ぽふむん
2025-07-26 22:30:00
1133文字
Public ワンドロ
 

クリオネ

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

「捕食」「運命の人」
転生if
お互い前世の記憶は全くありませんが、ほんのり遺伝子レベルの記憶で共鳴しています。


水槽の中をゆらゆらと漂うその生物に目と心を奪われた。
あれ以来しのぶは毎週水族館の水槽の前に通いつめた。
そして、ただ一つの水槽を日がな一日閉館まで見つめつづけた。


「今日も来てる」
しのぶの耳に、誰かの忍び笑いが聞こえるがそんなことはどうでもよかった。


「クリオネがそんなに気に入ったのかい?」
一人の青年がしのぶに声をかけてきた。
「毎週来ているよね」
ナンパだろうか。
ならば、目を奪われた理由を言えばドン引いて去っていくだろう。
そう判断したしのぶは、素直にその声の主を一顧だにせず応えた

「ええ、クリオネの食事風景がまた見られるかと思って」
その答えに、青年は喉で笑った。

「へぇー。変わった子だねぇ。大体の子は怖いというのに」
「あなたは見たことがあるんですか?」
「ああ、この優美な姿のおかげで流氷の天使と言われるが、捕食方法を見たものは流氷の悪魔という」

なるほど、水槽を漂う姿は天使のようだ。
でも、あの日見た姿は違う。

「クリオネは幼体の時はプランクトンしか食べないという。
でも一転して、成体になると肉食なんだ。
ミジンウキマイマイと言う貝しか食べなくなる。しかも生きているものでなくてはダメだ」
青年は答えた。

「偏食家なんだろうね。普段は餌がなくても一年くらい平気だという。でも、捕食対象を見つけると、六本の触手を伸ばし捕らえ決して離さない」
そして、三十分くらいかけ養分を吸い付くし食らう。
その姿は、さながら悪魔のようだった。

「あんなものをまた見たいのかい?変わった子だ」
そう言って青年は、歳不相応に無邪気にケラケラ笑った。

仕方ないだろう。
自分でもよく分からないが、その光景に既視感があるのだ。
しのぶはその既視感の答え合わせをしたいだけ。

この青年だって十分変わっていると思う。
その捕食方法を見て「おぞましいが美しいと思った」と答えるしのぶに少しもドン引く素振りを見せない。

「変わり者であることは否定しませんが、あなたにはなんとなく言われたくありませんね」
そう言って、しのぶは初めて青年の方を見た。
そして息を飲んだ。

何故だろう
初めて会う男だと言うのに、目を奪われた 。

何故だろう。
足がすくむ。

天使のような青年だった
美しい男だ。
面食いでは無いはずなのに、目がそらせない。

ハーフなのだろうか。
虹色の瞳にアッシュグレーの髪の長身の男がそこに立っていた。
何故だろう。
初対面のはずなのに会った事がある気がする。

コンジョウモココロヲミタシテオクレ
メイドデクレタモノヲモットオクレ

どこかから声がした気がした。
天窓から射す陽光が水槽を反射し男を照らしていた。。