ちよど
2025-08-02 05:27:50
10274文字
Public わし様など
 

練習1P 2025年6~7月分まとめ

#練習1P、のタグで書いていたもの。
わし様中心SS。節操なくCP混在。

■2025/07/20 No.632
生前アシュヨダ
「なんて格好をしているんだ!」

 そうスヨーダナ様は叫ぶと俺を手近な部屋に連れ込んだ。
 王族達の宴の喧騒が遠ざかる。一緒に部屋に入ったスヨーダナ様の弟、スシェーナが俺を見てあからさまに顔をしかめていた。そこに、
「スシェーナ、脱げ。アシュヴァッターマンもだ」
「え?兄上。ボクはどうやって帰ればいいの?」
「後でヴィカルナを迎えにやる。お前が欲しがっていたオレの腕輪でどうだ?」
 交換条件に納得したスシェーナが脱いだきらびやかな衣装を、何故か俺に着付けながらスヨーダナ様はため息をついた。
「まったくドローナ師にも困ったものだ。王族というものを分かってない。そんなだから空約束を鵜呑みにするのだ」
「父上は幼馴染から国を貰ったのでしょう?」
 だから俺は父に連れられて王族達の宴に参加しているのだ。知らない人達の中にずっとひとりで。
 そんな俺を見つけた途端に叫んだスヨーダナ様は行儀悪く舌打ちをした。
「クシャトリヤの宴にバラモンの正装で来る馬鹿がいるか!よし、冠は深く被って額の宝珠が見えないようにしろ。名前を聞かれたらオレの客だというのだ」
 そう言い含められて宴にひとり戻された俺に、今度はいろんな人がにこやかに話しかけてきた。
 戸惑っている俺を今度は父が見つけ、叫ぶ。


■2025/07/17 No.631
ビマヨダ、カルヨダ
「──そして。俺は、また」

 俺はこいつに取って代わられる。
 ビーマセーナは降りしきる雷撃を耐え槍を振るった。冠位認定戦。マスターによってグランドに選ばれたビーマはこの最終戦。インドラ・マガヴァーンに相対していた。
 並ぶのはフレンドのメリュジーヌと。カルデアに召喚されたばかりのカルナだ。
 ──俺はこいつに取って代わられる。
 カルデアに召喚されたと同時に溜め込んでいた種火と素材であっという間にLv100になったカルナは絆を育んでいる最中だ。それが一定以上超えればグランドの座はビーマからカルナにすげ替えられる。
 選ばれるのは、いつもカルナだ。
 生前あの競技場にこいつが現れた時、直前までビーマと棍棒を打ち合っていたドゥリーヨダナは振り返りもせずこの男に駆け寄ったのだ。──いつも、俺を見ていたのに。
 カルナがインドラの宝具を封印し、俺が宝具を叩き込み、メリュジーヌが追撃する。
 心地よい連携が永遠に続けばいいと思う。この戦いが終わらなければ、ビーマがグランドに選ばれた時にただ無言でこちらを見ていたドゥリーヨダナがカルナの戴冠に大喜びする様を見なくてすむ。
 カルナならば必ずわし様のいるカルデアに来ると。断言してマスターと共に素材を集めていたドゥリーヨダナだ。カルナの戴冠にどれほど喜ぶだろうか。


■2025/07/14 No.630
ビマヨダ
「ずるい!!」

 図書館の閲覧席でひとり白いページをめくるドゥリーヨダナに影が差した。ビーマだ。
「なにを企んでやがる」
 不審さを隠そうとせずに見下ろす宿敵にドゥリーヨダナは顔を上げた。その表情は静かさにビーマは片眉を上げる。
 ドゥリーヨダナの棍棒を握る太い指が真っ白なページをなぞる。
アルジュナの父親がカルデアに来ただろう?」
「それがお前の図書館通いとどう関係がある?」
 ビーマの問いにドゥリーヨダナはそっと息を吐いた。ゆっくりとあたりを見回す。
「マスターの時代は実に素晴らしい。便利な科学に豊かな知識。──そして」
 紫色の視線が白いページに戻る。そこにはたくさんの凹凸が刻まれていた。点字だ。
「これがあれば父上はあんなにも苦労せずに済んだのだ」
 彼らの時代に文字はなかった。よって板に文字を刻む事が出来ず盲目の者が知識を得るには誰かが語って聞かせなければならなかった。信用できる者が。
「わし様が物心ついてから何度奸臣を排除したか」
 懐かしそうに呟く王子に従兄弟は視線を落とした。が、
「それでだ!わし様は考えた!山育ちの一般人がカルデアに召喚されるのだ。マスターにプレゼンすれば父上も!」
 生前父親に会えなかった風神の息子は叫ぶ。


