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輪子湖わこ🔞
2025-07-29 07:38:28
7981文字
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R18-光サン 暁月帰還後
リバ前提の光サンのみ スケベ
男が船に転送されてきた時には、流石にもうダメかと思った。
四肢が付いているのが不思議な程ボロボロで、普段減らず口ばかり叩いている唇からは、か細い空気が漏れるだけ。こいつだけは殺しても死ないと思っていたのに。ただ目の前の光景が信じられず、立ち尽くしていた。俺が他の面子より冷静に見えたのならそういう事だろう。目の前に迫った奴の死が、あまりにも非現実的で、受け止められなかったのだ。
俺達を強制的に船に転送した時のキザったらしい顔が頭にこびり付く。帰ってきたらからかってやろうと思っていたのに。
アルフィノとウリエンジェが全力で治療に専念し、グ・ラハが懸命にそれを補佐する。どうにかしてこの男の命を繋ぐために。
俺はと言うと、何をする事もできず、ただ呆然と見守るしかなかった。
「なぁサンクレッド、褒美は?」
「
……
今する要求じゃないだろ」
バルデシオン分館の中にあるナップルーム。元々は研究員の為の仮眠室だったらしい。仮眠室と言うには何もかも揃いすぎているこの部屋は、最近では専らこの冒険者の寝床となっている。
終末を退け、全員が命あるまま帰還した。
無事戻った俺達の姿を見て、オールド・シャーレアンで待ち構えていた人々は大いに湧き立った。その歓声が嬉しかったらしい。辛うじて人体が繋がっていた筈のこいつは、凱旋が終わるまで自分の足で立っていた。
今までにない程の深傷を負いながらも、知神の港で出迎えた皆に向かって手を振っていたのだから、見栄っ張りもここまで来れば天晴れだ。
そうしてバルデシオン分館に戻った直後、見事にぶっ倒れ、慌てたシャーレアンの医療班に連れ去られた訳だ。
暁の有能な癒し手達の迅速な応急処置のお陰で命こそあったが、紙一重だったのだから至極当然だろう。専門家達のもと本格的な治療を受けた後、放っておくと必ず勝手に出歩くこの男は、半ば軟禁状態でこのナップルームに押し込まれ、療養を強制されていた。
斯く言う俺も大概のものだったが、今回ばかりはこの男より随分と早く回復し、今に至る。
そんな状況にもかかわらず、この男が俺に求める褒美といえば、一つしかなく。
「嫌だ今がいい」
「流石に無茶だぞお前」
ベッドの縁に座る俺の腰に、褐色の腕が纏わりつく。生傷が走るその腕の持ち主は、ブランケットを床に蹴落としゴロゴロしていた。ヴィエラの上背に対してかなり大きなベッドを横向きに使い、うつ伏せで転がっている。腹の辺りにもかなり深い傷があった筈だが、あれはどうなったのか。
歴戦の冒険者といえば、一つや二つ消えない傷跡があるものだが、普段のこいつの体は新人冒険者を疑う程に綺麗なものだ。恐ろしいスピードで傷は塞がり、しばらく経てば跡形もなく消えてしまうのだから、いよいよ人間なのか疑わしい。本人は代謝がいいだの何だのと抜かしていたが、そういう問題ではないだろう。
そんなこの男の身体でも、今回ばかりはそこかしこに生々しい傷を跡を残していた。抜糸の済んでない箇所もあれば、取れていない包帯も多い。
刻まれた数多の痕跡が、世界の果てでの戦いの過酷さを知らしめている。
「傷が開くぞ」
「いけるって」
男は忙しなく足をバタつかせながら、俺の尾骶骨に頭を擦り付けた。長い耳の付け根が折れ曲がるのも気にならないらしく、フンフン鼻を鳴らし人の尻にしがみ付いている。仮にこの姿を目撃した者がいたなら、こいつが終末を退けた事自体疑いたくなるだろう。なぁ、だとか、頼む、だとか、気の抜け切った声で褒美をねだる様子は、ただの色ボケ野郎でしかない。
「
……
