匣舟
2025-07-26 18:24:24
4065文字
Public RKRN
 

おいしい旬感

ワードパレットリクエストで頂きました利乱です。お待たせ致しました…!長期忍務から帰ってきた利とちょっと意地悪しちゃう乱の話です。
リクエストくださった方ありがとうございました!!!🫶

おいしい旬感しゅんかん


 利吉が乱太郎と恋仲になったのは、まだ乱太郎が忍術学園に居たときだった。フリーの忍者として働く利吉は忍術学園で教師として働く父である伝蔵に家へと帰るように通達したり、はたまた仕事で訪れた時に必ずといっていいほど乱太郎と会っていた。
「ほんとにもう、お前たちは〜っ!」
「えへへ、ごめんなさぁい〜。」
 いつも利吉の兄のような存在である半助と父である伝蔵が受け持つは組の問題児で、いつも何かトラブルがあったときはいつだって乱太郎がその中心にいた。
 父である伝蔵が家に帰れない理由の張本人である乱太郎のことを半助や伝蔵の口から彼がどんなトラブルに巻き込まれたのかを聞くたび、そして乱太郎と関わっていくうちに何かひとつ得意なことや苦手なことなど些細なことを知っていく度に、利吉はいつの間にか乱太郎から目が離せなくなっていたのだ。
 そして、それが恋だと知ることになるのにも時間はかからなかった。乱太郎に自分が恋をしていると知った時は、自分の気持ちを悟られないようにと必死だった。この恋は、この想いは墓場まで持っていこう。とそんな気持ちだった。
 何故ならば、まだ乱太郎は無限大の可能性を秘めた忍者のたまごであり、大人である自分がそんな彼をを縛り付けるような真似はしたくなかったからだ。
 しかし、そんな利吉の想いとは裏腹に利吉の感情は正直であり、学園に寄って乱太郎が誰かと話して笑っていた時は腸が煮えくり返るようなそんな気分になったし、逆に自分の姿を見て利吉さん!と笑顔でこっちに駆けてくる乱太郎を見た時は思わずギュッと抱きしめたくなるようなそんな感情にさいなまれるほどだった。
 日に日に乱太郎に対しての想いが募っていくこの事態に頭を抱えた利吉は、一時期忍術学園に行くのを辞めていた。忍務をしている時もふと気づいたら乱太郎のことを考えてしまっていて、忍務に支障が出ると判断したからだ。
 結局、それも長くは続かず、ひと月持ったぐらいで利吉は勢いのまま乱太郎へ告白したのだが。
「利吉さん。忍務お疲れ様でした。」
うん、ありがとう……。」
 近くで夏の風物詩である風鈴が風に揺られてチリン、チリンと音を立てている。長期忍務からやっとの思いで家に帰ってきた利吉は、乱太郎と恋仲になった時のことをふと思い出しながら長い間忍務のため会えなかった乱太郎をずっと抱き締めていた。
 乱太郎に告白したのも夏だったから毎年夏が来る度にその時のことを思い出すのだ。乱太郎のことをひと月も避けていたのに、彼の姿を見ると直ぐに掻っ攫い、勢いそのままに告白してしまったことは今でも思い出す。
乱太郎、好きだ。どうか、俺のものになってくれないか。」
 ひと月ぶりにあった奴に、いきなりかっ攫われたと思えば抱き締められ、裏山の木の上で告白された乱太郎の心情に同情するしかない。今思えば、最悪の告白だと思う。
 もっと場所も告白する言葉も色々あったはずだ。と思い返す度に思う。出来るならばやり直したいほどだ。
 当の本人である乱太郎はあまりにも突然のことで何を言われたのか理解出来ていなかったらしく、もう一度同じ言葉を紡ぐと、顔を林檎のように真っ赤にしてあわあわと言葉を発さずに口だけを動かしていたのを覚えている。
 最終的には私も利吉さんのことをお慕いしておりました。と照れながら告白を了承してくれた乱太郎を力の限り抱きしめたのも良い思い出である。
「利吉さん。暑くないですか?」
うん?あつい。」
「じゃあ、そろそろ離して貰えると……。」
「嫌だ。」
 駄々を捏ねる子どものようそう言いながら抱き締める力を強める利吉に乱太郎は困ったように眉を下げると、仕方ありませんね。と言って振り向きざまに利吉の頭を撫でた。
 利吉に抱き締められている乱太郎は、抱き締められながらも慣れた手つきで薬研で薬草を細かく挽いている。
 乱太郎は忍術学園を卒業後直ぐに利吉と一緒に暮らし始め、現在乱太郎は、は組経由(主にきり丸と庄左ヱ門)でくる忍務には忍者としての勘が鈍らないようにとちょくちょく参加してはいるものの、基本的には自宅で薬師として働き、家の前にあるちょっとした畑を耕して自分たちが食べる作物を作りながら生活するという平和ぶりだ。
 利吉は昔と変わらずフリーの忍者として働いており、今回のように長期的な忍務が入る場合は乱太郎と離れ離れになり、忍務を終えて乱太郎のもとに帰ってきたあとは決まって乱太郎を抱き締めることが恒例となっていた。今だってそうだ。
 利吉は乱太郎が薬師の仕事をしている最中でも構わずに薬草をすっている乱太郎を背後から抱き締め、肩に額をグリグリ押し付けたり髪の毛をスンスンと嗅いでいる。
