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夢篠
2025-07-20 06:17:05
1978文字
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あつい
暑くて激鬱山本陣内
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
「はあ
…………
」
馬鹿みたいに陰気なため息を吐く陣内を振り返る。最近ずっとこれだ。なんなんだろ、何かあったのかな。陣内がため息を吐く度に忍軍の若いのの肩が揺れる。分かる~。陣内のため息って変な迫力があるよね。こんな暑い日に輪を掛けて、陣内のため息なんて嫌になるもの。
「ねえ、陣内」
「
…………
、はい、何でしょう」
私と相対している時はいつもの陣内な気がする。でも反応は少し、否、かなり遅い。反応も鈍い。何かある、とは思った。
「何かあったの?最近随分、何というか、『落ち込んでいる』ような」
「
……
は?」
陣内の肩が揺れる。全く驚いたような顔をされるから、こっちが動揺してしまう。まさか気付いていなかったという事だろうか?タソガレドキ忍軍の小頭ともあろう者が?自分の感情ひとつ認識できていなかったのか?
「その、私は落ち込んでいるように見えましたか」
「え?あ、ああ、うん。あまり、元気があるようには見えなかったけれど、」
なんだかこちらが可笑しな事を言っているような気持ちになってしまう。なんで私がこんなに困惑しなければならないんだろう。陣内はまるでこの世の終わりのような深いため息を吐いた。
「暑いですな」
「え、あ、そ、そうだね。最近一気に暑くなったね」
「この暑さ、いつまで続くとお思いですか?」
「さ、さあ?長月か、神無月か
……
、かな」
私がそう言うと、また大きなため息。本当に何なの?なんか凄い怖いんだけど。
「
……
そう、だろうとは思っていました。あと幾月かは暑くて鬱陶しい夏が続くのだと」
「いや、なんなの?夏は鬱陶しいけどさ、その顔はそういう事じゃないだろう」
それは何かもっとこう、陣内が致命的に良くない事が起きているような時に見せる顔な気がした。まさか何か、私が気付いていないだけで良くない事が起こっているのだろうか。ぞわ、と血が下に落ちていく気がした。僅かに私の顔色の変わったのに気付いたのだろうか。陣内は引き結んだ唇を緩める。彼が息を吸う音が聞こえた。
「その、ですな」
「うん
……
」
「
ナマエ
、の事なのですが
……
」
「
ナマエ
、さん
……
」
ナマエ
さんは陣内の奥方だ。好き合って、昨年の晩秋に一緒になった。まだ新婚と言える二人は、本当に仲睦まじく見えた。その
ナマエ
さんが、どうしたのだろう。心臓が強く打つ。嫌な予感が少しした。
「
ナマエ
が、嫌がるのです」
「はあ、何を?」
「その、触れ合い
……
」
「は?」
空気が凍った。何か変な発言が聞こえた気がしたな。念のため、もう一回聞いてみようかな。
「えっとごめん、
ナマエ
さん、何を嫌がるって?」
「ふ、触れ合いです」
「
…………
え、あ、そ、そう、なんだ
……
」
えっと、何をどう言えば良いのか分からない。触れ合い、って要は文字通り触れ合いって事だよね。え、このクソ暑い最中に奥方と触れ合うの?陣内が?ごめんけど、陣内の女の触れ方って結構ベタベタしてるというか、暑い時は勘弁って感じだった気がするんだけど。えっ、ため息の理由ってそういう事?狼隊の小頭の癖に奥方に触れ合えずに拗ねてるって事?本気で??
陣内はこの世の終わりという顔で重々しくため息を吐いている。えっ、あっ、これって手助けがいるやつなの?
「あ、あの、さ
……
、陣内
……
」
「はい
……
」
「暑いよね、今。だって、夏だもん」
「そう、ですな。忍軍も、相当参っていると思います。何せ日に日に暑さが増していきますし」
「だよね。じゃあさ、聞きたいんだよね。そんな暑い日にさ、私が陣内に抱き付いたら、どう思う」
「変な想像させんでください」
お前がな、だよ。今私はお前の話をしているんだよ。その過程で私が出て来ただけでさ。元々はお前が始めた話なんだよ、これは。
「いやまあ、少し考えてみて。どう?こんな暑い日にさ、私が抱き付いて来たら」
「そりゃ、嫌でしょう。暑苦しい」
「でしょ、多分
ナマエ
さんも一緒なんじゃないかな~、なんて」
「は!?」
いや、何が「は!?」なんだよ。こっちがだよ。何でそんな驚いた顔をするんだよ。頭痛くなってきた。
「いや、だからね。多分なんだけどさあ。暑いだけなんだよね。
ナマエ
さんがその、触れ合いたくないってするのは。分かる?」
「
…………
暑さが全て悪いと、そういう事ですか?」
「いやまあ、ね。言ったらそういう事だと思う」
陣内が口の中で成程、と呟いたのが聞こえた。少し考えるように首を捻った陣内が思い付いたように顔を上げた。あ、何か今、嫌な予感がした。陣内が、口を開く。
「タソガレドキには、確か氷室がありましたな!?」
マジか、お前。マジなのか。
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