Rin
2025-07-25 01:07:20
3843文字
Public 小説
 
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偸盗なんて呼ばせない 第一章

弊世界のパパラッチタウニー、シミズ シンゴとの夢小説です。

夢子夢子夢子夢子夢子夢子夢子夢子夢子夢子夢子夢子夢子「だからぁ!マスター聞いてる!?」
「はいはい、聞いてるよ
その日、私はいつも以上に荒れていた。
パワハラ上司に無駄な残業を強いられたせいだ。
今での溜まった鬱憤もあり、行きつけのバーでほぼ酔いつぶれ、店のマスター相手にくだをまいていた。
「お姉さん、すごい飲んでるね」
そんな面倒くさそうな酔っ払いの私に声をかけてきた男がいた。
特別すごく整った顔というわけではないが、人懐っこい笑顔は所謂イケメンという分類に入る顔立ちだった。
んー?アンタ誰?」
私は知らない男に声をかけられたことで少し警戒をした。
「飲み過ぎじゃない?マスターにすげぇ絡んでたし」
ん、それはごめんなさい」
「めっちゃ素直!じゃあそんな素直な君には俺から一杯ご馳走してあげよう!」
少し芝居くさげにそう言うと、男は一杯のグラスを私の前に差し出した。
少しだけ不安になったが、行きつけの店だし、マスターとも顔見知りだし、変なものを飲まされる心配はないだろう思い、そのグラスを受け取った。
見るとロックグラスの中には大きな丸い氷と透明の液体が入っていた。
「日本酒?」
私は聞いたが男は答えずに私の顔を見つめて、私がこの液体を飲むのを待っていた。
今更日本酒を飲んだところで別に変わりないと思い、グラスの中身を一気に飲み干した。
「気分はどう?」
男が優しい声で聞いてきた。
これ水じゃん!!!」
「そりゃあ、飲み過ぎの女の子に水以外飲ませないでしょ?」
至極真っ当な答えだったが、それを実践する男が実は少ないことも知っている。
私は男の顔をじっと見つめてお礼を言った。
「ありがとう。最初怪しんじゃってごめんね。あなたいい人だったのね
その言葉を聞いた男は目を見開いて驚いたかと思うと急に笑い出した。
「いい人?俺が?あっはっはっは!!!
そう思うなら君こそお人よしすぎだって。
じゃ、俺は先に失礼するね。」
「え?もう行くの?」
「ああ、もう十分。じゃあねー、ごちそーさん」
軽い口調でそう言った後、男は席を立ち後ろ手にひらひらと手を振り店を出て行った。
私は呆然と男が去ったドアを見つめていた。
夢子ちゃん、外にタクシーきてるよ。さっきのお客さんが呼んでくれたらしい。歩けるか?」
マスターにそう言われ、私は会計を済ませ男が呼んでくれたというタクシーに乗り込み帰路に着いた。

翌日になっても、私は男のことを考えていた。
「ごちそーさんって、一体何のことだろ?私何か奢ったかな?」
男が去り際に言った一言がやたらと気になった。
バーでの会計は自分が注文したものより多い印象はなかったが、かなり酔っていたのでそれさえ怪しいのだ。
そんなことをボーッと考えていると突然電話が鳴った。
相手は会社の同僚だった。
「もしもし?休みなのになにー?納期確認ミスってたー?」
私は冗談混じりに話した。
「違うちがーう!どうせ夢子今日暇だよね?一緒にセレブ見に行かない!?ジュディス・ウォードが来るんだって!!!お願い!一緒に行こうよー!!!」
電話の相手は興奮気味に捲し立てた。
ジュディス・ウォード、世界的なスーパーセレブ、大女優だ。
正直興味はないが、この同僚が長年ジュディスに憧れているのは知っていた。
「んーしょうがないなぁ。貴重な休みだけどお供しましょう」
私は渋々了承し、出掛ける支度を始めた。

「うわー!すごい人!!あ!見て!あれブリタニ・チョーじゃない!?あ!あっちにはダーク・ドリーマーだ!!!」
ジュディスに憧れていると思っていた同僚はただのミーハーなのかもしれないと思った時、会場の空気がガラリと変わった。
「あ!ジュディス!!!やばいやばい!夢子見て!」
同僚にそう言われ、一際ざわつく方を向くと、そこには世界の大女優、ジュディス・ウォードがいた。
たいしてファンでもなければ、出演作品も2、3本しか見たことない。そんな私でさえ息を飲むほどのオーラと迫力だった。
そんなジュディスの向こう側に、つい最近見た顔を見つけた。
「ああの人
私は小さく呟いた。
それを聞いた同僚が私の視線の先を見て言った。
「ん?なに?知り合い?って、あれパパラッチじゃん!あんな奴ら夢子の知り合いなわけないって」
「パパラッチ?」
「知らないの?セレブの私生活にズカズカ踏み込んで、プライバシーも人権も無視して追っかけ回して、時には勝手に家に入って盗んだりすることもあるんだって!
最低じゃない?」
最低?」
私は同僚の言葉が理解できなかった。
でも確かに、ニヤついた顔でジュディスにカメラを向けてるその人物に品性を感じることはできなかった。
それでも信じることができなかった。
先日私に水を渡し、タクシーまで呼んでくれたその男と同一人物などと。

