2025-07-25 11:40:52
1611文字
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浮かぶ月に星の瞬き

ブロマンスっぽいジャミカリ。7章後想定です

 まるで月のようだ、と思うことがある。
 静かで寂しい夜に閉じ込められ、そこでしか輝けなくて、それも自分では輝けない。太陽の光に照らされているだけ。
 そんな詩的な、小っ恥ずかしい妄想をしてしまったのは、カリムが太陽のようだと褒めそやされるのを聞いたときだった。
 カリムが太陽なら、俺は月だ。
 決して主役にはなれない、影の存在。
 ああ、イライラする。
 俺だって、輝けるのに。俺に譲られていることなんて気づかずにへらへらと笑う太陽よりもっと鮮烈に。力強く。
 そんな不満が積もり積もって、ウィンターホリデーでドッカーンしてからはや数ヶ月。

 サマーホリデーに帰郷した俺たちは、アジーム家主催のパーティーに出席していた。煌びやかに飾り付けられ、贅を尽くした料理が並ぶ会場をカリムとともに練り歩く。挨拶回りもひと段落した頃、若い男が近づいてきた。
「久しぶりだね、カリムくん」
「おう! えーっと」
「××様だ」
 そっと耳打ちしてやると、カリムは「久しぶりだな、××!」と彼の差し出した手を握った。
 声をかけてきたのはカリムの遠縁で、五歳年上の男だ。たしか、ロイヤルソードアカデミーの卒業生。
 二人が歓談する間、俺はカリムの少し後ろで控える。
「相変わらず、きみは太陽のようだね」
 歯の浮くようなセリフだが、あのRSAの卒業生なのだからさもありなん。口から砂を吐きたい気持ちに襲われながら、よそ行きの微笑を浮かべ姿勢を正す。ルーク先輩も詩人めいた言い回しを多用していたが、この男の場合は甘ったるい笑顔が癇に障る。早くどっか行け。
 カリムはいつも通りの笑顔だ。
「そうか? ありがとな!」
「ジャミルくんは、月といったところかな。君たちを見ていると太陽と月のようにぴったりな二人だと感じるよ」
 彼にとっては何の裏もない、心からの賞賛なのだろう。それがひどく不快に感じる。お前に俺たちの何がわかる?
「ジャミルが月? そうだな。たしかに月みたいだ!」
 ああ、そうかよ。お前からしても俺は月なんだな。心が、喉がカラカラに渇いてゆく。
「だって、いつだってオレを見守っててくれるから」
 ……は?
 表情を取り繕うのも忘れて目を丸くする俺の隣で、カリムは笑う。ガーネットレッドの瞳を眩しそうに細めて、とろけるような笑顔で。
「暗い夜も、オレをずっと照らしてくれる。それに月って、見えないだけで昼間もいるんだろ? だからジャミルは、オレにとっての月なんだ。太陽でもあるけどな!」
「そうか、素敵だね」と微笑んだ男は、挨拶をして去っていった。ちょうど俺たちの周囲に人がいなくなり、二人きりになる。
 だから、半眼でカリムの脇腹をつついてやった。
「恥ずかしいやつ」
「ええっ、オレなんかまずい事言ったかぁ?」
「お前がそんなロマンチストだとは知らなかったな」
「俺だってロマンチックなこと考えるときもあるぜ?」
「へー」
「あっ、信じてないだろ」
「ロマンチストには程遠い言葉しかその口からは出てこないからな」
「そうかぁ? よし、これからはもっとロマンチックな言葉を使ってみるぜ!」
「やめろ、慣れない言葉を使うとボロが出る」
「あっ、言ったなー? うんと練習してやる」
「せいぜい頑張れ」
 ぽんぽんと言葉を交わしながら移動し、バルコニーに出る。雲ひとつない快晴で、青い空には太陽だけが輝いている。見えないだけで、月もこの空のどこかにある。
 カリムがバルコニーの手すりにもたれながら口を開く。燃えるようなガーネットレッドの瞳が俺をじっと見つめ、
「オレ、さっきそんなに変なこと言ったか?」
「そうだな」
 誰が月だ。俺は太陽を超える男だ。そう、思ってはいるけれど。
……でもまあ、月も悪くないなと思ったよ」
 月は孤独なだけだと思っていたけど……どこにいてもその傍にはうざったく瞬く星がいるのだから。