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河童の皿箱
2025-08-03 08:35:54
1806文字
Public
遊戯王:短め(2025年度)
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かごめ、かごめ
セアミンズがマッドラヴとGボーイを取り囲むだけ。
かーごめ、かごめ。
ひとりの少女を、3人の能楽師が手を繋いで囲み、ぐるりぐるりと回っている。
かーごのなーかのとーりーは。
声を重ねてうたう、うたう。
いーつーいーつーでーやーう。
まわる、まわる。
よーあーけーのーばーんーに。
少女は目を覆って縮こまる。こらえるように、静かに。
つーるとかーめがすーべった。
ぐるり回る能楽師たちを、遠くから少年が見つめていた。
うしろのしょうめん、だーあーれ?
最後の歌と共に、能楽師がひとり、少女の後ろに立った。「だーれだ」、と。お約束の言葉で少女に問いかければ、縮こまった少女はうーんと唸り、「鹿の子!」と答えた。すると、ふたりの能楽師は少女の前に立って、少女が顔を上げる。次に、後ろの正面を見れば、そこに居るのは呼ばれた鹿の子。「あったりー!」と、満面の笑みで少女に抱き着けば、そのゲームは一度終わりを迎えた。
「ねえ、なにやってるの?」。遠くで見ていた少年は、ふいにそんな集団に近づいて問えば、少女は答えた。「セアミン達の故郷の、歌遊びだって」、と。言われてみれば、確かに聞き馴染みのない旋律であった。
「いひひ、面白かったよぉ。なんだか変な気持ちになるんだ」。少女は少年にそう笑いかける。「ほらほら、せっかく被検体君が来てくれたんだ。君もやってってよ。サンプルは多ければ多い方がイイんだからさぁ」。少年は少女に背を押され、能楽師たちの中心へと押しやられる。ぱちり、能楽師たちの不可思議の目に射抜かれれば、気の小さな少年はもはやそこに座り込むほかになかった。
「ええっと、ルールは?」。「ん。そこに座って、目を閉じて。最後に誰だって聞くから、誰か答えて、そしたら、答え合わせ。それまで、目は開けちゃダメ」。至極、淡々と。けれど、その声はどこか弾んでいて。まあ、遊びだし
…
。少年は言われるがままに、目を閉じた。
かごめ かごめ
エキゾチックな旋律にのせて、3人は歌う。歌声は、周囲を回り続ける。
かごの なかの とりは
ふ、と。少年は耳を澄ます。何か、違う声が聞こえた気がする。聞きなれない、誰かの。
いつ いつ でやう
いや、気のせいじゃない。3人以外の、歌が聞こえる。
よあけの ばんに
低くて、高くて、混ざって、ひとりで。
つると かめが すべった
ふわり、浮き上がる。何かの手の上にのせられたかのように、その目の前に、大きな、大きな、何かが
…
。
うしろの しょうめん だあれ?
耳元で囁く声。だぁれだ、と。少年はひゅうと、息を取り戻した。荒んだ息を大きく吸い込んで、考える。今の声、聞いたことのない、いや、そんなはずはない。今聞こえたのは、確かに大人の女の人の声だった。ぼんやりしたあの子や、シャキシャキしたあの子、ツンツンしてるあの子とも、全然違う声。誰かが作った声? その可能性も捨てきれない。あの子たちは、演技がとってもうまいから。けれど、あれは。あの感覚は。いつか絵師が話したような、そうだ。
いくつもの魂が、ここに居る。
目を開けようとする。けれど、さっきの言葉が頭をよぎった。『答え合わせまで、目は開けじゃダメ』。そうだ、ぼくは答えなくてはならない。うしろのしょうめんを。
少年は腹を決めた。
「
……
ぼくと、はじめに友達になった
…
セアミン」
答える声が、ひとつの魂を引き寄せる。後ろにひとつ、前にふたつ。それ以外の無数が、散り散りに。
「目を開けて」。その声に、前を向く。ニコニコセアミンと、ツンツンセアミン。後ろに振り向けば、あぁ。少年は胸を撫で下ろした。見慣れた、あのぼんやりセアミンだ。
「せーかい」。無表情で、ぱちぱちと。拍手に少し照れ臭くなって、少年は眼鏡を支え直した。近くで見ていた少女もまた、興味深そうに、何かを書いている。博士気質は、こういうところにもでるものなんだ。少年は感心しつつも、けれど先ほどの体験を訊ねた。
「ねえ、セアミン」。けれど、目の前の子は、しぃ、と。唇に人差し指を立てた。「ないしょ」、と。どういうことかと尋ねたかったけれど、目を逸らされれば、あぁもう。本当に答える気がないんだ。
「ちぇー」。少年が頬を膨らませていじければ、ぼんやり顔は口元を長い袖で隠し、クスリ笑った。
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