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aoisoujou02
2025-07-25 19:25:11
1799文字
Public
ゼンゼロ
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ほんの少し近づく夜
アキ狛。適当観で同じ部屋で寝ましたよね!?!?!?!?
「あいつら修学旅行みたいとか言ってはしゃいでたけどちゃんと寝るんだろうな?」
怪談話で盛り上がる女性陣を背に狛野くんがぼやく。家具や機材を動かして部屋を整えてからも彼女たちの話題は尽きないようで、きゃあきゃあとお喋りが続いている。
ホロウ突入を翌朝に控え、単独行動はよくないだろうと全員で適当観に泊まることにした夜。通信機材のためにそれなりの広さがある僕の部屋を女性陣に譲り、はじき出された僕と狛野くんは小さい客間で一夜を明かすこととなった。
「ったく、明日は何が何でも爆発を阻止しなきゃならねえってのに」
「はは、女の子はお喋りだからね」
柚葉がアリスを揶揄うのを楽しそうにしていたからアリスの睡眠時間が心配だ。年長者としてリンがきちんとしてくれるといいのだけれど。
とはいえ彼女たちの怪談話が佳境に入る前に客間に引き上げられて助かったというのが正直なところだ。ホラーが苦手な僕としては明日に響きそうな話は極力耳にしたくない。狛野くんが同室で助かった、彼なら何が出てもぶっ飛ばしてくれそうだものな。
「修学旅行といえば怪談より恋バナかな、狛野くんの恋バナはあるかい?」
「はっ
……
!? こ、恋バナ!?」
藩さんが運んでくれた布団を広げて寝支度を整えながら軽い気持ちで話を振ってみると予想よりも大きなリアクションが返ってきた。おや、これはなかなかいいネタを振れたんじゃないだろうか。
「彼女とかはいないのかい?」
「い、いねえっスよ、そんなの!」
パイパーがいつも『若者は可愛いなあ』と口にする気持ちが今ならわかる。たかが恋人の有無だけでしどろもどろになる若者をいじめるのはよろしくないと思いながらも、目の前で頬を赤くして必死になっている狛野くんを見ると揶揄いたい気持ちが抑えきれない。
「あれ、柚葉は違ったのか」
「あいつはただの幼馴染みで、昔から一緒にいすぎて今さらそんな目で見れねぇっつうか。とにかく全然そういうんじゃねぇっスよ」
柚葉との関係は聞かれ慣れているのだろう、今まで何度も同じことを口にしてきたと言わんばかりの表情だ。あんまり仲がいいから聞いてみただけなのだけれど、なるほど、通りで思春期の男女というよりは奔放な姉としっかり者の弟のような気安さを感じるわけだ。
「そうか、狛野くんはフリーなのか。こんなにいい子なのにもったいないな」
布団を歪みなく敷きシーツをピシッと綺麗に張っている様子からも細やかさが伺える。恥ずかしながら狛野くんほどの美しさはない布団の上に座り込みながら眺めていると、時折わずかに震える耳やふわふわとなびく尻尾に愛らしさを感じずにはいられない。
「ジブン、見た目がこんななんで。知らねぇヤツからは怖がられて避けられるし、バイトも忙しいんで誰かと付き合うとかはあんま考えたことねぇっス」
耳をぺたりと寝かせて俯いてしまった狛野くんの顎をくいと指で持ち上げる。耳も尻尾も狛野くんのたくましい体についているからこそのギャップがたまらないというのに、内面を知れば知るほど可愛らしい彼を怖いだなんて。
「なんだ、みんな見る目がないな。強くて、かっこよくて、優しくて、そのうえこんなに可愛いのに。狛野くんほどいい子は他にいないよ」
「へぁ
……
!? そ、そんなの、アキラくんの方が大人で綺麗で頭もよくて
……
っ」
ほら、そのまんまるに見開いた赤い瞳だってまるで宝石のよう。体や左目に走る大きな傷はきっと誰かを守った証だ。右頬にも残る小さな傷を親指でなぞる。交わる視線に優しく微笑めば狛野くんの肩がわずかに揺れた。
「
……
っ」
触れた頬が緊張を孕み、うろうろと頼りなげに彷徨った赤い宝石がぎゅっと瞼の下に隠される。頬に触れていた親指で震える唇をそっと撫でた。
「狛野くん、僕を悪い大人にするつもりかい?」
引き結ばれた唇のすぐそばでそう囁いて、そこには触れずに額に柔らかく唇を落とす。唇を避けられたと気付いた彼は恥じ入るように額の前に手をかざしたが、その下の潤む瞳までは隠せていない。
「ジブンが大人だったら
……
今の、ちゃんとしてくれたんスか」
「明日ホロウからみんな無事で出られたら、ね。真斗くん」
「っ、学校の女子なんかよりアキラくんのほうがよっぽどドキドキするっス
……
」
小さく零れたその呟きは、いつか僕を悪い大人にしてしまいそうだった。
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