■2025/07/12 No.620
ビマヨダ
「俺を友の息子と認めるならば、」
※ジュナパパのマイルームセリフのネタバレがあります

「わし様には宿敵などおらん」
 ドゥリーヨダナの断言にアシュヴァッターマンは頷き、カルナは沈黙を保ち、同じテーブルに座っていたマスターは顔色を変えて食堂の一角を振り返った。
 アルジュナ達とインドラにちょうど料理を運んでいたビーマがゆっくりとドゥリーヨダナを見た。
ドゥリーヨダナ。それは俺達が恋人になったからか?」
「別れる。──元々わし様達が恋仲などおかしな話だったのだ」
 突然の修羅場に食堂に居合わせたサーヴァント達が息を呑む中、インドラが酒杯を傾けた。
「喜べ。ヴァーユの息子よ。カリの化身が誑かすのをやめたという事だ」
「「やめろ!!」」
 そう叫んだのはビーマとドゥリーヨダナが同時。カルナが慌ててピンクのふわふわをドゥリーヨダナに被せるが、そこから隠しきれない異形の角がはみ出ていた。
 サーヴァントは逸話の影響を受ける。季節の例を出すまでもなく霊基は変わりやすい。そこに主神クラスの断言を受ければ姿が変わることはありえるだろう。
 ビーマが息を吐いた。
「トンチキ。妙な気をまわすんじゃねぇ」
 くるりと体を向き直す。悪気はまったくなさそうなインドラは従神に酒を注がせていた。その片眉が上がる。


■2025/07/10 No.619
ビマヨダ
「馬鹿め」
※パパの大試練のネタバレがあります

「うわぁあん、マスえもん!ビーマがわし様のNPを食ったぁああああ!!」
 主力のアーツ全体宝具バーサーカーに泣きつかれてマスターは助っ人のビーマにため息をついた。
「今のはひどいよ」
 なんでだ!!と言い返せなかったビーマは黙り込む。今のは確かにビーマが短慮だった。
 雲がふわふわと流れていく。インドラの大試練はビーマの風をクリアしてワンジナの雲。そこでのバトルで助っ人についてきたビーマが敵のエネミーを食べてしまったのだ。
 それは普段なら良いことなのかもしれない。
 しかし、その時のアタッカーはアーツ全体宝具のドゥリーヨダナ。倒したエネミーの数が多ければ多いほどNPが回収出来るのだ。そのエネミーをビーマが減らしてしまい。
「わし様もう宝具撃てない~!!」
 うわぁああん、と泣き真似をするドゥリーヨダナにビーマは反論出来ずに拳を握りしめた。まだ敵は残っている。舐めプしたマスターの編成ではドゥリーヨダナ以外にアタッカーになれるサーヴァントはいないのだ。
 このままでは試練に失敗する。ビーマのせいで。
 にやにやと酒を飲んでいるインドラ神をビーマはちらりと見る。ここは神の御前だ。それを理解してもなおビーマはドゥリーヨダナを引き寄せた。NPとはすなわち魔力。
 それを口移したビーマにドゥリーヨダナは笑った。


■2025/07/06 No.618
わし様達+ジュナパパ
「すぐに分かる」

「周回というものはつらく苦しく終わりがないものだ」
 ドゥリーヨダナの言葉にインドラは無言で答えた。
 カルデアの一室。テーブルを囲んで座るのは、ドゥリーヨダナ、インドラ、アルジュナオルタ、モルガン。なおオベロンは欠席である。
 その周回被害者の会に新たに迎えられた父親にアルジュナオルタが不思議な色をしたお茶を差し出し、途中でその手を止めた。
「すみません。少し前までは絆が上限に達すれば解放されたのですが。──神酒を用意しましょう」
「酒呑童子の鬼の酒が残っていたはず」
 モルガンが指摘するとキャストリアが立ち上がった。有り余るQPを散財した豪華な棚に手を伸ばす。そこにはびっしりと酒瓶が並んでいた。
「ほう。それらは全てオレへの供物ということだな?」
 新入りにキャストリアは虚ろな笑みで答えた。
「そうですね。すぐに飲まなきゃやってられなくなります」
「まあ、御身は基本立っているだけだからな。わし様達程の疲労はなかろう」
「不敬、インドラ様が地に降り立つ名誉を知るべきー!」
「インドラ様はそこにおられるだけで十全なのです」
 現れたふたりの従者。インドラに代わって戦闘を行う彼らに、周回被害者達は屠殺場に向かう可愛い鶏を見るような眼差しを向けた。