世界救ったのに」
たとえ事実だとしても、自分で言ってちゃ世話ない。なかなか良い返事をしない俺に痺れを切らしたのか、男は腕どころか身体ごと纏わりつき、俺の膝に頭をのせて来た。黒い耳がフラフラと揺れている。
こうなった時のこいつのしつこさは身に沁みていた。何より、今回ばかりは最悪の事態も覚悟したし、全員命があったのは本当に奇跡だ。そして、それを成し遂げたのもこの男な訳で。
欲しがっている物を自分が差し出せるのなら、やぶさかではない。
「
……
わかった」
俺の承諾にヴィエラ特有の長く黒い耳がピンと立ち上がる。巻きつく腕を引っ剥がし、ベッドに仰向けに転がした。期待に満ちた琥珀色の瞳がこちらを見上げている。
「
……
お前は絶対動くなよ」
グローブをベッドに落としてコートに手を掛ける。流石にこれは想定してなかったので、戦闘用の服装で見舞いに来たのだが、こうなるなら軽装にすれば良かった。雑に脱ぎ捨てた装備をかき集めその辺の椅子に引っ掛けた。
トラウザー以外の全てを脱ぎ、ベッドに上がる。俺とは対照的に脱ぎやすい療養着で過ごしていた男は、モゾモゾとシャツを脱ぎ捨て既に下着だけになっていた。
腹の包帯はやはり取れてはいない。ただ、血が滲んでいる訳でもなかった。多少運動する程度なら、この男にとってはもう問題ないのだろう。しかし。
「今日は強請っても挿れないからな」
「えーなんで」
どっちもがいい、と口を尖らせる男の鼻先を軽く弾く。イテ、と小さく文句を言う相手を見下ろし、トラウザーも脱ぎ捨てた。体重を掛けないように慎重に跨る。限りなく負担を軽くするのは最低条件だ。ただでさえ医療班の面々が悲鳴を上げるような行為なのだから。
まさか俺がこの男の無茶な誘いに乗るだなんて、誰も予想してないだろう。
「腹の中はまだ怖い」
「心配してくれんだ」
「当たり前だろ」
流石にどうなるかと思ったぞ。そう伝えると、男は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてこちらを見ていた。失礼なやつだ。俺だって心配はする。それこそ、現実が受け入れられず、放心する程度には。
男はややあって、じっとりとした目でこちらを睨んだ。こいつはこいつなりに、思う所があったらしい。
「一番最初に消えた癖に」
「一番最後まで戻らなかった癖に」
睨み合い、硬直状態。引く気は更々ない俺に気付いたのか、自分の損傷の方が酷かった事を認めたのか、どちらかは分からないが、今回は相手の方が折れた。
「
……
お互い様ってことでいいか?」
「お前の方が酷かった」
「強情」
「それこそお前ほどじゃない」
軽口を叩き合っても永遠に終わらない。どちらともなく決着を諦め、口を閉じた。
「
……
やるか」
「おう」
色気もへったくれもない。というより、そんなもはこいつとのセックスに存在したことすらなかった。
下着に手を掛け、中の物を引っ張り出す。くだらないやり取りをしていたにも関わらず、半分ほど頭をもたげているのだから、流石絶倫。こんな状態の身体で行為を強請って来ただけある。もしくは、生命の危機に瀕したからこその本能なのだろうか。そうであるならば向ける相手が違うと思うのだが。
「大人しくしてろ」
傷の箇所を確認しながら膝を立たせる。腹に酷い傷はあったものの、関節や腰回りは無事だったようだ。竿を握り、数度擦れば難なく芯を持った。
唾液を溜め、つぅと垂らす。塗りつけるように男根をしごけば、こちらを凝視していた男の喉仏が上下した。動くなと言ったのに。無理矢理首を上げていむ所を咎めたが、あからさまに不服そうにしている。
「見たいなら枕使え」
「ん」
枕を手繰り寄せ、頭の下に押し込んだ。見るなと言って聞くような相手ではない。押し問答になる前にとっとと代案を出した方が楽だ。
