昼下がり、ようやくひと息つける時間が巡ってきた。
私は、職場である書店に併設されたカフェ「Noir et Lune(ノワール・エ・リュヌ)」へと足を運んだ。フランス語で「黒と月」という意味らしい。しっとりと落ち着いた名前に相応しい店内は、木の棚に囲まれてどの席からも本の背表紙が見える静かな空間だ。天井にはシャンデリア風の照明がゆるく光を落とし、低く流れる音楽とコーヒーの香りが、どこか遠い午後を思わせた。
しかし、今はちょうどカフェタイムの真っ只中。席はすべて埋まっていて、カウンターにも待っている客がちらほら。他のカフェに移動するには時間が足りないし、立ったまま休むのも気が引ける。せめてテイクアウトにして、どこか空いている場所で食事を摂ろうか――。小さくため息をつき、思案しているそのときだった。