sevendays23
2025-07-30 23:12:00
6279文字
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優しい夜を追いかけて

タイトル適当
せんちょが自己犠牲して逃げた料理人をおっかける微シリアスです。ノリで書きました。

『優しい夜を追いかけて』

島に着いた時に、その島で事件が起こることなんてよくあることだ。例えば、島をナワバリにしようと海賊がたまたま襲いかかったところに、単に記録を貯めに来て歓待を受けていた麦わらの一味ががいたこと。そして、その敵にあたる海賊を追い払うのを手伝うことになったこと。

「住民を捕まえろー!!」

大声で襲い来る波。一人ひとりは雑魚とは言え、参謀がいるのか頭がしっかりしているのか。よく練られた作戦でくる敵たちは厄介さがやはり際立つ。広い島に数を分かれさせ、大人数で住民を囲い、そちらに襲い来る。一味には直接向かってこない。

「うるせぇ!!」

船長はぐっと足に覇気を蓄えた。

「どけぇっ!!」

鷹・ウイップ。一撃でなぎ払う。住民たちはしゃがんで涙目を上げた。船長は次の敵を探しに瞳を光らせた。

「麦わらのルフィ」

「!!」

「くらえ!!」

不意打ちのように投げられた大きなナイフ。完全に気配を消された攻撃。きっと強者だろう。船長は避けようとした。しかし、その背には、住民がいた。息を呑む。避けれない。覇気で防ごうと、体を固めかけた。

「あぶねぇ!!」

ざく、と鈍い音がした。船長ははっと息をのむ。飛び散った、紅。黒いスーツの肩に突き刺さる、ナイフ。

「サンジっ!!!!」

「大丈夫だ!!」

だが、心配も声かけも触れる間すらなく、彼の姿はふっと、消えた。

「頭のこいつさえやりゃあ」

「ひっ」

「統率は、なくなる」

「おい!」

話を無視し、ナイフを引き抜き、闇に溶けるように潜り込んで、

「ぎゃひっ」

「後は雑魚だ」

足を上から叩きつけたのか、白目をむいた男が、こてんと闇から放り出された。

「任せたぜ、船長」

その後は、怪我などもろともせずに、また地を蹴飛ばし、次の標的へ。

「待て!サンジっ!!」

船長は話は終わってないとばかりに、追いかけようとしたが、

「くそっ!ボスが!」

「かまわねぇ!最後までやれっ!」

「きゃー!!」

また悲鳴。住民の誰か。そちらに気を取られる間に、料理人はとっくに姿を消していた。

「お前ら……!!」

船長はすうっと息を吸い込んで、苛立った。

「いい加減に、しろォ!!!」

覇気が、爆発する。吹き飛ぶ、統率を失った大量の雑魚たち。容赦なく飛ぶ拳。それは、仲間への声かけを阻み、仲間や彼らを歓待する人々を傷つけた怒り。

「あと、待てサンジィ!!!」

広い島に、ひたすらに殴る音と蹴る音、そして船長の声が響き渡ったのだった。

―――――――――

「なんとお礼をしていいやら!」

「とても、しつこかったんです!ありがとう!」

「いいよ!」

船長は住民に感謝とともにずらりと囲まれていた。彼らは歓待の礼にか自然とか住民のアフターケアに努めていた。船長は仲間の好きにやらせたいし、住民においしいものをもらったから、ちゃんと敵を屠り、住民を助けることに異論はない。

「それよりおれはサンジを探すんだ!!」

「失礼しました!せめてお仲間を私たちも探すのを……

「違うぞ!そんなことしなくていいんだ!」

しかし、引き留められるのは話が違うし、狙われ傷を負った住民がその仲間を探しに行くのはもっと話が違う。好意からだと知ってるからか、乱暴な真似もできず、その大量に囲んで頭を下げてくる人々のぎゅむぎゅむした空間に体をねじ込んで出ようとする。

