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来羅
2025-08-03 11:57:46
1792文字
Public
トワウォ
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スコール(洛信)
洛信ワンドロワンライ開催おめでとうございます!
できてるふたりです。
「お」
申し訳程度に張り出したトタン屋根の下。
突然の大雨に濡れたシャツの端を絞っていたら、そんな声と共に見慣れた男が駆け込んできた。
「信一」
今日会うのははじめてだ。
約束をしていなくても、冰室に行けば大概は会えるはずの男は、けれども今日に限ってタイミング悪く顔も見られずにいた。
びしょびしょになったジャケットを手で払い、ふるりと顔を振れば緩くなったパーマの先から水滴が散る。
「急に降ってきたな」
「ま、この時期はよくあることだ。それより」
信一が濡れた髪の向こう、大きくて丸い瞳を輝かせてぐいっと顔を近づけてきた。
「今日はどうしたんだよ」
随分とめかし込んでるじゃん、と口笛を吹く信一に思い出したように洛軍は己の姿を見て、さぁっと顔を赤らめた。
「へんか?」
「いや、似合ってる」
いつもの擦り切れたジーパンとポロシャツじゃない、折り目の付いたトラウザーズと真白いシャツ、ネクタイはさすがにここに来たときに緩めてしまったものの、かっちりとした服は洛軍には慣れない。
「虎哥に髪を切ってほしいって呼ばれて、それなら格好もそれらしくした方がいいって、十二が」
「それらしくってなんだ、ていうか、あいつの趣味かよ」
「悪い」
「なんで謝んの。あいつ趣味良いから、本当に似合ってるぜ」
悔しいけど、なんて。
声だけは楽し気に告げる信一は、けれども不貞腐れた顔で唇を尖らせた。その頬を髪から落ちた雨粒がすうっと流れ落ちていくのを、乱暴に袖口で拭うせいで肌が薄っすら赤くなる。日に焼けていない信一の肌は白く、少しの刺激で色を変えるのを、洛軍ももう知っている。
「信一」
持っていたカバンから取り出したタオルを、信一の頭にかけた。そのまま優しく拭えば、タオルの隙間からバツの悪そうな顔がこちらを見ている。
「風邪を引く」
「お前だって」
「信一が風邪を引く方が困る」
あまり柔らかくもないタオルで優しく目元を拭い、それから頬を、首筋をと順に覆う。そうしてその手がシャツの合わせをそっと拭ったと同時、信一の体が倒れ込んできた。
「っ」
「俺、お前のそーいうとこ好き」
たいして変わらない身長なのに器用に上目遣いで、見せつけるみたいに唇を舐める男はいったい何がスイッチになったのか、色めいた眼差しで洛軍を呼ぶ。
「信一、」
ぐっと息を呑んだ洛軍を薄く笑う男が顔を寄せた。
熱い呼気すらかかるほどの距離。顔を傾けると濡髪が瞳に落ちる。抱き留めた体はシャツが張り付いていて、体の線も露わに腰の細さを手の平からも視界からも洛軍に伝える。
洛軍はその濡れた体を知っていた。触れればひんやりとした肌も、水を含んで吸い付くような感触も。
洛軍、と密やかな声で呼ばれるのはいつだってたまらなくさせる。
「洛軍
……
」
呼ぶ声は甘い。
跳ねた心音は激しい雨音にかき消されて耳には届かない。
────雨音。
雨音、だ。
その唇が触れる寸前、はっと我に返った洛軍は慌ててタオルを信一の顔に押し当てて距離を取った。
「だから、風邪を引くと言ってる!」
今度は乱暴にがしがしと髪を拭えば、信一もう先刻の色などどこに行ったのか、けらけらと笑って離れた。
「お前のそーいうとこも好き」
「弱腰?」
「自制心」
でも、とふいに真顔になった信一が洛軍のネクタイに手をかけて引っ張った。
「俺のものが俺じゃない男に飾られんのはムカつく」
キライ。
茶化したような、けれども剣呑とした本気の瞳。
「早く脱がしたい」
舌なめずりする好戦的なそれに、腹の奥がじくりと疼く。
溜息は、おそらく自分への呆れだった。
信一の言うところの自制心など、こうなってしまえば欠片もない。
濡れた瞳よりも、甘い言葉よりも、きっと。
信一のこの瞳に、洛軍は弱い。
「信一」
その手首を掴む。
降りしきる雨の中に足を踏み出した洛軍に手を引かれるまま、再び雨の中に飛び出した信一が驚いた顔で呼んだ。
「帰ろう」
「濡れるって」
「もう濡れてる」
「風邪引くとか言ったくせに」
「早く脱げばいい」
自制心なんて、クソ食らえだ。
格好なんて構っていられない。
そんなものより、何より欲しい『俺の』男は、弾かれたように笑って隣に並んだ。
「お前のそーいうとこ、もっと好き」
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