■2025/07/05 No.617
わし様+ぐだマシュ
「気をつけろよ」
※ジュナパパのイベントのネタバレがちょっとあります

 インドラが召喚されてすぐ。マスターの少年はドゥリーヨダナに部屋に連れ込まれていた。
 彼好みに豪奢に飾られたテーブルに向かい合わせで座る。ふたりきり。ドゥリーヨダナが口を開いた。
「ここでは誰も聞いておらん。男同士の話をしようではないか。──おまえ、マシュとは寝たのか?」
 直裁的な質問に少年が顔を赤らめてうろたえるのを笑うでもなくドゥリーヨダナは静かに少年を見据えた。
「なるほど。──生前、わし様が帰ったところ。服を破かれた妻と千切れた妻のネックレスを持ったカルナに出くわしたことがある」
「カルナさんは!」
 スーリヤの息子の性格をよく知るマスターが否定の声を上げると、ドゥリーヨダナはうむうむと頷いた。
「カルナがわし様の妻に無体を働くはずがない。友だからな。──だが、友の子を産んだ女に自分の子を産ませた男ならどうかな?」
 誰の事を言っているのかマスターは一瞬分からなかったが、ドゥリーヨダナの表情を見て理解した。
「インドラさんの息子のアルジュナと、ヴァーユの息子のビーマさんは兄弟だ
 そしてインドラはヴァーユの事を友のようなものだと言った。
「そういう倫理の男なのだ。あの神は」


■2025/07/03 No.616
カルヨダ+マスター
「かわいい男だ」

『わたしは偉大なるドゥリーヨダナ様にアンガ国をもらいました』
 そう書かれた札を首から下げて廊下に座っているカルナにマスターは思わず問いかけた。
「罰ゲーム?」
 カルナの横で両腕を組んでふんぞり返っているドゥリーヨダナが答える。
「事実の確認というものだ」
 マスターはあたりを見回した。座っているカルナの正面には最近召喚したインドラの部屋がある。
 傲岸不遜なインドラがカルナにあげた槍がどうのとウザ絡みしていたのはマスターも見ていた。カルナとニコイチなドゥリーヨダナもだ。
インドラさんの対応が目に浮かぶ気がする」
 天空を統べる神々の王に地上の国が意味を持つはずがない。神造の槍と張り合っても鼻で笑われて終わるだろう。それに。
「インドラさんならガネーシャさんの部屋にいたよ」
「なっ!!なにぃ!!!」
 わざとらしく驚いてみせるドゥリーヨダナの横でカルナが無言で立ち上がった。ドゥリーヨダナの手を引く。
「え、ちょ、まっ!!」
 パフォーマンスをしていただけの小心者にカルナは微笑んだ。


■2025/07/02 No.615
アシュヨダ
「ぷすぷす」

「マスター。針を持っておらんか?」
「針だけ?」
 マイルームに顔を出したドゥリーヨダナの要求にマスターの少年は眉を寄せた。裁縫を趣味とするサーヴァントは何人もいる。だというのにわざわざマスターに借りに来たドゥリーヨダナの行動に彼は不審しか感じなかった。
 少年の問いかけにドゥリーヨダナは手に持った何かを針で刺す仕草をする。
「モノがモノだけに女子供やお硬い連中には借りれんのでな?」
 にやにやと笑う顔はろくでなしの顔だ。しかし少年にはドゥリーヨダナが穴を開けたいモノが分からなかった。
「んん~?マスターにはまだ早かったか?ほらわし様とアシュヴァッターマンは付き合っておるだろう?」
 いちゃいちゃしているふたりを見慣れている少年が頷くと、ドゥリーヨダナは紫色の髪をばさりとかき上げた。
「サーヴァントは他者の魔力を受け取ると相手の色に染まる。こぉんな魅力的なわし様がアシュヴァッターマンの色に染まっているのを見たことがあるか?」
「ない。──その、やってないわけじゃないんだよね?」
「当たり前であろう!このナイスバディなわし様に欲情を抱かぬアシュヴァッターマンではないわ!──あやつはな、小細工をしているのだ。だから、な?」
 ドゥリーヨダナは針を刺す仕草を繰り返す。