「おーい!こっちに並んでくれー!」

すると、聞き覚えのある声がして、はっとした。

「全員診察するぞー!」

「チョッパー!」

その言葉でなだれ込んだ人混みが緩み、彼はようやく囲いから解放された。

「サンジ知らねぇか!!肩怪我してたんだ!」

「大丈夫、ルフィが残りの敵片してた時に気がついて、肩に包帯巻いたんだ!毒とかもなかったけど安静にしてって言ったぞ!」

「そっか、よかった!さすがチョッパーだ!」

「へへ、当然だ!」

船長はとりあえずホッとした。彼の肩の怪我が放置されていないことを知って。

「でもおれがまだ話あるんだ!」

しかし、まだ、それは料理人を逃す理由にはならないらしい。

「どこ行った?」

「あっちだぞ!」

船医は褒められて嬉しそうにしながらもきちんと指さした。

「ありがとうチョッパー!行ってくる!」

「もっかい安静にしてって言ってくれよ!」

「あぁ!!まかせろ!」

船長は請け負い、人混みをかいくぐって、さらに料理人を探しに行くのだった。

――――――

走る、走る。仲間を探して走る。料理人を探して走る。でも、見つかるのはなぜか別の仲間ばっかりだ。悪いことではないから、いいのだが。

「ヨホホ、ルフィさん。サンジさんをお探しですか?」

「ブルック!見たのか?」

音楽家は、住民の荷物を瓦礫から忙しそうに引っ張り出している。そして、元気に動く仲間たちにケガも疲れもなさそうだ。

「えぇ。みましたよ。肩を怪我されていましたが……また優しいことをしたんです?」

「あぁ!まただっ!おれにして、すーぐどっかいったんだ!」

「それはそれは、お怒りですか?」

「うーん!怒るとは違う!話がしてぇ!」

「ヨホホ、どちらにしてもサンジさんには薬でしょう!あちらに行きましたよ!」

「ありがとう!」

音楽家が帽子を外して頭を下げて、船長を見送る。船長はまた走る。走る。
そして、また仲間に出会うのだ。

「アウアウ、いそぎかァ?ルフィ」

「フランキーしごとはえーな!」

「何いってんだ、こんなのいつもどおりだろォ」

次は船大工だ。忙しそうにトンカントンカン。トンカチを動かして、家という家の穴を猛スピードで塞いでいく。船長は、それに一瞬見惚れた。

「それより、急ぎじゃねぇのか」

「あっ、そうだ!サンジどこだ?」

「サンジか。20分ほど前にあっちの方であったけェメシ作ってたぜ。ナミとジンベエとロビンと一緒だ」

「そっか、ありがとう!」

船長は走って行きかけた。だが、

「船長の仕事頑張れよ」

そう言われて、ピタと足を止める。

「違うぞ!おれは話してぇだけだ!!」

「知ってるよ。だからおめぇが心配な船員と話したり休ませたりするのはおめぇの仕事だろ」

「うーん、仕事?仕事じゃねぇけど仕事なのか?」

「アー、引き留めて悪かったな、早くいけよォ」

首を傾げ始めた船長。船大工は背中をたたいて促され、また走り出す。ヒントをもらって、鼻をひくひくしながら、

「むっ、ちかいぞ!」

そしてひくんと拾う。おいしそうな匂い。

「あっ、食べ物に釣られたの?あんたのは後よ後」

「いいよ、いいよ。分けてあげなよ」

「私たちのために戦ってくれたのに」

「だめじゃ。わしらは後で宴があるからのう。ここで食うわけにはいかん。そうじゃろルフィ」

「そ、そうだぼ。宴、するから、大丈夫だ」

「よだれっ」

たどり着いた大鍋。遠くからでもわかるくらい良い香りがする、肉の脂と野菜が溶け込んだ琥珀色のホルモンスープ。きっとそれを一杯すすれば力がもりもり出るはずだ。

「ごくん、ちがう!そうじゃねぇ!サンジは!」

とろりと航海士がかきまぜて、操舵手がそれをよそって人々に分けている。でも、肝心の探す人物はそこには居ない。

