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来羅
2025-07-20 16:21:29
2254文字
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トワウォ
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熱帯夜(風信)
ワンドロライ開催おめでとうございます!祭りに乗りたかった!!
25歳×13歳の現パロ。大学生シリーズのふたりの昔話ですが、わからなくても全然問題ないです。
「だから来ない方がいいと言っただろう」
少祖は電話口と同じセリフを言って呆れたように肩を竦めた。
「そんなこと言ったって」
貴重なお泊まり日を見逃すなどできはしないことくらい、わかっているくせに。
「兄貴は俺に会いたくないの?」
「昨日会ったろう」
「会ったけど!」
「明後日も会うだろう」
「そうだけど!!」
それとこれとは話が違う。
だって今日は月に二回だけ(許された)泊まりがけの勉強会の日なのだ。信一がどれだけこの日を楽しみにしていたか、院生でありながら今年から助手としても働き出し、それなのに家庭教師を続けてくれている少祖が知らないはずはない。
それがまさか、こんな羽目になるとは。
「だから早めにクーラー買い換えた方がいいんじゃないのって言ったのに」
恨みがましくジト目で見れば、咳払いした少祖が氷を入れた水を額に当てて、視線を逸らした。
張少祖という男は顔も良ければ頭も良い、背だって高いし、声も良いと、世の中の男の憧れをひとつに集めたような形をしているくせに、こと計算に関しては滅法弱かった。
つまり、すでにガタがきているクーラーを、余計な出費は控えたいという目先のことだけに囚われて放置した結果、この真夏の最中に壊れ、時期を逸したために相場より高い値段で新調せざるを得なくなったのだ。
「叩けば
……
」
「直りません」
カタカタと鳴る、これまた年代物の扇風機を独り占めして信一は唸る。
このアパートだってそうだ。
贅沢には興味がないと言えば一見良さそうだが、その結果、目算よりも早くグレードアップを余儀なくされては話にならない。
「兄貴、頭いいのに、本当にさぁ」
温いシーツにごろりと寝転がり、汗を拭う。
じとりとまとわりつくような熱気は夜も更けたこの時分でも冷めることはない。しかもこの部屋は夕方になると西日が差し込むのだ。空気も壁も調度品も何から何まで熱せられた少祖の部屋は、じっとしているだけでも背筋を汗が伝う。
「勉強にならなかったな」
「テスト範囲は復習したから大丈夫」
「それならなおのこと、来るべきじゃなかった」
「やだよ。せっかく兄貴と一緒にいられるのに」
冷凍庫から取り出したばかりの保冷剤をぺとりと頬に当てられてひゃっと首を竦める。それに小さく笑った少祖が、ベッドの端に座るのを、逃がさないとばかりに手を掴んだ。
「信一」
「やだ、一緒に寝る」
駄々っ子になって、ベッドの端に寄った。
いくら信一がまだ成長途中の細くて長い四肢しか持っていないとしても、男ふたりでシングルに寝るにはくっついて寝るしかない。
少しだけ、たぶん、少しだけだ、うんざりとした顔で溜め息をついた少祖が、電気を消して隣に滑り込んできた。
汗ばんだ熱い腕が当たる。
風呂に入ったばかりの石鹸の匂い。ボディソープに慣れた信一には少々刺激が強い。
それでも隣に確かにある熱に安心して、ごろりと横になって少祖へと体を向ける。
熱風がカーテンを揺らしていた。
外から入ってくる向かいの店のネオンがちかちか瞬いて、少祖の白皙を照らしている。
うつくしい人だ。
切れ長の瞳。長い睫毛。まだ生乾きの髪がはらりと額に落ちる様すら色気がある。
「どうした?」
「ううん」
好きだなぁと思うのだ。
好きで好きでどうしようもないのだ。
一回りも大人の彼を恋い慕うのに、体裁なんて構っていられない。
「兄貴」
「うん?」
「好き」
ほうっと息をつくように言葉を乗せる。少祖からの返事はない。いつだって返事はないけれども、その細められた眼差しは柔らかく甘やかだ。
「大好き」
だから、少祖の分まで信一は言葉にする。
ふふ、と笑う信一の頭をくしゃりと撫でた少祖が「早く寝ろ」と先に目を閉じた。
熱を吸ったシーツはどこもかしこも熱い。
熱い足先を、それでもどこか冷たい場所を探すように動かしていたら、少祖の爪先が踝に当たった。
同じ体温に境がわからなくなりそうだ。けれども固い爪先は足首を二度三度往復すると、つうっと脛を撫で上げる。
「っ」
ぎょっとして目を開けても、少祖はそよそよと吹く扇風機の風に髪を揺らしながら涼し気な顔で目を閉じている。
そうだというのに、悪戯なその爪先は触れるか触れないかというギリギリのタッチで信一の脚を擽った。
「
……
っ、あに、き!」
「ん?」
吐き出す息が熱い。
髪の生え際から滑り落ちた汗が目元の窪みに溜まる。
熱い。体の奥底から広がる熱が、ただただ熱い。
頭の中が痺れるように熱い。
爪先が辿る肌が熱い。
温い空気が熱い。
熱い。
熱くて。
あつくて。
「
…………
いや、むり、あっつい!」
がばりと起き上がった信一に、目閉じたまま少祖がくつくつと笑った。
「そういうのは、クーラー来てからやって!」
「何のことだ?」
「しらばっくれて!」
「遅くまで起きてる悪い子は、大きくなれないぞ」
「その子供に悪戯する悪い大人は誰だよ」
「俺か?」
「もう、そういうとこ、ほんっとにさぁ!」
「嫌いか?」
「大好き!!」
叫んでまたバタリとベッドに倒れ込む。
ひとしきり喚けばさらに熱くなって、少祖の持ってきた保冷剤を首筋に押し当てた。
「本当に好きなんだってば」
小声で呟いた信一に、やはり返事はない。
ない、けれど。その代わりに最後は決まって、少祖は密やかな声で言うのだ。
「あと五年経ったらな」
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