■2025/06/27 No.614
現パロ アシュヨダ
「料理人も含めて!」

 中華鍋にお玉が触れる金属音と野菜が炒められる匂いに、冬場になればこたつに変わるローテーブルの前に座ったドゥリーヨダナは自然に湧き出るよだれを飲み込んだ。
 アシュヴァッターマンは料理がそこそこ出来る。レシピさえあればスポンジケーキだって作れるぐらいだ。
 それは彼がもともと努力家だったうえに食べさせたい相手が美食家だったからだが。今そのアシュヴァッターマンは豪奢な食事に慣れたドゥリーヨダナに夕食を作っている。
 じゅわっと液体が沸き立つ音。ドゥリーヨダナの位置からは狭い台所が丸見えだ。アシュヴァッターマンが脇に置いたボトルの文字まで見える。
 焼き肉のたれ。安いスーパーのブランド品だ。
 ドゥリーヨダナが昔泣いていた末の妹にあげた飴より安いそれはカウラヴァグループ長兄のお気に入りなのだ。
 それだけではない、アシュヴァッターマンが炒めているスーパーの余りで作ったカット野菜も、薄い硬い肉も、炊飯器でほかほか食べられるのを待っている特売品のお米も、みんなここでしか味わえないお気に入りである。
 アシュヴァッターマンがプラスティックのどんぶり茶碗にご飯をよそう。その上にたれが滴るような野菜炒め。行儀悪く箸ではなく大きめなレンゲをつけて。
「旦那、待たせた。──また聞いてわりぃけど、本当にこんなのでいいのか?」
「いやいや、これが最高なのだ!」


■2025/06/26 No.613
現パロ わし様+モブ
「歌えるなら、それだけでいい」

 場末の歌手を身請けする奴なんかろくでなしだ。
 オーナーに札束を積んだ男は二人っきりになってからドゥリーヨダナと名乗った。
「さて、この前わし様がこのチンケな店に誘われた時にピアノの弾き語りをしていたのはおまえで間違いないな?」
「ほんの数曲歌っただけだよ」
 愛想のない答えに男は大きく笑った。
「そうだな。詐欺の映画の主題歌をいくつか歌っただけだなァ?おまえ、あやつらの企みを知っておったな?」
 こちらの顔を覗き込むヒゲ面から目をそらす。別にこいつを助けようなんて思ってなかった。ただ、あいつらのひとりに友達が沈められただけで。
 ふわりと花の香り。手の届かないような上品な匂いについ気を取られると、男が私の手を取った。
「この店のピアノは調律も何もあったものではない。──おまえ、もっといいピアノとステージが欲しくないか?」
 音を誤魔化さなくても思うように弾けるピアノ!弾かれるように顔を上げた私に大柄な男は頷いた。
「わし様のラウンジにちょうど空きがある。おまえはわし様が来たら『同じように』弾き語りをするだけでよい。給料もここの十倍は払うぞ」
 それは客たちの様子をスパイしろということだ。──だけど、それがどうだというのだろう?
 私は男に頷いた。


■2025/06/24 No.612
現パロ アシュヨダ
「恥ずかしいんだよ!!!」

 アシュヴァッターマンはドゥリーヨダナの本邸に泊まるのを嫌がる。それは、
「だから、やめてくれって言っただろ!旦那ぁ!!!」
 クソデカボイスに風呂上がりのドゥリーヨダナは耳をほじった。
 彼らは恋人らしい睦み合いを堪能し、ふたりでドゥリーヨダナの部屋にあるバスルームから出てきたところだ。
「だがなぁ。餅は餅屋と言うではないか。それともおまえはわし様を放って人の仕事を横取りしたいのかぁ?」
 にやにやと笑うドゥリーヨダナとぐぬぬと唸るアシュヴァッターマン。ふたりの目の前には綺麗に整えられたベッドがある。
 そう、彼らがバスルームに行く前までは、そこは体液やら何やらでぐちゃぐちゃに汚れていたはずなのだ。
 それを、この部屋の主と恋人がバスルームでいちゃいちゃしている間にベッドメイクした者がいる。
 この本邸の使用人達だ。
 彼らのプロ意識は素晴らしく、バスルームから聞こえてくるあれやこれやに気を取られず、自分達の存在を悟らせず、いちゃいちゃしているふたりがいつ出てくるか分からないというのに完璧に仕事を仕上げて立ち去ったのである。
 その仕事ぶりに主であるドゥリーヨダナは満足気だが、一般庶民のアシュヴァッターマンは叫んだ。