「私たちが来たときには、もうこれできてたのよ。でも、いつも通りニコニコして、ここはいいよ!って言うから」

「少し休みましょうって、ロビンが無理矢理付き添っていったぞ」

「ありがとう!どこに……

「ストップ」

「ん、ん?」

船長はその話を聞いて少しほっとして飛んで行きたがった。しかし、航海士は納得しなかったらしい。船長を腕で引っ張り背中に連れ込んでひそひそと耳打ちする。

「あの肩、どうしたの?」

「おれを庇った!」

「あんたを?」

「そうだぞ!だから早く話して休めっていうんだ!」 

……成程ね」

彼のひそひそした、でもすっぱりとした返答に、航海士は納得したように頷いた。操舵手もしっかり聞いていたらしい。

「そりゃお前さんがしっかり話したほうがええのう。あっちじゃ、案内はいるか?」

「いいよ!ありがとう!」

お礼を言った後、船長はどこか心配そうな住民に笑顔を向けた。

「サンジのメシうんめぇからな!すんげぇ元気になるぞ!」

「しかし……

きっと料理人の肩の様子をみていて、無理させたと思っているのだ。

「大丈夫!おれが、サンジを休ませるからな!」

「おお、任せたぞ!さすが船長じゃ!」

「ほら、これ食べて元気出さないと、サンジくんもっと無理しちゃうんだから!」

笑顔の操舵手とウインクした航海士とがフォローする。船長はししっと嬉しそうにして、さらに仲間を探しに向かうのだった。

―――――――

走って、走って。次にまた見つけたのは。彼の探す仲間と、一緒にいたとされる仲間。

「ルフィ。サンジを探しに来たの?」

「えっ、一緒じゃねぇのか?」

「休もうと誘ってサニーに戻ろうとしたんだけど、この子が道に迷って母親と逸れてね」

またそこには料理人は居なくて、代わりに考古学者は女の子を連れていた。ぐすぐすと泣く、2つくくりの黒髪の子どもだ。

「そうしたら、おれがお母さんを探してきてやるってあっちに走ってしまったわ」

「ごめんなざい、おにいちゃん、げがじでたのに」

「あなたが謝ることじゃないわ」

「そうだぞ。サンジが優しいからだ!おれ連れて……

「あ、いたいた!おーい

船長が駆け出す前に、声がした。
料理人かと思い、ばっと顔を上げた。

「あれ、ルフィ」

「ウソップ!!どうしたんだ!」

しかし、また探している人物ではなく。少女にそっくりの顔の大人を連れた、狙撃手だった。

「サンジがさぁ、迷子のところにつれていけって言ってきてさぁ、ほら、かーちゃんだぞ」

「おかあちゃぁぁん!!」

「何から何までほんと、ありがとうございます」

泣きながら子供は母親にへばりついた。安堵の親子の再会だが、船長はそれどころではない。

「なぁ、サンジはどこいったんだ!」

「休もうぜって誘ったんだけどさ、なんかその子落とし物したんだろ?それ探してからにするって」

「川のあたりで、だいじな、うでわ、きれちゃったの」

「遠方で稼いでる主人からもらった紐の腕輪で……

少女は腕を見せた。何もはまっていない白い腕。しかし跡があるから、長いことつけていたのだろう、

「ルフィ、いってきてくれる?サンジは川のあたりで落としたって知ってるからそこを探すと思うわ」

「おうっ!!」

「そんな!私も探しに」

「おれも……

「うわぁぁぁんごめんなさいぃぃぃぃ」

「あ、おいなくなよ!あんたはここにいなきゃだめだ!」

「ウソップ、任せろ!おれがいってくる!頼むぞ!」

狙撃手と考古学者と母親が必死に子をあやすのを背にしながら、船長はさらに駆け出した。もう、近い。すぐそこだ。川の音がする。

「おう、ルフィ。なにしてんだこんなとこで」

「ゾロ!」

その前に、まだ会ってない仲間に会うのは予想外だったが。

「サンジ探してんだ!」

「奇遇だな。おれも探してた」