唾液で塗れた亀頭を口に含み、塗り広げるよう根本まで唇を滑らせる。舌で包みながら何度も行き来を繰り返せば、荒い呼吸が聞こえて来た。根本に手を添え、口と一緒に扱いていると、隠しもしない喘ぎ声が頭の上から振ってくる。本当に欲望に正直な男だ。
「ぁ、それ
…
ッも、出るっ」
限界まで勃起した物を根本まで咥え込む。視線だけ寄越せば、返事と捉えた男が頭を掴み、好き勝手揺さぶり始めた。喉奥を叩かれ、えづく。
責め手側に回った時のこいつは本当に容赦がない。自分が抱かれる時は雌猫のように愉しむ癖に、こちらに回れば獣そのもの。どちらにせよ、最終的に貪られるのは、いつも俺の方だ。
「ん、ぐッ、ぅぶッ、っッ」
「あ゛、ぁーー
…
きもちぃ」
口内のものが一層膨らんだ後、逃がさないと言わんばかりに頭を固定された。浮いた腰が押し付けられる。喉奥に出され反射的に飲み込んでしまった。最悪だ。
「げほ、ゴホッ、お前、
……
ッ‼︎」
「わり、久々でつい」
男は口先だけで謝罪し、ヘラヘラと笑った。ベッドの端に乱雑に置いてあった私物の鞄を手繰り寄せ、中身をゴソゴソと漁っている。見知った小瓶を取り出して、こちらに向かって差し出した。
「使うだろ?」
「おい、まさかお前
……
」
ウルティマ・トゥーレから生還した後、瀕死だったこの男はオールド・シャーレアンでの滞在を余儀なくされていた。それどころかバルデシオン分館からすら出ていない筈だ。ということは必然的にこの私物は宇宙に持って行き、持ち帰った物ということになる。
「
……
何故持ってる」
「や、
……
いるかなと思って」
突然使うかもしれないし、などと訳の分からない事を抜すコイツに呆れ返った。宇宙の果てでまで、性行為の可能性を捨てなかったというのか。星が終わるかもしれないと言う時に何を考えていたのやら。
ある意味、当たり前に星を救って、当たり前に全員を生かし、生きて帰るつもりだったのだろう。生命に貪欲で、本能に素直で、こんなお気楽な男だからこそ、重責に耐えきり全てやり遂げてしまったのかもしれない。
呆れと敬服をないまぜにして笑っていると、間抜け面が首を傾げていた。
「まあいい、準備するから寝てろ」
下着を脱ぎ捨て、受け取った小瓶の中身を手のひらに垂らす。雑に穴に塗りつけ、指を入れ、早急に本数を増やしていく。ここ最近使っていなかったにも関わらず、この男に散々暴かれたそこはすんなりと指を受け入れ開いていった。
昔は目的のために他の男と寝る事もあったが、第一世界に渡った後は一切なくなった。戦い方を変えたこともあり、前線に出ることが増えた。諜報活動は相変わらず多いが、身を守る力が増した事で手段を選べるようになっていたし、何より自分を雑に扱いたくなくなるような、大切な人が増えた事も大きい。
そしてこの男との行為に関しても、もう目的などはない。
最初は、特別な力があるにも関わらず、あまりにも隙だらけなこの男を管理し守るため。そして利用するために始まった関係だった。しかし、終末すら退けたこいつの命を脅かせる者など只人には存在しないし、仮に居たとして、俺が一人で太刀打ちできる者ではないだろう。
何より、俺が誘導などせずとも、勝手に面倒事に顔を突っ込み、巻き込まれ、周囲の人々を掬い上げて行く。
それでもこいつとの関係を続けているのは、惰性と、単に求められるから。
そして、別に悪くないとも思っているから。
「ほぐしてるの、見てえ〜」
「これくらい我慢しろ、すぐ済む」
内壁を確かめるように撫で、縁を開く。そろそろ問題ないだろう。
指を抜いて男の上に跨った。下腹部に体重をかけてしまわないように足裏をベッドに付けたまましゃがみ、竿を掴む。さっき出したばかりにも関わらず、男のそれはすっかり復活し、硬く熱を持っていた。
先端を穴に押し付け、慎重に下ろしていく。流石に指だけでは足りなかったのか、久々の圧迫感に息が詰まった。根本まで咥え込む寸前で止め、中の肉が質量に慣れるまで、細く息を吐いた。
「ふ、ぅ
……
ッ」
「すっげえ格好」
「フッ、好きだろ?」
