鳥居鉄工所
2025-07-19 11:48:32
3813文字
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「赤と白とロイヤルブルー」読了感想

面白かったは面白かった。ただ同じくらいにもやもやもしたので、その部分を書きなぐってみた

「赤と白とロイヤルブルー」を読了ったのでにわかの感想です。
上っ面の感想かつ物語の核心を避けようとしたらよくわからんくなりましたが御笑覧いただけたらもっけのさいわい(^_-)-☆

そもそも何で読んだかちゅーと
なにやら映画が流行ったらしい、アメリカ大統領息子と英国王子のBLなんだってという情報を握っていただけの状況で、ヒット御礼後日談収録コレクターズエディションを出したよ!というので購入してそれで満足してました(積読あるある)

で、ようやく読んだのですが。

このお話を、好きで読んだわけでなく、読んでみっかと言う程度、極めてフラットな感情で読み進めたので、所々に疑問を生じさせていくことになりました弊所です。

まずは、大統領の息子とイギリスの王子様と聞いて、え?ふたりの年齢って幾つよ?と、最初に思ったことは秘密にしてくれww 大統領って政治キャリアの終着点的サムシングなので、まぁ大体がおじぃちゃんが多いイメージだったんで、その息子おおぅ、中年か、おっさんずらぶなのかと思ってました。でもこれは現実じゃなくって、ある種のファンタジーだから、ふたりともに二十代の青年でした。つまり母親の大統領は史上初女性大統領なんだがめっちゃ若い、ケネディくらいの歳恰好じゃなかろうか?(JFKは43歳最年少大統領)
母親がすでにチート級のアメリカンドリームの体現者で、その子どもたちは(成人してるけど)母親の応援をするという形でホワイトハウスに住んでいる。母は労働者階級(といいつつも別荘所有している? 離婚した元夫も政治家しているので厳密には労働階級ではないかもしれない)からの政治家なのでどんな政策を行っているのかが気になるところだが、本筋には関係ないのでばっさりカット。

てゆーか二期目選挙近いという大変にセンシティブなこのタイミングで、息子のアレックス君は自分がバイセクシュアルであることを自覚してしまい、しかも、ティーンの頃から実は無意識に気にしていた(姉はちゃんと知っていたらしい) というヘンリー王子(この名前も大概ヤバイ)(王子だが祖母が女王なので王孫が正しいよな)への恋心に気付いてしまうというのが前半の展開。
意識したら強気の喧嘩も不発になって、意味深な、もだもだし始める乙女っぷりだった。女々しいぞ。

でもって英国王子のヘンリー君は、母親や兄をさしおいてプリンスオブウェールズの称号持ちだった。/(^o^)\ナンテコッタイ!英国王室の未来はどうなる?! と思ったのだが、彼は皇太子ではありませんでした。作者が勘違いしてなのか、BLファンタジー、うぇ~い♪ だったのかは不明だが、編集が何とかすべき部分だったんじゃないのかここは?
まあ、そんな彼は、なんとアレックス君よりも先ゲイであることを自覚していて、経験もそれなり、アレックス君にもフォーリングラブだったと明かされて、はい! カップル成立!

もうふたりともに成人年齢だから、初恋も初体験も別の人でお済ませのところは、BLにも処女性を求める日本(例外はあるだろうけど)との違いを感じましたね。

ここから先は遠距離恋愛かつ秘密にしておきたいふたりはメールと電話で連絡取り合い、世界的イベント日程を万障繰り合わせて一緒になって、ホテルにしけこみらぶらぶちゅっちゅですよ、SPはこいつらのこと殴ってもいいと思う。

もだもだ期が終わったら、ふたりはリアルだけでなく、メールや電話でいちゃつくんだが、これが見事なまでに割と肉欲一直線な部分が多くて、さっきまで恋に夢中になってるティーンエイジャー風味だったのに展開が早いな。
このふたりの左右が解らなくて、読みながら何となく、英国×米国だと思ってたんだが、逆でした。米国がツッコミ役でした。そういうところだけマッチョイムズなんだな。ふたりのメンタリティ的に、その日の気分であっちこっちしてそうなイメージだったが、そういうところは役割が明確なんだ、ほーん。

しかしこのふたりが、お互いなぜ惹かれたのかの部分が弱いので、顔か?と言うふうに読んでいて勘繰ってしまったよ。もちろん、お互いの立場で苦悩していたり苦闘していたりの部分に、気付いたり慰めたり応援したりもしている、尊重し合っている描写もある。でもそれはカップルになってからの、踏み込んだことで得た「気付き」であるし、ひたすら人としての弱みを見せあっているだけのような気がしないでもない。

