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真九龍
2025-08-04 11:05:51
4224文字
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小説
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【鳴ライ】鳴海流治療術
ライドウが負傷して鳴海から手当てを受けるお話+αのオマケな小話
注1:両想いな鳴ライになっています
注2:ライドウremaster版をプレイ及びクリア済み。極僅かではありますが、ゲームのネタバレを含んでおります。
注3:負傷表現有り
大正二十年、某月某日の夕刻。
ライドウは悪魔討伐の任務を終え、無事に帰宅した。いや、無事という言葉を使うのは、少々不自然過ぎる。そう、鳴海は既に気付いていた。この感じ、其れなりに手傷を負ったな、と。鳴海探偵社所長は執務テーブル両肘を付き、両手指を交互に絡め、口元を隠すという何処かで見たことあるような姿勢を取り、帰宅したばかりの書生兼探偵見習い兼デビルサマナーに向かい、こう告げた。
「
…
ライドウ、外套を外してもらおうか」
「
…
ッ、
………
大した事ありま」
「隠しても無駄だぞ、血の匂いでバレバレだ」
「
………
」
素直に答えてくれず、負った傷を意地でも隠し通そうとする頑ななライドウの態度に、鳴海は心中で溜息を吐きながら言葉を遮る。このような遣り取りをするのは、勿論初めてではない。鳴海に迷惑を掛けたくないが為に、怪我を負っても自己解決の方向に持って行ってしまうライドウの心情と、ライドウの身に何かあったら気が気ではない鳴海の心情が、常にすれ違っているのだ。
少し俯き、少し顔を横に反らす無言のライドウ、対、見たことあるような姿勢を一切崩さず、ライドウを無言で睨み付ける鳴海。重々しい沈黙の空気が、室内を包み込む。
「
…
ライドウよ、鳴海は鳴海でお前の身を心配しておるのだ
…
そろそろ腹を括って、素直に受け入れたらどうだ?」
沈黙を破ったのは、ゴウトの一言だった。お互いを想い過ぎるが故のすれ違いは、ゴウトも察知している。当初は鳴海の事をチャランポランな奴としか認識していなかったが、彼の陰謀を阻止する為に鳴海自身も身体を張って奔走し、其の最中に鳴海が心の奥底で抱えていた苦悩と本心をライドウに打ち明けたことで、ゴウトの鳴海に対する認識が変化したのは言うまでもない。
そろそろ腹を括り、素直になれ。
『もぉ~
…
ライドウったら、ホンットに頭硬すぎよねぇ~
…
そろそろ素直になっちゃえば?見てるこっちはモヤモヤしちゃうのよ~』
『ライドウくぅん。鳴海の想い、既に知ってる筈だよねぇ~』
ゴウト─と、封魔の管の仲魔からの援護口撃─の言葉に、ライドウの心が動く。自身の全てを理解してくれる此の人の前に、もう意地を張る必要など無いのかもしれない。
「
………
鳴海さん。手当を、お願いします
…
」
俯いたままだったライドウがゆっくりと顔を上げ、小さく返事をした。視界に映る鳴海の険しい顔が緩み、安堵した表情へと変化する。
「ライドウ、何時もの席に座ってくれ。外套とホルスターは外しておけよ」
何時もの席とは、来客用テーブルと椅子の近くに設置してあるソファーのこと。ライドウは鳴海の言う通りに外套を外すと、引き裂かれたような左袖と、痛ましい創傷が刻まれた左前腕と左上腕が露わになる。鳴海は他に傷が無いかと全身を確認するが、どうやら左腕の一カ所だけのようだ。
(傷の特徴からして、恐らく防御創か
…
)
