匣舟
2025-07-27 22:42:26
4265文字
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おいしい瞬間

ワードパレットリクエストにて頂きました団乱です。
現パロで、部活終わりにアイスを食べて帰るふたりの話を書きました。
リクエストくださってありがとうございました🫶

おいしい瞬間


 今日は陸上部の部活動がオフだったので、乱太郎は久しぶりに図書室で勉強しようと思い立ち、放課後図書室で再来週に控えたテストを見据えて予習をしていた。
 図書室にいる人はまばらで今日の図書当番である大川学園高等部に所属している不破雷蔵と、乱太郎と同じく勉強をしている生徒が数人いるだけでペラペラと本を捲る音と、シャーペンを控えめに走らせる音が聞こえる。
 乱太郎は図書室のドアを控えめに開くと、自分に気づいた雷蔵に軽く会釈をしてから椅子に座って勉強を始めた。
 図書館で静かにしないといけない。というのは校則にも学園内の決まり事にものっていないが、やはり本を読む人が多い場所なので自然と皆の口数も少なくなる。
 乱太郎も雷蔵に会釈をしてから、すぐに勉強に集中し始めたので図書室はまた元の静かな空間に戻った。それから乱太郎は時間を気にせず、自分が苦手な教科から順番に虱潰しに勉強をしていた。苦手な教科にまだ戻って教科書とノートを見比べながらにらみあいっこをしているとら 、乱太郎の前に影ができていたので、びっくりして顔を上げると図書委員である雷蔵が目の前に立っていた。
「乱太郎、そろそろ閉館時間だから。」
 もうすぐ閉めるよー?と雷蔵が微笑んでいる。どうやら勉強に集中していたせいか、勉強を始めてからもう二時間ほど経過していたらしい。
「あ、もうそんな時間なんですか!?すぐ出ますね!」
「そんなに慌てなくて大丈夫だよ。」
 慌てて教科書やノート、そして筆箱を急いでカバンにしまう乱太郎に雷蔵は笑って落ち着いてでいいから。今日は結構集中してたね。と乱太郎の頭を撫でてカウンターへと戻って閉館作業に戻って行った。
 慌てないでね。と雷蔵に言われたが教科書たちを閉まっている間にカバンにしまっていたスマホを起動させると、いつもの場所で待ってるわ!と彼から通知が来ていた。
 乱太郎は無意識にそれを見て微笑みながら、急いでカバンに荷物をまとめて雷蔵に再度会釈をしながら図書室を出た。
 外はもうすっかり陽が落ちており、残っている生徒はもうほとんどいなかった。乱太郎もいつも待ち合わせしている昇降口に向かって行くと、彼の姿を探す前にすぐに見つかった。彼は校門にもたれかかりながらスマホをいじっていたからだ。
「団蔵!待たせてごめんね!」
「お疲れ、乱太郎!だいじょーぶ!そんなに待ってないから!」
 乱太郎の姿を見つけると団蔵はスマホから顔を上げてにかっと笑った。その笑顔につられて、乱太郎も自然と笑顔になる。
 乱太郎が部活動がないのに図書室に留まって勉強をしていたのはなぜなのかというと、乱太郎の恋人である団蔵と一緒に帰るためだった。
 普段は二人とも部活があるため一緒に帰ることが多いが、最近は乱太郎がいつも一緒にいるきり丸のバイトのヘルプに行ったり、団蔵も大会前ということもあって帰宅時間が被らなくて一緒に帰ることが無かったのだ。
 本来ならば部活動や、委員会活動が無ければそのままきり丸としんベヱと帰る乱太郎だったが、どうしても団蔵と一緒に帰る時間が欲しくて今日は図書室へと行ったのだった。
「さ、帰ろっ!」
「うん!」
 団蔵から差し伸べられた手を微笑みながらしっかりと握った乱太郎。そしてそのまま二人は手を繋ぎ、いつもの帰り道を歩いて行った。二人の家がある方向へ向かう最中に、二人で今日あった出来事や他愛のない話をして笑いあっていると、団蔵は突然、乱太郎の方を見てあ!と声を上げる。
「なに、何か忘れたの?」
「あ、ごめん。忘れてないよ。」
「なあんだ。」
 もう、大きな声出されたらびっくりしちゃうじゃない。と横目で乱太郎に見られている団蔵はへへ。と頬を掻きながら乱太郎の方を見てこう言った。
「ね、乱太郎。たまにはちょっと遠回りして帰らない?」
別にいいけど、何で?」
「だって最近ずっと一緒に俺ら帰れてなかったじゃん?久々だからさ〜。もっと一緒にお前と居たいもん。」
 そう言って嬉しそうに笑っている団蔵を見て、乱太郎は内心ドキッとした。普段はあまり意識していないけれどこうやって改めて言われるとなんだか照れくさい気持ちになってしまう。乱太郎の手を引っ張って歩き出した団蔵に少し遅れて着いて行くように、乱太郎も小走りになる。
「ねぇ、どこに行くの!?」
「いいところ!」
 結局行き先も分からず終いのまま団蔵について行っているうちに住宅街を抜けて通りに出た。そしてそのまま歩いて行くと通りにあるオープン!という貼り紙が貼られているコンビニにたどり着いた。
「ここ!新しくできてさ、アイスいっぱい売ってるって虎若が言ってたから行ってみたかったんだよー!」
 行こーぜ!と言ってワクワクしながら店に入った団蔵を見て乱太郎は納得したような表情を浮かべる。 そういえばここ、前にしんベヱがアイスの種類が多くてね僕行きつけになっちゃいそう!って言ってたところだな〜。と思いながらショーケースを見てみると、確かにコンビニにしては珍しくショーケースがあり季節のフルーツをふんだんに使ったパフェやティラミスなどが並んでいた。
