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零ミリ
2025-07-26 21:22:02
1429文字
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私だけの色
夢エデのクレインとフィグの話 エンディング1の本編直後くらいです
「この年になって写生って
……
」
「あはは、でもこういうのも勉強の気分転換になっていいんじゃない?」
学校で出された「身近な風景を写生すること」という課題にリビングのテーブルに画用紙を広げクレインはぶつぶつと文句を言っていた。
「小学校の時は私は海でクレインはチョコを描いていたけど。また同じ物にする?」
「
………………
いや、あそこにしようと思う」
「あそこ?」
「
……
エデンの樹」
正確には樹のあった場所だ。エデンという世界がなくなったことでクレインたちのいる世界にあった樹も消滅した。しかし、樹がなくなっても、いや、なくなったからこそ、その場所はクレインとフィグにとって大切な場所であった。くれの答えにフィグは微笑む。
「うん、いいと思う。私もついていっていい?」
「ああ」
そうして二人は画用紙と久しぶりに引っ張り出してきた画材を持ってエデンの樹があった場所へと向かった。
森の入り口に辿り着くと、木の葉は生き生きとした緑で生い茂り、地面には花が鮮やかに咲いている。クレインとフィグはかつてそこにあった巨木の影を見て喪失感を思うが、二人以外にはただの少し開けた空間にしか見えないだろう。
辺りをよく見渡せるところにクレインが古いタオルを敷くと二人は座ってスケッチを始めた。スケッチの間、フィグはなんてことのない日常の話をクレインに話しかける。クレインの返答は言葉多くはないが、二人はそれで言葉が足りていないと思うことはない。その会話が二人が今まで積み重ねてきた日常だからだ。
「下書き、終わり」
「えっ、はやっ!」
「フィグは喋りすぎ。あと、下書きで書き込みすぎ。細かいところは着色の時に描き分ければいいから」
「うーん、そっかあ。小さい時はささっと描けたのになあ」
「物が良く見えるようになって取捨選択が難しくなったんじゃないか。美術のことはよく分からないけど」
「とにかく、下書き仕上げないと!」
そう言うとフィグは鉛筆を走らせる。隣で鉛筆を走らせるフィグを見ながらクレインは筆を取った。
「できた!」
「おつかれ」
日が傾いて橙になる頃、フィグは絵を描き上げ手を伸ばした。クレインは先に描きあげていたがフィグが描きあげるまで隣で待っていた。
「同じ景色を見て描いたのにけっこう違うね」
「そうだな。
……
空って今日こんな綺麗な色をしていたか?」
「してた! クレインの瞳と同じ色をしてたよ!」
フィグがそう言うとクレインは一瞬ぽかんとした後、小さく声をたてて笑い出した。
「え? 私、何か変なこと言った?」
「いや、イーリスにも同じことを言われたな、と」
クレインがそう答えるとフィグはむう、と口をへの字にする。今度はクレインが尋ねる番だった。
「フィグ?」
「私だけがクレインの瞳がとても綺麗だって知っていると思ってたのに
……
! イーリスがクレインと仲良くなったのは良いことだけど、複雑」
フィグの素直な嫉妬にクレインは顔を赤くしてそっぽを向きながら答えた。
「人の目を見ない理由はなくなったけど、癖になってるからすぐには変わんないよ。だから多分、今知ってるのはフィグだけだと思う」
「でもクレインには色んな人とちゃんと話してほしいよ」
「どっち
……
」
「どっちも!」
クレインがフィグに視線を戻すと視線の合ったフィグはえへへ、と笑う。クレインもフィグの笑顔に優しく微笑み返す。寄り添う二人の影が夕陽に長く伸びていた。
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