【スタゼノ】weekend date

指輪にまつわる週末のストーリー。
隠居様( https://x.com/inkyo_2 )のイラストにお話を付けさせていただきました。

 麦穂のような金髪、濃いまつ毛、綺麗に歪められた唇、そして指に挟んだ煙草からは真っ白い煙が垂れ、それは彼が頼んだブリトーとコーラ、そして僕が頼んだチーズバーガーの上でたゆたっている。
 今日は週末で、幸いにもお互い仕事は何もなくて、だから僕達は馴染みのダイナーで遅い朝食を摂っていた。スタンはずっと機嫌が良かった。仕事中には一切の表情を消す彼が、まるで幼い頃のように僕を見つめている。というのも彼の左手の薬指には少々チープだが銀の指輪があり、それは僕も変わらなかったのがその理由だろう。とはいえ、僕だって機嫌が良かった。多分、理由は彼と同じだろう。
 この指輪は、昨日移動遊園地の中にあったおもちゃ売りから買ったものだ。昨日僕たちはビールバーで飲んで酒が入って酔っ払っていて、その足で移動遊園地に行き、ジェットコースターにスクランブラー、ティルト・ア・ワールに乗ったりして叫びまくった。ファネルケーキを食べ、地元バンドの演奏を楽しんだ後は、射的やバスケットボール投げで稼ぎ、ネオンの光が目にまぶしくなった頃には、煙草を吹かすおもちゃ売りの前にたどり着いて、おもちゃについては結構いい値が付いてたこの指輪を、やはり笑いながら買った。そしてスタンはそれを家に帰る途中の道でうやうやしく僕に着け、結婚してくれる? って笑った。スタンは一瞬だけ目を逸らし、まるで照れを隠すようだった。だからじゃないかもしれないが、僕はまだ仕事が忙しいから考えさせてって言って、でも、彼にキスをして笑い返したのだった。もちろん昨日はファックした。指輪に口付けて、深く深く。
 その指輪だが、今も僕たちはそれを着けている。ダイナーのマスターや馴染みのウェイトレス以外には知り合いがいないこの店で、決してゲイフレンドリーではないこの店で、揃いの指輪を着けている。ウェイトレスはさっき僕らの指輪に気づいて一瞬眉をひそめたが、スタンは気にせず僕の手に自分の手を重ね、笑顔で「もう一本コーラを」と注文して話を続けた。そんなスタンはまだ笑っている。週末のダイナーに集まる人々がもたらすざわめきの中で、僕は近頃成功した研究について身振り手振り語り、スタンはそれを笑顔で聞いてくれている。
 ねぇ、スタン、君は機嫌がいいみたいだけど、僕も気分がいいんだ。おもちゃのそれとはいえ、君が自分のものになったようで、本当に気分がいいんだ。
 昨日一晩考えたんだけど、やっぱり君の質問に対する答えは一つしかないな。酔った勢いで交わしたプロポーズの言葉が、朝になって頭の中で反芻されていたんだ。仕事の忙しさなんて言い訳だ。本当は、スタン、君の笑顔をこれからずっと見ていたいだけなんだ。
 だからこの食事が終わった後には、一緒に本物のプラチナで出来た指輪を買いに行かないかい? そう言ったら君はどんな顔をするだろうね。驚く? 喜ぶ? からかおうとする? それとも真剣な顔でキスしてくれるかな。
「そんな笑ってどうしたん? ゼノ」
「じきに理由は分かるよ」
 僕はチーズバーガーに齧り付き、スタンもブリトーに齧り付く。
 なぁ、スタン。ずっと僕と一緒に笑っていてくれ。昨日の君のプロポーズに対する答えは、絶対にイエスだからさ。


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