残った水滴をぱたぱたと払うと、ためらいもなくザックスの手をぎゅっと握った。
「お疲れさま。いっぱい走ってきたんでしょ? ……頑張ったご褒美、あげる」
 柔らかい感触に、ザックスは一瞬だけ息を呑む。彼女は無邪気に笑って、首を傾げる。
「こうすると元気、出るでしょ?」
「出る、出る! なんか、めちゃくちゃ元気になった」
 ザックスも笑顔を返し、その小さな手を包み込むように握り返した。
「ふふ、じゃあもっと、ぎゅーってする?」
 そう言ってエアリスが両腕を広げた瞬間、ザックスの顔にぱっと子供のような笑みが浮かぶ。彼は勢いよくエアリスを抱き寄せ、その華奢な身体を胸の中にすっぽりと収めた。
「うわ、やば……エアリス、可愛すぎる」
「えへへ~。来てくれたから、特別サービスだよ」
 エアリスは腕の中で笑い、ザックスの胸に軽く頬を押し付けた。
……ずるいなぁ。俺の方が会いたかったのに」
「ふふ、じゃあ負けたのはザックスってことで」
 そう言ってエアリスが笑うと、ザックスはふっと目を細めて、彼女を更に抱き締めた。
……負けでもいいや。こうしてられるなら、それで勝ちだな」
……もう、なにそれ」
 エアリスは頬を赤くしながら、くすくすと笑う。花々が揺れ、古い教会は二人の笑い声を優しく包み込むように、静かに陽の光を降り注いでいた。