ろころころ
2025-07-21 22:05:52
1710文字
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ホムラくんの回想




最近の俺の戦績は良くも悪くも安定している。



エオス島から飛び出てライド達に世話になる前の戦績なんてそれはもう酷かった。人に言えるようなものじゃないくらいには。俺のやる気も集中力も切れて、技は当たらないし反応は遅れるしで、トレーナーにもキレられて観客からも散々に罵倒された。医務室勤務のハピナスからはどこか身体が悪いのではないかと心配のメールが届いたほどだ。

このエオス島のバトルというのは特殊で、伝説から無進化ポケモンまでが集まって戦う。もちろん、伝説のポケモンにヒトカゲの状態の俺が勝てるわけがない。伝説のポケモンと一般ポケモン、更には選手間の元々の戦闘経験などによる差を減らすために生み出された、スタジアム内にのみ効果のあるシステムによって、ポケモン達の戦闘能力は均等になるよう調整されている。
つまり、勝利の鍵を握るのは戦闘能力的な強さじゃない。立ち回りや作戦、その時の体調、ポケモン同士の相性などなど。そうした戦闘能力以外の部分が、勝敗を決めるのだ。
だってそもそも、ゲームの勝ち負けはKOの数じゃなくてゴールの点数なのだから。


だけど、戦ってる間はそんなことを冷静に考えていられなくて。目の前の敵を倒すことだけに夢中になったり、事前に立てていた作戦を忘れてしまったりする。これは単に俺が冷静じゃないだけかもしれないけど、ふとした時の感情のコントロールというのは凄く難しい。
『勝ちたい』という思いが先走って、結果的に自分の行動のせいで負けてしまう。

そして客席から届く非難の声、試合の後に建てられた掲示板に書き込まれる誹謗中傷。
こうしたものに、俺はあまりにも惑わされすぎていたのだと思う。

見なければいいと、アレックスに言われた。
気にしなくていいと、フローラにも言われた。

だけど1度そこで言われているかもしれないと知ってしまうと、やっぱり気になってしまう。
試合の最中にふと思い出す。あの場所に書き込まれていたことを。

どの動きが良くなかった?
どこで俺は何をし損ねた?

そんなことを考えていれば自然と集中力は切れ、動きがどんどん酷くなる。控えめで、誰かから非難をされないような、地味な動き。
そんな動きじゃ試合の展開を変えることなんて出来なかった。わかっていたんだ。

そんな中、御三家寮に新しい仲間がやってきた。

彼の名はシャモ。
ガラル地方からやってきたバシャーモで、俺と同じほのおタイプのファイターだった。

彼の怒涛の勢いは、消えかけの炎のようだった俺のことを覆い消した。ユナイトバトルの話題は彼のことでもちきりとなり、"ほのおタイプのファイター"として一番に彼の名が出されるようになってしまった。

後輩に対してこんな感情を持つのは、更に情けなくなるだけだってわかっていた。
だけど、わかっていてもどうしようも出来なかった。
この時の俺の耳にはアイツらの言葉なんて入って来なかった。ちゃんと聞きいれてたら、また別の結果になっていたのかもしれない。


だけど、アイツらとの"夢"のことなんてお構い無しに、新入りの彼が持っていない唯一の俺の翼を使って、エオス島を飛び出したんだ。




結果的に、俺は別の世界に迷い込み、「救助隊」に出会った。彼らは俺に沢山のことを教えてくれた。恐ろしいものに対しても勇敢に突き進む勇気と、強いからこそ持っている優しさ。


俺は、あいつらに沢山教えてもらった。
だから、もう何も怖くない。


知らない奴から投げられる心の無い言葉なんて気にしない。俺に聞こえてるのは、仲間とファンの声だけだから。
よく耳をすませば、ライドの声が聞こえてくる。それに重なるように、アイツらの声も聞こえてくる。

お前たちが俺の味方でいてくれるなら、怖いものなんて何も無い。

俺にはお前たちがいるから、大丈夫。
だから今度は、俺がみんなを助けるんだ。
俺のことを率先して助けてくれた救助隊のように、裏切り者を許してくれたアイツらみたいに。


俺がこのエオス島に、光を灯してみせるよ。



END