この物語、基本的には大統領の息子アレックス君視点で話が進んでいる。まあ、作者は米国人女性なので、同国人青年のメンタリティの方が自信をもって描き出せるだろうからそりゃそうなるわなというふうには思う所。
このアレックス君は、途中まではストレートという自認であったけれど、労働者階級一般ピーポーなのに、キャラクターにアメリマンマッチョイムズが存在していないような、女性的な価値観さすがはリベラル派の大統領息子である。ダイバーシティバンザイ。
しかして、アレックス君の周囲には理解者&協力者しかいない。読み進めていて、誰かひとりくらい大人の頑固な視点でこのお坊ちゃんのこと叱ってやれよと思うくらい、誰も苦言を呈さない。本人も、これはバレたら母親のキャリアひいては選挙戦に響くと判っていて、止められない若さゆえの爆走っぷりなんだから、誰かがヘイトを被っても構わないスタンスで立ちふさがっても良いだろうにみんなスルーするんだから、こりゃファンタジーですよ。
ドラマツルギーとしても、恋物語には、ライバルと邪魔者が出て盛り上がるのだから出してくれても良かったんやで?
 一応、米国側からは、母親の対立候補陣営からの個人攻撃的な暴露がされるし、英国側からは伝統的こうあるべき王族の姿を強要する祖母女王からの反対がある。
これをふたり手に手を取って乗り越えていくかと思わせて、周囲の方たちが有能すぎて、さっさと目の前の小石を拾いまくっているのだから、恋愛が齎すふたりの成長と突破のカタルシスがイマイチだった。

物語の主軸はふたりの恋の行方だけど、もうひとつのストーリーとして、アレックス青年の自己確立と成長のビルドゥングロマンスがクローズアップされてる。
アレックス君は、恋愛楽々ロードを進みつつも、自分のキャリアを何とかしようともがいている。ちょっと斜に構えたことは言うけれど、政治家を志していてどういう進路を取るべきか、とか、母親の選挙戦のスタッフとして出身州テキサスを母親に獲らせたいとか、弱気部分がありつつも意識高い系かな? 夢多き未だ何も成し遂げていない学生さんなのに、(なんなら選挙戦を戦い抜き勝利したのは彼ではなく母親だよ!)それが 何で自分がいないと駄目だみたいな感覚でいられるのかわからないのがわからん。青年期の揺れ動きなんだろうか、ちょっと痛い子だわ。

対するヘンリー王子の方が、血と因習の縛りで雁字搦めで、闇が深い苦悩を感じるんだが、そっちについてはサラッと流している。あくまで、主人公はアレックス君なんだなと言うことですよ。
主人公の苦悩と成長は尊い。そしてそのお相手のことは、俺が救ってみせるぜ!という気持ちがあるのだけは認めよう。
だが、物語を読み進めて行っても、結局彼の成長は全て、彼自身の力で成し遂げるというよりは、環境がお膳立てしてくれている。周囲が見守り助言したり助力したりしてくれるという圧倒的環境チート。幸運に恵まれている。ある程度は自力で行ったけれども、そこで生じる障害に対する乗り越えは全て、所によってはちょっとご都合主義的な部分と周りの親切とラッキーに助けられる部分があるのだけが気になった。

物語ラストで、お互いの感情を周囲に周知され、とりあえずは認められ、ママは二期当選できてハッピーエンドいや、なぜ母親のキャリアがふたりの恋路の成功にカウントされてんの?
そして民主主義の国では、落選したらただの人だから、その息子のアレックス君はもっと何ものでもない。血統で存在が担保されているヘンリー王子の隣に立ち続けるのって、結構プレッシャーだが、向こう見ずな若者だから、これから頑張っていくんかね?

特別収録では、王子さまがお料理作ったりと庶民ナイズされている姿が描かれている。彼はこの暮らしに満足をしているようだ。
アレックス君は着実にキャリアを築こうとしているが、勤め先に文句を言っていて、辞めちゃいそうで読んでいてハラハラします。
王子さまのパートナーになるんだから、がたがた言わずに頑張んなさいよ!

読み終えて思ったのは、このお話は確かにBLであり、ファンタジーだということでしたが、底流に民主主義への信頼と、リベラルバンザイ、多様性って素晴らしいという思想を強く感じました。大団円的ハッピーを目指すなら、せめて、保守的家庭のキャラクターをひと組でいいから出して、彼らの理解を得る展開があればよかったんだが、保守的な思想(この場合は民主党的観念になるのな?)がスポイルされていて、悪感情すらちょっと遠いところにあるのだけが勿体なかったかも。

でもそれ取り入れるとBLじゃなくなるから駄目なのかな。

不快なストレスなく読み進められたお話でした。落選候補だけはきっと舞台裏で地獄みていそうですけど。