■2025/06/22 No.611
わし様+マスター
「少し惜しいが、」

「カルデアのマスターである藤丸立香は誓う。ドゥリーヨダナにだけ冠位を授けることを」
 回帰の砂時計を踏み潰したマスターはセイバーのグランドを指名すらしていなかった。そしてこれからも指名しない。ドゥリーヨダナ以外は。
 管制室にざわめきが起きる。このマスターがドゥリーヨダナに傾倒しているのはカルデア中が知っていたが、ここまでとは誰も思っていなかったのだ。
 マスターはグランドになったばかりのドゥリーヨダナに歩み寄った。
「国はあげられなくてごめんね」
 謝罪に生前王冠を欲して大戦争を起こした男は眉根を寄せた。
「わし様は確かにグランドに相応しい最強にして最高のサーヴァントだが。グランド戦とやらがあるのではないか?」
「棄権するよ。人理修復には関係ないし」
 迷いなく答えるマスターにドゥリーヨダナは大きくため息をついた。
「おぬしはひとつ勘違いをしておる。グランドのわし様を戴くカルデアが尻尾を巻いて逃げるだと?」
 その気迫に管制室の人々が息をのんだ。
「わし様のマスターよ。今からセイバーのグランドを選出せよ。このカルデアが最強だと知らしめるのだ!」
 表情が変えたマスターが頷くと管制室に歓声があがった。


■2025/06/20 No.610
ビマヨダ(ヨダ猫)
「この、トンチキ」

 わし様は猫である。名前はトンチキ。
 ドゥリーヨダナという親から授かった素晴らしい名前があるというのに無知蒙昧な下僕がそう呼ぶのでわし様の名前はトンチキである。許し難い。極上の食事を用意出来る下僕でなければこの爪と牙で思い知らせてやるところだ。
 お気に入りのキャットタワーの天辺でわし様は薄暗い部屋を見下ろす。下僕は他の部屋で眠っている。夜はわし様の世界だ。だがこうも静かだと退屈でもある。
 わし様はゆっくりと伸びをして尻尾を揺らし狙いを定める。
 大きな薄い四角の板を思いっきり倒して叱られたのは数週間前だった。あの板がいない間うるさい音もちかちかもなく過ごしやすかったというのに、愚かな下僕と来たら新しい板を家に連れ込んだのだ。
 こんな板とわし様のどちらが大事か分かりきっておるというのに!
 わし様の縄張りにわし様を不快にするものなど要らぬ。
 わし様は跳躍した。
 勢いをつけて薄い板に飛びかかる。
 ガッシャーン!!
 大きな音が響き、下僕が部屋から飛び出してきた。
 床に倒れ込んだ板の上に乗り、わし様は尻尾を立てて戦果を誇る。
 下僕が頭を抱えて呻いた。


■2025/06/11 No.609
アシュヨダ
「王よ、我が王よ」

 広大な湖に手負いのドゥリーヨダナとマスターが逃げ込んでから半日経った。
「これはクルクシェートラの時に湖に逃げ込んだ時の逸話を再現してるね。なら、こちらの声は聞こえているはず」
 ダ・ヴィンチちゃんの解析に湖を囲んでいたエネミー群を殲滅したアシュヴァッターマンが表情を曇らせた。
「あの時の旦那は怪我ひとつしてなかった」
「ふむ。では最悪の場合、霊基を保てなくなっている可能性があるかもしれない。ドゥリーヨダナのあの性格で逃亡を選ぶ程のダメージだったのだろうから」
 推測にアシュヴァッターマンは水際に膝をついた。
「旦那の逸話を利用して湖に隠れているとしたら旦那が退去したならマスターも無事じゃねぇはずだ」
「はい!先輩のバイタルには異常はありません!!」
 ファーストサーヴァントの断言にアシュヴァッターマンの戦士の手がそっと水面に触れる。
 カルデアで再会したドゥリーヨダナが問いかけた言葉を思い出す。
 ──おまえはあの言葉でわし様を呼ばなくなったのだな。
 呼べるはずがない。アシュヴァッターマンがそれを言わなければドゥリーヨダナの居場所はパーンダヴァに知られることはなく、あんな死に方をしなくてすんだのだ。
 だが、だからこそ。彼を見つけるためにアシュヴァッターマンはその言葉を湖に囁いた。


