syanpon
2025-07-30 06:52:53
1502文字
Public
 

「こんなの知ったら戻れない!」

オトスバ
現パロ


「なぁ、俺と一緒に悪いことしようぜ」
 
 門限ギリギリまでの鬼ごっこ、深夜の夜食、明け方の散歩。

 子供から大人まで『悪いこと』と言う名の甘美な誘いというものは存在する。
 そうして三つ年下の幼馴染は僕を幼少の頃からそういった遊びに連れ出してくれる大切な存在であった。この関係は大学生となった今でも続いている。

 隣でクッションを跡が残りそうなくらいぎゅうと力強く抱きしめながらテレビの画面を食い入るように見つめる横顔を眺めながらぼんやりと彼が未だ自分の隣にいる幸せを噛み締めた。
 中学生の時一旦疎遠になったりもしたのだが、なんやかんやあってオットーがスバルの両親に許可をとって引きこもりの鍵付きの扉を蹴破ってぶん殴って大喧嘩したのも今となってはいい思い出だ。
 ちなみに今日は「オットー! 明日の朝までオールだオール! 寝かさないぞ!」と大量のお菓子やジュースを抱えて僕の家にやってきている。
 
「ふふ」
「え、やば。今の超絶スプラッタのシーン、お前の目にはほのぼのホームビデオに見えてたりするわけ?」
「あ、いえ考え事を」
「映画に集中しろよ!」
 そう言いながらナツキさんはリモコンを手繰り寄せて映画をとめ、そのままテレビの電源だって消してしまう。
 彼の行動にパチパチと瞬きで返せば困ったようにふい、と目を逸らされる。
 二桁単位の付き合いだ。また面倒くさい思考回路に陥っているな、なんて思いながら彼が言葉を紡ぐのを待つ。
 
「今日、無理やり誘ったのから眠かったりする?」
 下から覗き込むようにして真っ黒な瞳がほんの少しの不安で揺れる。
……なんでそう思ったんですか?」
「だ、だってお前が明日休みだって、バイトも入ってなくて連休だって聞いて嬉しくて……。いきなり今日はオールしようって言い出したの俺だし……
「嫌ならちゃんと断りますよ僕ぁ」
「でもお前、俺に甘いじゃん……
「それは否定しませんけど」
 
 甘いってわかってるのにこうやって不安をぶつけてくる。
 
 ――巷ではこういった行為も試し行動、なんていってみたりするらしい。
 確かに面倒くさいなこの人、いい加減僕の好意に胡座をかいてもいいくらいの年月一緒に過ごしているだろうと思ったりもする。
 するけどそういうところ全部含めて彼に骨抜きにされているからもうダメなところまで僕はきているのだろう。
 
「ねえナツキさん」
「なに……
 だから可愛いなって気持ちのまんま、そのへの字に曲がった唇を己のそれで塞いでやる。
 彼は思考がキャパオーバーしてしまったようでぴくりとも動かなくなってしまった。
 ぽかんと固まったまま、されるがままの唇をペロリと舐めてやる。瞬間、肩がびくりと大仰に跳ねるのも愛らしかった。
 
 そのままぐぐ、と体重をかけてやればこの無防備な年下の幼馴染はきょとんとした顔で僕の体の下に転がされてしまう。
 
「お、おっとー、いまおまえ、え、ちゅー、き、きす」
「ナツキさん、僕あなたから可愛い……んんっ! わるういことに誘われるの、好きなんですよ」
 
 僕の体の影が落ちているのにそれでも可哀想なくらいに耳まで真っ赤に染まっている無防備な男に思わず笑いがこぼれてしまう。
 そうっと指の背で頬から耳裏にかけて撫で上げてやればその動きにピクピクと可哀想になるくらい体が跳ねるのに僕の下からどこうとしない。
 
 もっと狭く、もっと僕だけを見るように、もっと囲い込むように腕を曲げ、顔を寄せて囁く。
 
「僕と悪いこと、しちゃいましょうね」
 
 だって今日は寝ない日なんでしょう?