気がつくと私は男に向かってスマホを向けていた。
男がジュディスを狙うその姿を、スマホのカメラで撮影し続けていた。
そのうちジュディスも帰り、パパラッチたちも散り散りになっていた。
「さてと、私たちもそろそろ帰ろっかー?ってか夢子めっちゃ撮影してたけどそんなにジュディス好きだった?夢子?」
私は同僚の言葉など全く耳に入らず、帰り支度をしている男に向かって思わず駆け寄った。
「え?夢子!?」
同僚は慌てて私の後を追おうとするも、人混みにまみれてしまった。
私は男を追いかけて走った。
「ねぇまって!あなた!!!待ってよ!!!」
何とか追いついて男の腕を掴んだ時、男は驚いていたが、私の顔を見るなりさらに驚いた様子で目を見開いた。
「なっ!!!なんでアンタがここに!」
男はすぐにため息を吐いて続けた。
「はぁー、バレねぇと思ったんだけどな。
しゃーねぇな。ほら、これでいいだろ?」
そう言った男の手には3万円があった。
私は状況を理解できずにいた。
「何だよ、ちげぇの?金返せって言いにきたんだろ?」
男はそう言って困ったような顔をした。
「えっと、ごめん、人違いじゃないかな?私はただお礼を言いたかったの。
昨日私にお水をくれて、タクシーまで呼んでくれてたでしょ?だから本当にありがとう、すごく助かった」
私がそう言いながらお辞儀をすると男はまた目を見開き驚いていた。
「え?お、お前気づいて追っかけてきたんじゃねぇの?」
「え?気づいたよ。だから追いかけてきたの。そういえば名前も知らなかったよね?私は夢子。あなたは?」
「え?っとシンゴだけど
「いい名前ね!」
私が笑顔でそう言った時、男は急に吹き出すように笑い出した。
男は大声で笑い続けていたが、私は男が何でそんなに笑ってるのかさえわからずにいた。
「え?何でそんなに笑うの?シンゴって名前いい名前じゃない?」
「ち、ちが、そうじゃなあっはははは」
私は仕方なく、男が笑い終わるのを待つことにした。
しばらくして男が笑い終わったところで、また3万円を私の前に突き出してきた。
「いやー、めっちゃ笑ったわ。こんな笑ったの初めてかも。だからやっぱこれ返すわ」
「これって3万円、私シンゴに貸してた?」
それを聞いてシンゴはまたも少し笑っていた。
「なんでそんな気づかねぇの?この3万はアンタのだよ。俺がアンタの財布から盗ったの。
言ったろ?ごちそーさん、って」
その時シンゴの去り際のセリフが気になっていたことを思い出した。
「あ、え、あれそういう意味!?」
やっと合点がいった。
あの時酔い潰れたまま店でスリがバレると困るから、少しだけ酔いを覚まし、すぐに店から帰るように仕向けたのだと。
しかし私は、もう一つだけ気になっていた。
「ご馳走、してないけど、そのお金で何か食べた?」
「え?」
「ご馳走様、って言うくらいなら、食べるために盗ったんだよね?でもその3万が私のお金なら、まだご馳走してないよ?」
「一応普通に食える金は持ってるよ。ただ初めて行ったバーだったし、お前からは簡単に盗れそうだったからさ」
そう言って笑う男の顔は、ジュディスにカメラを向けていた時と同じ、ニヤついた品性のカケラもないような顔だった。
「あ!夢子!!!いた!!!」
後ろから同僚の声が聞こえた。
「もう!どこ行ったのかと思った!ってかさっきのジュディス様のパパラッチじゃん!!やだ夢子ったらこんなのと話しちゃダメだって!」
シンゴは無理矢理私の手に3万を突っ込んで言った。
「そうだよ、夢子ちゃん。俺なんかと話すもんじゃないって」
そう言ったシンゴの顔はパパラッチらしいイヤらしい笑顔だった。
他人の生活を漁り奪う顔。
それでも夢子は、その顔を信じることができなかった。
その場を去ろうとするシンゴの服のポケットに、夢子は3万円を突っ込んだ。
「これは貸しておくから。必ず返して。私に、直接よ?お願い」
そう言って同僚の手を取り、夢子はその場を走り去った。

その日家に帰ってからはもちろん、1週間経ってもシンゴからの連絡はない。
連絡先など教えてないから連絡はないのも当然といえば当然だが。

あの日から、私はシンゴのことばかり考えていた。
シンゴとのつながりを切りたくなかった。
だから3万をシンゴに突き返した。
卑しいパパラッチ
そう言われても、私はシンゴのことを忘れられないでいた。