■2025/06/08 No.608
カルジナ+わし様達
「八つ当たりではない」

※偏向出力フィールドのあれ

「無敵ってことはセクハラ仕放題じゃねぇか!」
 ドゥリーヨダナの宝具で顕現したドゥフシャーサナの声に、ガネーシャ神は青ざめカルナは槍で地面を叩いた。
「短絡がすぎるな、マスター」
 『とりあえずドゥリーヨダナ』で戦いに挑んだマスターは異様な盛り上がりを見せる百王子達にどう対応していいのか分からずに長兄を見る。
「なぁに、ご祝儀というものだ。おまえが女を戦場につれてくるとは、よほど守りきれる自信があるということだろう?ちょおっとタッチするくらい性能テストだとも」
 悪辣に笑ってカウラヴァの旗頭は棍棒を振り下ろす。
「ジャイ・カウラヴァー!!」
「や、やめるッスよー!!」
 偏向出力フィールドをガネーシャ神に渡したカルナがダメージを受ける横で百王子達の手がぱしぱしと象の帽子を叩いていく。無敵のおかげでダメージは無いがいじめられているようで落ち着かないガネーシャ神の後ろでろくでなしの百王子達はきゃっきゃと笑い声を響かせた。
「人のオンナに触るのってサイコー!!」
 彼らの文化圏では人の妻に触れるのは罪に当たる。怪我でもさせようものなら大事だ。だからこそ骰子賭博は大惨事になったのだが。その本人のドゥフシャーサナが馬上で大笑いしている様子から反省の色は見えない。だからこそ。
「な、なんでわし様に八つ当たりするのだカルナー!」


■2025/06/07 No.607
わし様+マスター
「彼が上限になった後はどうしよう」

 ドゥリーヨダナはこの世の春を謳歌していた。
 マスターから生贄を捧げられたからだ。
 その生贄の名前はビーマという。
「ここに在るは我等が勝利。百の王子が集いて地を駆け吠える。蹂躙せよ!我が最強の軍団よ!!」
 死んだ目をしたキャストリアをふたり従えてドゥリーヨダナは絶好調に宝具を連発する。
 その後衛でパーンダヴァの次男とマスターは不思議な色のお茶を飲みつつ歓談していた。
「やっぱりアーツ全体宝具バーサーカーは最高だね!」
 にこやかなマスターにビーマは前衛を見る。確かに1waveでエネミーを全滅させるのは単体宝具の彼には難しかった。
「ドゥリーヨダナは絆上限になって引退してもらっていたのだけど。最近、絆上限のサーヴァントと一緒なら他のメンバーの絆も上がるって分かったんだよね」
 マスターの解説にビーマは苦い顔で返した。新入りのビーマはまだマスターとの絆を深めていない。なので。
「わし様がおらんとお前はマスターとの絆ひとつ満足に紡げんというわけだ。ほうら、わし様に感謝平頭しながら石を吐き出せ。石を」
 溢れる優越感に高笑いするドゥリーヨダナにマスターはにこにこしながら考えを巡らせていた。


■2025/06/03 No.606
アシュヨダ
「戴冠」

「わし様。王冠を作るよ!」
 マスターの言葉にドゥリーヨダナは諦めたように目を閉じた。セイバーのグランドに選ばれたアルトリア(青)が新しい王冠を仕立ててもらったのは先日のことだ。
 次のバーサーカーのグランドに内定しているドゥリーヨダナはため息とともにゆっくりと目を開く。
「わし様、まだ働かねばならんのか」
「絆上げが出来るアーツ全体宝具バーサーカー。完璧にして究極だよね?」
「わし様がこの上なく優れたサーヴァントであるのは当たり前だとして。働きには対価を与えるのが当然というものだ」
 ドゥリーヨダナの主張にマスターは首を傾げた。周回時代に稼いたQPで豪遊しまくっている彼が今更欲しいものなどあるのだろうか?
「グランドの王冠。わし様がデザインしても構わぬだろう?この最高の王子を飾るに相応しいものにせねば」
「まあ、そのくらいはいいけど。予算大丈夫かな?」
「足りなければわし様が出す」
 そう言い切ったドゥリーヨダナが作らせた王冠を見てマスターは再び首を傾げた。シンプルな金の冠についているのはたったひとつの宝石。
 輝くような金色の丸い石は、彼の恋人の額にあるものによく似ている。


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