「ち、ちょっと、汗臭いんでやめてくださいよぉ……!」
「乱太郎が足りなかったからこうでもしないと補給ができないんだよ。」
 そう言うと利吉は乱太郎の首筋をペロリと舐めた後チュウっと音を立てて吸い付いた。首筋を舐められた乱太郎はびくぅっ!と肩を揺らしてしていた作業を止めて利吉と向き合った。
「え、な、まさか、な、舐めました?」
「舐めた。しょっぱいな……。」
「汗を舐めたんだから当然でしょうが!?」
 しかもここに跡まで付けて!見えるところには付けないでって散々言ってますよね!?と慌てて言って乱太郎は利吉がつけたであろう赤い跡があるところを撫でる。
 もう!と声は怒っているが、顔は怒っているようで怒っていないのが面白い。利吉はもっと他のところにつけてもいいだろうかと思って、乱太郎の方へと手を伸ばそうとした瞬間、その手が払われる。
……ダメですよ、仕事が終わってからにしてください。」
 心の中を読んでいるのかと思うほど的確な指摘に利吉は小さく呻き声をあげる。利吉も乱太郎と共に暮らしてもう数年、こういう時には素直に従ったほうが乱太郎からの反応が良いということを理解している。そのため黙って頷いた。
 そんな利吉を見た乱太郎は振り向いて嬉しそうな表情をするとありがとうございます。と小さくお礼を言って利吉のほっぺたにチュッと軽いキスをしてそのまま薬研の方へと向き直った。
……乱太郎……。」
「はい?」
 利吉の声がワントーン低くなったことに気がついたらしい乱太郎が利吉の方へと振り向く。
それ、煽ってるだろ……?」
「ふふ、さてどうでしょう?」
 でも、ひとつ言えるのはまだ日が傾いていないからまだお預けですねぇ。と悪戯っぽく笑う乱太郎に利吉は何も言えないまま、ただ乱太郎を抱き締めるしか無かった。薬草をすり潰す音が部屋の中に響いていく。
 乱太郎が上機嫌にふんふふ〜んと鼻歌を歌っているのをしばらく聞いていると、薬草をすり潰し終わったのか、乱太郎が立ち上がり利吉の方へと向いて、手を広げた。まるで、利吉においで。と誘っているように。さっきは日が沈むまで待ってくれと言われて待ってみたものの、こんなことをされたら堪ったものじゃない。
 利吉は乱太郎の両手を引っ張って自分の胸の中に閉じ込めるとそのままギュウっと力強く抱き締めた。甘い石鹸の香りがフワリと鼻をかすめた。
「ん?もう我慢しなくていいのかい?」
「ええ。今日はもうこれでおしまいです。だって、利吉さんずっと後ろでそわそわしてるから。」
 だから、今日は作業やめます。どうせ今日は誰も来客しないでしょうから。と言って微笑む乱太郎を横抱きにして持ち上げるとそのまま布団へと連れていく。
 乱太郎は抵抗することなく、そのまま利吉に運ばれていく。利吉は乱太郎を布団へと降ろすとすぐさま覆い被さった。外からは風に揺られた風鈴がチリン、チリンと鳴る音が聞こえる。
わあ、利吉さんの目が怖ーい。」
……我慢したんだから当然だろう。」
 利吉の目は乱太郎を喰らおうとする獣のように爛々と光っている。その瞳に映る自分を見てゾクリとする感覚が走る乱太郎はゆっくりと利吉の首に腕を回して引き寄せるとお互いの息がかかる距離まで近づいたところで囁くように言った。
優しくしてくださいね?」
 それを聞いた利吉は返事の代わりに乱太郎の唇に噛み付いた。角度を変えて何度も唇を合わせているうちに自然と舌同士が絡まり合い深いものへと変わっていく。
 利吉は夢中で乱太郎の口内を堪能し終わると、ゆっくりと顔を離して乱太郎の姿を見る。トロンとした目をして荒く呼吸をするその姿はとても艶っぽく、利吉の理性を簡単に壊していった。利吉は乱太郎の頬に触れながら愛おしそうに呟いた。
「乱太郎かわいい……。」
恥ずかしいんでやめてください……。」
 利吉の溶けていくような顔を久しぶりに見て、顔を真っ赤にする乱太郎。それさえも可愛くてしょうがないのか、利吉は何度も口付けを落とす。
 それは段々と激しさを増していき、次第に水音が部屋に響き渡るようになった。互いを求め合うふたりの影が重なり、やがてひとつになる。利吉は乱太郎の耳元に口を寄せるとそっと囁いた。
……乱太郎、愛してる。」
 そう言うと再び乱太郎の唇を奪った。乱太郎はそれに答えるように利吉の首に腕を回して引き寄せると自分からも積極的に舌を絡ませ始めた。ふたりの唾液が混じり合い、ひとつになってゆく。どちらからともなく口を離すと銀色の糸が引いた。
「わたしもっ、利吉さんのこと愛してます。」
 激しいキスが終わると、乱太郎は幸せそうな笑顔を浮かべながら利吉に抱きついた。そんな彼を見て愛しさが込み上げてくるのを感じた利吉は優しく微笑みながら乱太郎を抱きしめ返し、そのまま押し倒した。そして会えなかった時間を埋めるように口付けを交わし合う。風が吹いて扉に付けられている風鈴が音を立てる中、ふたりはずっと愛し合う。ふたりの時間はまだまだこれからだから。

ワード:目が離せない・慌てて・溶けていく