回避が間に合わなかった、或いは突然の増援に因る奇襲から心臓や頭部を守る為に、腕を盾とした可能性が高い。由り詳しい原因をあれこれと追及したいところだが、鳴海はライドウに問わないことと決めている。ライドウは、信頼を置く仲魔を使役しながら自身も戦闘に参加する。そして、さも当然のように負傷する。ライドウが背負うデビルサマナーの使命を全て理解した上で、自分に出来る事─ライドウが自分の許へ帰ってくるまで待つ事、ライドウが五体満足であれと願う事、怪我を負ったライドウを手当てする事─をやるしかないと割り切っているのだ。
ライドウがソファーに着席した頃を見計らい、鳴海はライドウ専用救急道具箱を手に取り、手当を待つライドウの前に腰を下ろす。
「んじゃ、鳴海流治療術の開始と行きますか」
「普通に手当をすると言えばいいだけだろう
…
此のカッコつけたがりめ
…
」
ゴウトの呆れた突っ込みは、ライドウの手当てに集中している鳴海の耳に入ることはない。
「うん、うん
…
傷は少し深いが、血は止まっているな。今のうちにしっかりと消毒して薬を塗っとけば、問題無いだろう」
「何時もお手を煩わせてしまい、本当にすみません
…
」
「怪我の事で謝る必要なんてないさ。お前が此処まで無事に帰ってこれれば、それでいいんだよ」
申し訳なさそうに謝罪をするライドウに対し、鳴海は柔和な声で答えた。
鳴海の穏やかな音は、ライドウに不思議な安寧を齎す。消毒液が傷口を刺激しても、鳴海が常に語り続ける影響なのか、全く以って気にならない。傷薬を塗布し、傷口をガーゼで覆い、包帯でくるくると固定する一連の流れは無駄な動作が一切無く、大変手際が良い。鳴海流治療術は、完璧の一言に尽きる。
「今度怪我をしたら、躊躇わずに言うんだぞ」
「
…
はい」
「お、そうだ
…
最後に”おまじない”を掛けておかないとな」
「
…
!あ、あの”まじない”
…
やっぱり、やるんですか
…
?」
まじないという用語に、ライドウの頬が急に紅潮し、わたわたと慌てふためく。テーブル上で丸まり、休息中のゴウトの耳と尾が僅かに動いた気がするも、何事も無かったかのように再び静まる。
「勿論やるに決まってんだろぉ~?ライドウの怪我が早く治りますように
…
てな」
「
…
ッ、分かり、ました
…
お願いします」
鳴海の満面の笑みに、ライドウは益々顔を紅く染める。何なら耳まで真っ赤っかに染まり、脈拍数も一気に上昇し、自身の鼓動が聴こえてしまう程高揚している。
果たして、鳴海のまじないとはどのようなものなのか。
救急道具箱を所定の位置に仕舞い終えた鳴海は、ライドウの前に再び腰を下ろし、手当てした左腕を掴む。痛みが走らぬように、優しく。
そして、左腕に口付けた。
鳴海の息遣いが、包帯越しに伝わってくる。
(鳴海さんのMAGは
…
何時も暖かい
…
)
まじない施行中、極僅かな量ではあるが、鳴海のMAGがライドウの身体へ伝番している。本当に極僅かな量である為、鳴海本人がMAGの移動を自覚しているか否かは不明だ。だが、まじないを通して鳴海のMAGを感受することが出来、安心感を得られるのが心地いいことか。
ただ、まじないの遣り方が遣り方なので、大変恥ずかしいが。
「何時までやっておる!いい加減に止めんかぁーっ!!」
「いったぁーっ!!ちょっとゴウトちゃん!今ライドウを感じて良いところなんだら邪魔しな、ギャーッス!!」
そして、ゴウトの乱入と会心の一撃に因って、鳴海のまじないは此処で終了となる。鳴海対ゴウトの乱闘で、鳴海の執務テーブルから紙が数枚、ひらりひらりと舞い落ちた。無傷の右手で拾ってみると、やや形が変わった六角形の紙に薬品名や薬の絵の他、日本の伝統模様が描かれていた。普段見た事の無い紙に、ライドウは首を傾げる。
