龍兄貴が亡くなっても、信一はつい癖で食べ物を二人分用意してしまうらしい。最近はよく買いすぎたもの、作り過ぎたものを人に分けて一緒に食べている。
その日はよく龍捲風が凧揚げしていた場所で、買いすぎた叉焼包を洛軍と頬張っていた。
「いい加減なれなきゃなぁ」
コンクリートに頬杖をついて遠くを見つめる信一の横顔は寂しげで、龍捲風がいた頃はこんな表情はついぞ見なかったのに。
口の中の叉焼包を飲み込んで、洛軍は思ったことを素直に言葉にする。
「俺はお前と一緒に食べられて嬉しい」
気のおけない仲間と、飲んで、食べて笑い合うこと。腹を満たすだけでなく、美味いもの、心を満たすものを自ら選ぶこと。ただ生き延びるだけじゃない日々。
それを教えてくれたのは他ならぬ信一だから。以前と全く同じようにできなくとも、信一の人生からそんな小さくとも優しい日常が消えないで欲しい。
「はは、そーかよ」
少し困ったような呆れたような顔で笑う信一の頬にかかる髪を風が揺らす。
それを見て洛軍は一人で納得した(あぁ、そうか。あんたの仕業か、龍兄貴)
自分がいなくとも信一が一人で食事をしないように、誰かと穏やかな時間を分け合えるように。王九との喧嘩に混ざりにきた龍捲風なら、信一のためにそれくらいするだろうという妙な確信がある。
建物の間の青空を吹き抜ける風に、洛軍は心の中で呟く。(大丈夫。俺達がいる。一人になんてしない)
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