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g_g_i_i_e_e
2025-08-02 23:28:13
2615文字
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お題:「いっぱい食べる君が好き」
#ししさめワンドロワンライ 2025/08/02
ソファに二人、くっついて座って、寄りかかり合うようにして、夜のテレビニュースをぼんやりと見ていた。
「
……
私は風呂に入る」
そう言って村雨が立ち上がる。
つまりそれは、「受け身のアナルセックスの準備をする」という宣言だ。
「ん
……
」
画面を見たまま獅子神は頷く。
しまった、と思ったのはコンマ数秒後のことであった。
視界の端にとらえた村雨の、その特徴的な眉は既に、ピシリと跳ね上がっている。
「何か問題でもあるのか」
――
乗り気じゃねえことを見抜かれた。
もともと獅子神の考えていることなど、手に取るように見通している村雨だ。今の「ん」という一音からだって、獅子神の後ろ向きなムードを簡単に見抜くことができただろう。
「そういうわけじゃねえよ」
慌てて獅子神は、声のトーンを上げてみせる。だがその対応も時すでに遅く、
「したくないのならはっきりとそう言え」
と、顔じゅうに「不服」という文字を貼りつけた村雨が、胸の前で腕を組んでこちらを見下ろしていた。
「いや、してえよ、マジでしてえって」
「私に嘘をつけると本気で思っているのか。だとしたら大したマヌケだ」
「嘘じゃねーし! してえって気持ちもあるし!」
「気持ち『も』」
「あー!」
獅子神は頭を抱えてぐしゃぐしゃと髪をかき回す。
言葉は勝手に、口から勢い良く飛び出した。
「だって! いっぱい食べるお前が好きなんだもん!」
顔じゅうの「不服」を「はぁ?」に書きかえた村雨に、もう止まらず獅子神は言いつのった。
「この前だってオレがちまちま包んでやった水餃子をお前がすくっては食いすくっては食いして、最初は牛肉ではないのかとか憎まれ口叩いてたのに眼鏡曇らせながらはふはふして三十個ペロリで『もうないのか』みてえな顔するからまだまだ冷蔵庫にあるっつーの! って言ったときの!お前の!顔がさぁ! あるならとっとと出せとか言ってお前かわいい顔するから!」
「あ、ああ
……
」
顔じゅうの「はぁ?」が「えっと
……
?」 になっても、獅子神の嘆きはまだまだ止まらない。
「お前がオレのメシ食うとオレは幸せになるんだよそんぐらいわかるだろ! でもがっつりアナルってなるとお前メシ食わねーじゃんわかってるよそうしねえと苦労するし腹も苦しいって、でもさぁ
……
オレお前とのセックス大好きなのになんか最近、セックスするせいでメシ食わねえんだなって今日もスープちょっとすすって
……
ホントならでっかいステーキだって食わしてやれるしオレ前よりケーキ焼くのだってうまくなったし
……
セックス好きだけど
……
思うようになっちまって
……
」
シン、と沈黙が降り、そこにニュース明けのバラエティ番組がそらぞらしく、芸人たちのわめき声を流していく。言っちまった、勢い任せで言っちまった、とうなだれて相手の顔も見られない獅子神の、その隣でソファの小さく沈む感触がした。
「私に飯を食わせるのが好きか」
「
……
好き」
「医者をしていると多少の特殊嗜好を見かけることがあるが、パートナーを限界まで食べさせて太らせるというフェティシズムがあるらしいぞ」
「そっ、そこまでのアレじゃねえ! ただお前がうまそうに
――
」
ガバッと顔を上げて、眼鏡の向こう、透けるような赤い目と、バチッと目が合ってしまう。
「
――
食ってるのが
……
好きだなぁって
……
」
どぎまぎしてきて、あわあわとそう口調を濁し、口を尖らせる。
「それにお前だけだし
……
今までそういうのなかったし
……
」
「そうか」
神経質なほどに整った手が伸びて、ほっそりした指先が、獅子神の髪を梳いていく。下腹がうずくような心地の中で身震いをすると、ふふ、と小さな笑声が聞こえた。
「私としては、あなたの食事を口腔から取り込むのも、あなたの陰茎を肛門から取り込むのも、どちらも気に入った行為ではある」
「ひ、品がねえって
……
」
「品のない私は嫌いか?」
「好きに決まってんだろチクショウ」
顔が近づいてきて、甘えるように下から覗き込んでくる。これはチューするタイミングか、と思う間にもその口が動いた。
「ただ、私は客観的に見て多忙で、あなたは体力にあふれて遅漏の傾向がある。そして、肛門性交はボトムとやらである私の方に負担が大きい」
「ソ、ソウデスネ
………
」
「だから休日となるとつい、それをすることばかりを前提として予定を立てるようになってはいた。休日前でもないと、満足にやり通す余裕がないからな」
そう言うと村雨は小さく首をかしげてみせる。「ここまでの理解に問題はないか?」と尋ねているのだ。このポーズ大好き、インコみてえでかわいい、インコ飼ったことねえけど、と思いながら獅子神はしっかりと頷いた。
「だが、あなたの性的嗜好や
――
」
「だからそこまでのアレじゃねえって」
「あなたと過ごす様々な時間のことを考えると、肛門性交にこだわるのも少々もったいないように思える」
「え?」
少し体重をかけてきた身体を、無意識のうちに抱き寄せながら獅子神は目をまたたく。すると抱き寄せられた身体は、するりと膝をまたいで乗り上げてきた。
「今日はせっかく節制したんだから、肛門性交でいいか?」
「え、あ、うん
……
うん?」
反射的に返事をしながら、顔を引き寄せてむちゅむちゅと唇を吸い合わせる。ぷちゅん、と吸いついて離れた唇が、ふふ、とまた小さく笑った。
「今後は、手淫のみにするような夜も設けるべきだろう。たっぷり食べ、軽くまぐわうような夜だ」
「む、むらさめぇ
……
!」
抱きしめてソファに押し倒そうとして、だめ、と両手で頬をギュッと挟まれる。
「むぎゅ」
「今日のあなたは肛門性交に同意した。私は風呂に入る」
何事もなかったかのように、すっとソファから降りてしまう、痩せた身体。
落ちたスリッパを履き直してぱたぱたと去っていく身体に、ハッとして獅子神は声を掛けた。
「言っとくけど肛門性交『で』いいんじゃねえからな! オレ肛門性交も大好きだから! お前との肛門性交ものっすごく大好きだから!」
「品のない男だ」
「人のことが言えるかぁー!」
テレビはまだ芸人たちのわめき声を垂れ流している。しかし獅子神の頭の中は、村雨との来たるべきまぐわいでみちみちに満たされており、架空の喘ぎ声以外のものはもう、何一つ耳に入らなかった。
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