Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
Rana
Public
レノシス(短編)
Clear cache
隠し味はいらない
レノ✕シスネ
──レノがゴンガガを訪れたのは、任務のついでという建前だった。
鬱蒼とした森を抜け、湿った土の道を進む。絡み合う木の根が足元を覆い、ジャングル特有の熱気が肌にまとわりつく。遠くから水の滴る音や、小さな獣の鳴き声が響き、緑の匂いが濃く漂っていた。
タークスの極秘訓練施設があるこの地に、彼が顔を出すことは珍しくない。けれど今回の足取りは、いつもよりゆっくりで、迷いなく一軒の家へと向かっていた。
玄関先で迎えたのは、ここでの生活にもすっかり馴染んだシスネだった。落ち着いた動きでドアを開ける彼女の瞳に、懐かしい色が揺れている。
「わざわざ来なくてもよかったのに」
言葉とは裏腹に、わずかに緩む唇。レノには、その奥の感情を見抜けないはずがなかった。
「いいじゃねえか。顔見たかったし」
「
……
相変わらずね」
家に足を踏み入れると、どこか不穏な空気が漂っていた。レノが鼻をひくつかせる。
「なんか
……
焦げくせぇな」
「
……
気のせいよ」
シスネはさっと視線をそらした。だがその背後には、哀れに黒く焦げたフライパンと、原形を留めていないオムレツ。そして妙に甘い香りを放つ謎のスープ。まるで戦場の跡のように散らかったキッチンがあった。
「
……
シスネ?」
「黙って。失敗したの
……
ごめんなさい」
俯いた横顔の、長い睫毛が震える。タークス時代、何でもそつなくこなし、完璧な立ち回りを見せていたシスネ。そんな彼女が、たったひとつ上手くいかないものを抱えている。それが料理だということを、レノは知っていた。
「
……
どうして、いつもこうなっちゃうんだろう
……
」
吐息のように溢れたその声が、レノの胸の奥を掠めた。自然と、口元に笑みが浮かぶ。
「なあ、シスネ」
「
……
なに?」
「俺が食いに来たの、料理じゃねーし」
「
……
は?」
唐突に腰を引き寄せられ、シスネが驚きに目を見開く。そのままバランスを崩し、レノの胸に抱き留められた。
「食いたいの
……
おまえだから」
「ちょ、何言って
……
っ」
唇が触れる直前、頬が赤く染まっていく。もがくように身をよじるが、レノの手はその背をしっかりと抱きしめて離さない。
「いーだろ? おまえは充分頑張った。今度は俺がご褒美やる番だぞ、と」
「ご褒美って
……
レノ、やだ、待って
……
っ」
抗う声は、もう甘く震えていた。ベッドの縁まで後退させられ、そっと押し倒される。
「おまえが可愛すぎんのが悪ぃんだぞ、と」
赤い髪を指に絡め、熱を帯びた肌に口づけを落とす。小さく漏れる吐息が耳元をくすぐり、胸の奥に火を灯す。
「
……
ほんと、ずるいわね、あなた」
「だろ? でも
……
好きだろ、こういうの」
シスネは黙って視線をそらす。それだけで、レノには十分だった。
焦げた匂いに包まれた夜は、やがて甘く、静かに溶けていった。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内