鼻で笑って見下ろせば、腹の下の相手は満更でもない顔をしていた。からかうようにわざと中を締め上げれると、嬉しそうな呻き声が漏れ聞こえる。
「なんかさぁ、エロくなったよな」
舐めるように見上げながら、しみじみと呟いている。ややあってニヤリ、歯を見せて笑った。
「俺のせい?」
「元々だ」
正直な所、こいつのせいである事は否定できない。しかし、何かを開拓されたり、暴かれた訳ではない、と思う。自由に振る舞う男を見ていると悦楽を隠したり、恥じる事が馬鹿馬鹿しくなっただけだ。それこそ行為の最中、恥ずかし気もなく堂々と痴態を晒す相手を見続けていれば、瑣末な事はどうでもよくなる。だからこの返答も嘘ではない。
「可愛くねえやつ」
「かわいくて、たまる、ッか、ぁ、あッ?!」
返事が不満だったらしい。俺の腰を掴み下から突き上げてきた。予期せぬ刺激に尻が落ちそうになるのを踏ん張る。動くなと散々言っていたのに、この馬鹿兎めが。
「こらッ、まッ、ぁ、ひぐッ!!」
反応の方は満足だったようだ。上体を崩しながらも体重がかからないよう、シーツに付いた手を突っ張りどうにか耐え凌ぐ。下から見上げる獣の目が、すぅと細められ、ギラついた。
「おいッ傷がッ」
「そんなにヤワだったらもう死んでる」
腰骨をガッシリと掴まれ、持ち上げられる。中の物がズルリと抜け出る感覚に背筋が粟立った。
「ふッ、ぅ
…
あ、ばか、やろ、ぁア!!」
一気に押し入られ視界に星が散った。体格は俺とさほど変わらない筈なのに、逃れられない。さっさと搾り取って終わらせる予定だったのに。今はただ膝を崩さぬよう震えるばかりだ。
「ほんとに、だめ、脚ッ、が、ぁッ、ぅあ゛ッ」
「ダメって言われたら燃えるんだよなぁ」
下から突き上げられる刺激に膝がガクつく。こっちは必死なのに。呑気な事を言いだした男に本気で腹が立った。腰を引き上げるだけ引き上げ、離される。腹に当たるギリギリのところでどうにか留めたいのに、今度は腰を突き上げられ、根本まで。
一人で使うには広すぎる部屋に乾いた音が響く。雁首が前立腺を擦るたびに喉が引き攣り、短い悲鳴が止まらない。
「このっ、クズがッ」
「星救ったのに?」
「それを、盾に、するな、っア!!」
いよいよ限界をむかえそうな足を、さらに追い詰めるように突き上げる動きは止まらない。馴染みの切迫感が迫り上ってくる。今は困る。このまま達せば、潰してしまう。快楽と不安が混ざり合い、思考がドロドロと溶けていく。視界が歪み、目尻に何かが滲んだ。
「俺だって、ッ」
「ん?」
「これ以上、お前の血を見たくないッ」
ようやく動きが止まった。男は、腰の動きどころか、目を見開き硬直していた。ややあって、返事とも取れないな間抜けな声を出し、ようやくベッドに腰を沈めた。既の所で耐えきった。深く息を吸い、吐く。目元を拭って体制を立て直し、向き直る。
「いかせて、やるからッ
……
大人しくしてろ」
「お、おぅ」
敏感になった中を宥めながらゆっくりと引き抜き、下ろす。自分がキツいのなら相手も同じ筈だ。腕に力を込めて抽送を繰り返せば、中の物がさらに質量を増した。多分これなら、どうにかいける。そう思った時。
「は、ぁ゛ッ?!」
バランスを崩し片腕が少し崩れた。角度が変わり前立腺を容赦なく抉る。その反動で締め付けてしまえばもうダメだった。
「あっあ、クソッ、ひぁ、あ゛ッ
……
ーーッ!!」
限界まで膨れ上がった快楽が弾けて、あふれる。本当は俺だって、この濁流に身を任せたかったのに、今は許されない。背を丸め法悦に耐えながら下の男に目をやれば、こちらも眉間に皺を寄せて、耐えていた。荒い呼吸と上気した頬が、男の限界も近い事を訴えている。
なんでお前が耐えてるんだ。クソ、はやく出しやがれ。
「中、いっただろ」
辛いなら終わるけど、などとさっきとは打って変わって殊勝な態度。それはそれで腹が立つ。そもそも誰のせいでこうなったんだ。ギリギリまで高められてなければ、こんな事にはなってなかったのに。