「まじでめっちゃあるな。」
「ね、すごいね。」
 団蔵は迷わずアイス売り場に向かい物色し始めているので乱太郎も後に続くことにする。するとそこには数種類のカップアイスがあった。どれにしようかと悩んでいると、いつの間にか団蔵が乱太郎の隣に来ており手にはチョコチップ入りソフトクリームを持っていた。どうやらそれを買うつもりらしい。
「これに決めたー!」
「早いなあ〜。」
「だって早く食べたいじゃん?乱太郎は何にするか決まった?」
「私はまだかなぁ。団蔵が手に持ってるチョコチップのソフトクリームも美味しそうだし、こっちのバニラアイスも美味しそううーん。」
 悩みに悩んで中々決まらない乱太郎にしびれを切らしたのか団蔵が声を掛けてきた。でもまだ選べずにいる乱太郎を見て苦笑いしながら団蔵はある提案をする。
「ならさ、俺のやつちょっとあげるよ?」
うん?」
「だって俺が持ってるアイスと迷ってるんだろ?」
 それなら俺があげるから、乱太郎も俺に一口ちょうだいよ。と笑いながら言う団蔵に対して乱太郎はいいの?と言うと、いいよ。それぐらい当然。と返ってきたので素直に受け入れることにした。レジに移動しひとりずつアイスのお金を支払って店内を出る。そして近くにあった公園のベンチに二人並んで座った。
「はい、乱太郎、あーん。」
「じゃあ私のも食べていいよ。はい、団蔵。」
 お互いに買ったアイスを交換して二人同時に口に入れた。甘いクリームの中にザクザクとした食感がアクセントになっていてとても美味しい。やっぱり夏に食べるアイスが一番美味しいなあ。と思いつつ食べ進める乱太郎。
 隣では既にアイスを半分以上食べ終えてしまっている団蔵を見て相変わらず早食いだなぁ。と思っていると視線を感じたようでこちらを見られてしまう。
 そしてニヤリと口角を上げたかと思うと何故か顔を近づけられた。え?と驚いている間に唇同士が触れるだけのキスをされる。
「んっ。」
 ゆっくりと離れていった団蔵は満足気な表情をしていた。団蔵からの不意打ちのキスに目が離せない。そのまま何も言わずただ、ぽかんとしている乱太郎の耳元に、団蔵が囁くように話しかけてくる。
「なんか、間接キスみたいだなって思ったらしたくなっちゃった。」
 その一言で我に返った乱太郎はそのまましれっと抱き締めていた団蔵を引き剥がして、背中をバシッと叩いた。
……ばか、誰かいたらどうするの!」
「そんな誰もいないって。照れてる乱太郎もかわい〜っ。」
 乱太郎の打撃ももろともせず、そう言いながら笑う団蔵を見て更に恥ずかしくなり俯いてしまう乱太郎。でもそんな様子を見てもなお団蔵は楽しげに笑っていて、意地悪な彼も好きだからと結局、そんな彼を許してしまう自分の盲目さに余計に顔が熱くなっていく気がした。
 しかし、制服に落ちるアイスの容器から垂れる水滴と、溶けていくアイスを見た乱太郎は、すぐに正気に戻ると急いで残っていたアイスを平らげていく。そんな乱太郎を見て団蔵は再び微笑んでいたのだった。
「やっぱ夏と言ったらアイスだよな〜。」
「だね〜。」
「美味しかったよな、あのアイス。」
「ね!また行こうよ!部活終わりに!」
「おう、また行こーぜ!」
 あの後、お互いに交換していたアイスを食べ終わり乱太郎はゴミ箱に空になったアイスの容器を捨てた。そして二人は再び手を繋ぐと自宅のある方向へと歩き出す。
 もう半分夜に差し掛かっている時間帯だからだろうか人が少ないこの道は心地よい風が吹いておりとても過ごしやすい気候だった。乱太郎が横目に団蔵を見ると、彼は鼻歌を歌いながら楽しそうに歩いている。その様子を微笑みながらぼんやり眺めていると、団蔵は突然思い出したかのように口を開いた。
「あ、そうだ。明日、部活休みだからさっ、乱太郎さえよければ明日も一緒に帰れるといいんだけど。」
 どう?陸上部はあるんだっけ?とこちらを見る団蔵の顔はまるで飼い主のご機嫌を伺う犬のようであった。そんな可愛らしい仕草に思わずくすっと笑ってしまう。
「明日はミーティングで、明後日はオフだよ。今週は一緒に帰れるよ。」
 乱太郎のその言葉を聞いた途端に目を輝かせて喜ぶ団蔵を見て乱太郎も自然と笑顔になる。
「よかった〜。」
 安堵の息を吐いた後、団蔵は安心したのか大きく伸びをした後、再び乱太郎の手を握り締めてきた。それに応えるように乱太郎もギュッと力を込めて、恋人繋ぎをしながら帰り道を歩いていった。
「次はなんのアイス食べようかな〜。」
明日も行くつもり!?」
「当然だろー?夏と言ったらアイス!だろ?」
「まったく、本当に。」
 呆れたような口調とは裏腹に乱太郎の表情はしょうがないなあ。と言いたげな顔を隠しきれていないほど穏やかだ。そして、そんな乱太郎を見て団蔵は幸せそうに微笑んでいる。明日の放課後の約束を取り付けられたことで、より一層ふたりの中で幸せな気持ちが増していく。そんなふたりはいろんな他愛のない話をしながら仲睦まじい様子のまま、手を繋いで自宅への帰り道を進んでいくのだった。

ワード:目が離せない・慌てて・溶けていく