「あの
…
鳴海さん、此れは
…
?」
「いったたた
…
ああ、それか。売薬さんのおまけで、紙風船さ」
「紙風船
…
此れが、ですか
…
」
「此処に穴が有って、空気を入れると
………
ほら」
鳴海が一枚手に取り、空気穴から空気を入れると、膨らんだ紙風船は真四角になった。
「四角い、ですね
…
初めて見ました」
紙風船と言えば、球状のものが一般的だ。だが、真四角の紙風船は物珍しいのか、ライドウは興味津々の様子で、鳴海の手に乗った紙風船を見詰めている。
「ライドウ。売薬さん、て知ってるか?売薬さんの薬はな、昔から良く効くって評判でな。金王屋のじいさんも、売薬さんから薬を仕入れてるみたいなんだ。んで、仕入れた時とか、薬を購入した時にオマケで付けてくれるのが此の紙風船、という訳だ」
鳴海は説明しながら、紙風船を右掌の上でポンポンと打ち上げる。球状の紙風船と違い、真四角の紙風船はやや小さい。両掌で打ち上げるより、片掌で打ち上げることに特化している印象が見受けられた。紙質が少々重めなのか、落下速度も速く感じる。だが、鳴海は床に一度も落下させることなく、真四角の紙風船を何度も何度も打ち上げた。低音の呻き声を上げていたゴウトも何時の間にか鳴き止み、鳴海が打ち上げる紙風船に視線を向け、首を上下に振っている。
「鳴海にしてはやるではないか」
「ライドウ、お前も右手でやってみたらどうだ?ほらよ」
「
…
!」
鳴海が紙風船を高く打ち上げると、紙風船は軌道を変え、ライドウの眼前にゆらゆらと落下していく。鳴海に見惚れていたライドウだが、鳴海の言葉で我に返り、抜群の反射神経で紙風船を右掌で受け止めた。鳴海からの繋ぎを止めまいと紙風船を打ち上げてみるが、どうしたことか、中々難しい。
無我夢中になって紙風船を打ち上げるライドウの姿は、帝都の守護を命じられたデビルサマナー・十四代目葛葉ライドウではなく、遊びを純粋に楽しむ無垢な青年として、鳴海の眼に映る。幼少期のライドウに、玩具で遊ぶ時間はあったのだろうか、と、思慮してしまう程に。
「
…
お、とっ、と、とっ
…
あっ
…
結構、難しいですね
…
」
「そうだろそうだろ?一度も落とさず打ち上げた俺、凄いっしょお~?」
「
…
やはり、鳴海は鳴海か」
ライドウが打ち上げていた紙風船は軌道から外れ、とうとう床に落下する。自慢気な態度でふんぞり返る鳴海に、ゴウトは本日何度目か分からない呆れ顔を浮かべ、言葉を吐きながらテーブルへと登り、身体を再び丸めた。
「ん
…
?もう一回やるか?」
「鳴海さんのように、一度も落とさず打ち上げてみたいので」
無表情が定番のライドウが、心躍るような表情を浮かべながら紙風船を拾い、打ち上げ始める。紙風船を如何に長く打ち上げる事が出来るか挑戦を続けるライドウを見て閃き、鳴海は紙風船をもう一つ膨らませた。
「ライドウ。どっちが長く打ち上げ続ける事が出来るか、勝負してみるか?」
「それは
…
ちょっと狡くないですか
…
?僕なんて、未だ始めたばかりですよ
…
?」
「ははは、それもそうだな」
鳴海が提案した勝負は、ライドウの真っ当な答えに由ってお預けとなる。二人は勝負ではなく、童心に還り、紙風船を打ち上げ続けた。
◇コソコソ裏話◇
・冒頭で鳴海さんが取っている姿勢は、かの有名(?)な”ゲンドウポーズ”です。
・援護口撃をしている仲魔は、モー・ショボーとモコイさんになっております。
・手当した部位に優しく口付けるシチュエーションに萌える派です(誰も聞いてない)。
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