冬牙
2025-07-22 14:51:34
2452文字
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故郷での話・ヤンデレスバ(闇スバ)文章一部抜粋(スバイカ予定)イカ不在・カグ視点

書き途中のスバイカ文章の一部抜粋
イカルガさん不在
カグヤちゃん視点

幼い頃。辺境にある小さな村で育ったスバルとカグヤは、毎日のように厳しい稽古に明け暮れていた。修行は辛く、時に逃げ出してしまいたいほどであった。

 そんなある日のこと。稽古のない日にカグヤはスバルと遊ぶために部屋を訪れようとしていた。事前に約束をしていなかったので、スバルを探して誘うつもりでいた。

「スバルー、外で遊びませんかあれ?」

 いつものように部屋の扉を開けると、そこにスバルの姿はない。すると、家の裏庭からかすかな物音がするのが聞こえ、カグヤは誘われるように裏庭のほうへ足を運んだ。

「スバル?そこにいるので……すか

 裏庭に続く扉を開けた先、目の前に広がっているのは血まみれの無残な動物の死体。そしてそこには、返り血で頬まで赤く染まったまま目の前の肉塊を無表情で見つめる幼馴染の姿がそこにあった。

「すばる?」

 スバルは狩人として相当な弓の腕前の持ち主であった。その彼が獲物を獲り、食べるために捌くことはごく当たり前のことであり、今までも何度か目にしたことがあった。

 しかし、カグヤは目の前の光景にそれとは違う違和感を強く覚える。

「な、なにをしているのですか……?」

 震える声で問いかけるカグヤの声に気づいたスバルが振り返る。

「ああ、カグヤか。偶然近くに野ウサギがいたから、獲ったんだよ。今日の晩御飯にしようと思って」

 声は普段となんら変わりない、いつも通りの彼のように思えたが、どこか重苦しい影を感じる。

「そそうですか。でも、それは、やりすぎなのでは」

「そうかな?うーん、たしかにそうかもね。あはは、これじゃ食べられないね」

 カグヤの問いにスバルは感情の薄い声で笑うとボロボロの肉塊を雑に放り投げた。普段のスバルからは想像できないその姿にカグヤは愕然とする。少なくとも村の人々に狩人としての教えを受けているはずのスバルにはあり得ない言動だった。

「スバル!?どうしてそんな命を粗末にするようなことを!」

 咄嗟に出たカグヤの言葉にスバルは見たこともない鋭い目つきでカグヤを睨みつけた。

カグヤもおばばたちみたいにオレを縛るの?」

 スバルの言葉にカグヤは思わず言葉を失う。

……え?」

「毎日毎日稽古稽古稽古一人でいるときくらい自由でいられると思ったのに。カグヤもオレを縛るんだね」

 よろりと鈍く動き出したスバルは手際よく道具を片付け始めると、頬についた血を拭い、次に振り返った時にはいつもの彼に戻っていた。

「さてこれから一緒に遊びにいくんだろ?」

「えっ?あ、はい!誘おうと思って

「わかった。すぐ準備してくるから、表で待ってて」

 スバルは見慣れた太陽のような笑顔で笑うと、カグヤは裏庭出て家の前に戻った。

 さっきみた光景はなんだったのだろう。そのときカグヤはまるで悪い夢でも見たような心地だったが、すぐにそれが夢ではないことが判明する。

 それからも度々カグヤの知らないスバルの一面が現れることがあった。そのどれも普段の彼からは考えられないような残虐で、無邪気なものだった。

 なぜ彼がそのような二面性を持ち合わせているのか最初はわからなかったが、それが次第に日々の厳しい稽古や環境による強いストレスが原因であるとカグヤは思うようになった。同じ状況に立たされているカグヤにもその気持ちがわからないわけではなかったからだ。私にも全部投げ出してしまいたいときはある。カグヤにはスバルを責めることも、止めることもできなかった。

 これはスバルにとって日々の辛い状況に耐えるための一種の救い、必要なことだと思うことでカグヤはそれを飲み込んだ。

 そうして月日が流れ、2人が一人前になっていくに連れスバルのもうひとつの顔は次第に姿を見せなくなっていった。カグヤが幼い頃にみた幼馴染の隠された本当の顔を忘れた頃、2人はもうすぐ旅たちの日を迎える。

「そういえばさ。オレたちって許嫁ってことで、いいんだよな」

「え、ええそうですね」

 すっかり一人前になり自主稽古をしていたスバルとカグヤは来たる旅立ちの日を前に別れが名残惜しいのかお互いの関係について改めて話していた。

「決められた婚約者か。まあ、他にこの村にオレたちくらいの歳の人もいないしな」

「それもそうですね。スバル」

「どうした?」

 カグヤはスバルに少し夢を見るようなまなざしでもしもの話をする。

「もし、許嫁として決められた相手ではなく心の底から運命だと思える人に巡り合えたとしたら、どうしたいですか?」

「あはは、なにそれ。恋愛小説の影響でも受けちゃったの?」

 真面目に問いかけたつもりが小馬鹿にされカグヤは顔を赤くした。

「わ、悪いですか!?いいじゃないですか、少しくらい夢を見たって。この村を出たら、そんな素敵な出会いもあるのかもしれないのですよ」

「まあ、世界は広いっていうしなあ。たしかに、そういう恋愛にも憧れがないわけじゃないけどカグヤって意外と乙女なんだな」

「私をなんだと思っているのですか?もうこんな歳なのに、恋愛経験もないなんて。はあ」

「まあ、もし見つからなかったらオレが拾ってあげるからさ」

「ちょっと、なんですかその言い方。貴方のほうこそ相手されなくても知りませんから!」

「おお、言うなあ」

「当たり前です。でも、せっかく村を出て外に行くんですから、ちょっとくらい期待したっていいでしょう?」

「まあ、それもそうだな。もし運命の人に巡り合えたらか、そうだなあ

 スバルがほんの一瞬考えた後、ポツリと呟いた言葉に青空を見上げていたカグヤはハッとスバルのほうを振り返る。

「ずぅっとオレだけのものにして、たくさん愛してあげたいな」

 雲一つない晴天に照らされた笑顔にはあの日見た暗い影が落ちているように見えた。