「なめ、るな」
こっちはこっちで散々お前のめちゃくちゃさに慣らされてきたんだ。主導権さえ握れれば、この程度。
ビクン、ビクンと、定期的に痙攣する肉壁は、はまり込んだ雄を抜くなとしゃぶりついている。それを引き剥がすように腰を浮かせ、沈め、繰り返した。限界の先で動くのはキツい。そう言えば、と、ふと思い出す。この男はよくそれを楽しんでいた。本当にバケモンか。
「あ、それ、気持ちいい」
「ん、ンッ、ぅあっ、あッ
……
は
…
ぅッ!!」
意識して根本を締め上げ、そのまま引きあげる。雁首に前立腺を刮がれ、とうとう涙が溢れた。同時に漸く腹の中に生暖かい感触。終わった。やっと。
どうにか耐え切った安堵もあり、細切れの嬌声が細く溢れ出た。覚えてろよ、お前が回復したらめちゃくちゃにしてやる。
「はー、はー
…
」
中に出し切った男根が質量を落としたのを確認し、ズルリと引き抜いた。精液がシーツに落ちぬよう尻に力を入れながら、そこらへんに脱ぎ捨ててあった相手の下着を拾って拭いた。
自分の下着を汚された事に気づいた男が何やら慌てていたがそんなものは無視する。こんなに元気なら下着くらい自分で洗えるだろう。干しているのに気付かれたなら、夢精でもした事にしておけばいい。
精液で汚れた下着を俺の手から奪い取り起き上がった男は、代わりにタオルを取って戻ってきた。潤滑剤を準備する位ならタオルの方も枕元に置いておけばいいだろうに。
拭ききれなかった体液を雑に拭って、二人でベッドに倒れ込んだ。仮眠室に置くには充分すぎる柔らかさに驚くも、多分この男のために用意し直されたのだろう。
「生きててよかったァ」
しばらく何をするでもなく天井を見上げていると、隣からなんとも気の抜けた声が。
「今か?」
「今だろ」
ここにある穏やかな空気を堪能するかのように、深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。その表情を横目に見れば、微睡みながら目を細めていた。全裸でそのまま寝るつもりなのか。どこまでも自由な奴だ。
服くらい着てから寝ろと、シャツを拾って顔に向かって投げつけたが、すぐに行動する気はさらさら無いらしい。頭に布を被せたままあーだかうーだか呻いている。
「いいの。俺は寝て食ってヤりまくるために世界救ったんだから」
「
……
なんだそりゃ」
シャツの下から籠った声が聞こえて来た。自分で退ければいいのに、腕も動かしたくないらしい。何がそんなにヤワじゃない、だ。やっぱり無理してたんじゃないか。
「平和じゃないとエロい事できねぇだろ」
全ての行動原理がそれなのか。本当にどうしようもない。歴史が語る救世の英雄の中に、この男ほど俗物的な理由で世界を救った奴は居るのだろうか。まぁ、英雄譚においては大抵の場合不名誉な事情は伏せられるので、この男のめちゃくちゃな理由も書き記される事はないのだろう。今度グ・ラハにでも聞いてみようか。きっと嬉々として語ってくれるに違いない。
「まぁ、
……
それもそうだな」
案外他の英雄達もそうだったのかもしれない。食べて寝て、笑って、泣いて、そうやって人の営みを続けていく為、日常を失わないために。其々が命を賭して戦ったのだろう。そういう意味では、自分もあまり変わらないのかもしれない。
「
……
生きててよかったな」
まだまだやるべき事も、やりたい事も、山程ある。そして、いずれ必ず会いたい人も。
だからこそ今だけは、この平穏に身を任せてもいいだろう。
午後の用事まではまだ時間がある。もう少し位ならこいつに付き合ってやってもいい。
隣で寝息を立て始めた男の顔からシャツを剥ぎ取り足元に追いやった。
穏やかに上下する胸を確認して、シーツの海に身を任せた。
END
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