「ゾロも?なんで」

「お前を庇うの遠目で見た」

「え」

サクサクとした返答に船長は驚いた声を漏らした。剣士は面倒くさそうに頭をかく。

「だから船長と話してとっとと寝ろって怒鳴りに行くとこだった。でもお前も探してんなら、別にいいな」

「しし、さすがゾロだな!」

「で、どこいんだあいつは」

「川の側だって……あそこだ!!」

船長はようやく見つけた。もうだいぶ日も落ちた、暗い暗い、水に濡れた高い草の中。しゃがみ込んで探している、金を。

「サン――

「あったー!!」

料理人はうれしそうな声を上げ、体を起こした。掲げた、紐の腕輪。途端に、目が合う。

「サンジ!」

「げ」

「見つ――

「マリモ!これロビンちゃんのとこにいる女の子に届けろ!!」

「あ?!」

「ふべっ」

料理人は素早く地を蹴り、飛んで船長をかわして、剣士に腕輪を押しつけた。

「おれは――

「届けてやるが」

だが、逃げを打った体はわしりとつかまれた。

「逃げるのは無理だな」

「サンジっ!!!」

「ごゆっくり」

剣士はざまあみろの代わりに呻きながら、こんなときは腕輪を指にかけつつ、正確な方向に向かう。もう逃さないとばかりに、ぎゅっと料理人が船長にハグされて捕まる音が響くのだった。

――――

「なんで逃げたんだ!」

「だってよ、怒るだろ。あんなとこで怒られたら、島のレディたちが余計心配するじゃねぇか」

「ちーがーう!おれは怒ってねぇんだ!」

頭をポリポリかきながらようやく降参した料理人。船長と横並びになって坂道を腰掛け、川を見ながら話をする。

「怒ってねぇけど、サンジがおれを庇って怪我するのはいやだからすんなとっとと休めっていいてぇから探してたんだ!勘違いすんな!」

「なげぇし。それ、怒ってるって言うんじゃねぇのか」

「違う!怒るってのは怒るだろ!」

「いや、意味わかんねぇよ」

「わーかーれー!!」

「やっぱ怒ってんじゃねぇか」

「サンジが勘違いするからだろ!」

料理人のため息混じりの返しに、船長はむきーっと半月目にしたが。

……でも、ま、怒ってねぇんなら」

ぽふりともたれかかった、金髪頭。包帯がついていない方の肩が、船長とぶつかる。

「逃げた意味、なかったな」

「そうだぞ、サンジ!意味ねぇから逃げるな!」

「さらっと禁止事項追加してんじゃねぇよ」

「違うぞ!努力義務だ!」

……誰から習ったそれ。ウソップか」

「ロビンだぞ?」

「そりゃ百万遍頭に入れとかねぇと許さねぇ」

「わかった、努力義務努力義務努力義務」

「その調子だ」

逃げを打っていたとは思えないほど、会話は進む、進む。先ほどまで怪我をおして働き続けていた料理人はとっくに笑顔を浮かべるほどリラックスはしていたし、船長ももういつも通りだ。

「よし、サンジ!!話は終わりだ!もっと休もう!」

「ここでか?」

「サニーでだ!そんで、みんなで寝てから宴だっ!!さっきの肉スープのやつとか食いてぇぞ!」

……そりゃ、早く休まなきゃな」

「だろ、行くぞ!」

「別に、走れるぞ」

「だめだ、安静にってみんな言ってんだからな!」

……へいへい」

船長は料理人をひょいと担いだ。
けれど、もう、料理人は逃げなかった。

「治療終わったぞ!」

「手伝いも終えてきたわよ」

「休んでから宴だろー!」

「寝るぞ」

腕輪を返し終えたらしい剣士が、ちらとそちらを見た。狙撃手と考古学者も、操舵手も航海士も、船大工も音楽家も、船医も皆で彼らが戻るのを待っている。

「しし、よーし!」

船長は料理人と顔を見合わせ、にっと笑った。もう、みんなそろったのなら、やることは一つ。

「休むぞー!!!」

「おう!」

みんなで揃って、休息のサニー号へ。
そして、その後の宴に備えるのだった。