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むかいえ
2025-07-18 22:14:31
4262文字
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シャアム
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遥か彼方より、愛を込めて
ネタで書いてた異世界に召喚された各世代シャアムの話、の導入部分。アムロもシャアも三人ずついる。世界観はSRWもどき。
導入なので全然シャアムではない。これはもはやただ異世界召喚されたブライトさんのお話。
今後それぞれ独立して1stシャアムになりΖシャアムになりCCAシャアムになる。
突然だが異世界である。
ブライト・ノアは胃のあたりを摩りながら遠い目をしていた。異世界でも宇宙の彼方の星は美しいものだな、などと考える。なんとも典型的な現実逃避だった。
経緯は多少省略させてほしい。なにせ一から説明しようにもブライト自身がそもそも理解できていないのだ。
突然足元が光ったと思えば見知らぬ艦の中にいて、目の前に立っていたのは彼が知るよりも大人びた、けれど面影を色濃く残す旧友らしき男。目を白黒させるブライトを見て、旧友(?)は「おっ、これはアーガマのブライトだな」と訳知り顔で頷いていたのだから余計に混乱する。
老けた旧友はアムロ・レイと名乗った。知った名だ。意味がわからないが、どうやらブライトの知るアムロ・レイ本人らしい。聞けば29歳とのことだが、童顔は相変わらずのようだった。しかし佇まいは熟達した軍人のそれだ。ブライトの知るアムロ・レイよりも老成している。
29歳のアムロは未だ状況を掴めないブライトに諸々を説明をしてくれた。
曰く、ここは異世界である。この時点でついて行けず、ブライトは一旦ストップをかけたのだがアムロは聞き入れてはくれなかった。
話は続く。異世界と言っても、物語にあるような剣や魔法のファンタジーというよりも、文明は我々のいた世界に近しいようだ。だが非科学的な魔法のような超常の力が存在するらしく、その力で異世界から戦力になり得る者を召喚している状態だとか。
『戦力』ーーつまり、この世界は戦争中だった。正確には、地球のような星があり、その星を守るために戦っているらしい。相手は簡単に言えばエイリアンだとか。
ブライトは胃と同時に頭も痛くなった。
「まあ、敵は人間ではなかったよ。そいつらを唯一倒せるのが俺たちなんだってさ」
「は?」
「なんか
…
概念?とか?俺もよくわかってないんだけど
…
エイリアンは兵器じゃないと倒せないんだ。ここの人類は魔法が使えるんだけど、肝心の魔法が効かないから戦えない」
「その、魔法というものがまず受け入れ難いんだが
…
」
「そのうち慣れるさ。それで、この世界の人はモビルスーツや戦艦の操縦ができないらしい。機械音痴とかそういうレベルじゃなく『不可能』なんだ。
……
このあたりはもう異世界人はそういうものって割り切った方が早いぞ。だからまあ、兵器を扱える俺たちみたいなのを魔法で呼び出して代わりに戦ってもらってるって感じだな」
「そんな身勝手な。こちらの都合などお構いなしか」
表情を顰めるブライトの姿に、アムロは「ここに来た人、皆そう言うよ」と苦笑した。
「この世界の人類が負けると、他の世界にも影響があるかもしれないんだってさ。例えば、俺たちのいた世界とかな」
「
…
脅しじゃないか」
「あの人たちは善意と使命感しかないよ。いっそ怖いくらいに」
肩をすくめる彼は、異世界の住人に会ったことがあるようだった。ニュータイプであり、いろいろと察しやすいアムロが言うのならば、それは本当なのだろう。異世界の人類に少し興味が出てくるが、とりあえず話を聞いていく。
「それに、そもそも召喚の時に、戦いが終わったら元の世界の元の時間に帰す契約を織り込んでいるって聞いた。なら、もうここに来た俺たちは戦うしかないだろ。それでさっさと帰るのが一番手っ取り早い」
「それは
……
そうかもしれないが
…
」
「ま、ブライトが来てくれて良かったよ。やっぱり知った顔がいると落ち着くし」
穏やかに微笑むアムロの姿は、やはりブライトからすれば見慣れない。ブライトの知るアムロはまだ年若く、一年戦争後に様々な理不尽に晒されたせいで精神的に疲弊していた印象が強い。鬱屈していた彼を知っているからか、29歳の落ち着いたアムロに戸惑ってしまう。
「いつかラー・カイラムにいた頃のブライトも来てくれるかな」
「
……
は?」
続けられたアムロの言葉の意味がわからず、ブライトは呆気に取られた。何かの言い間違いだろうか
…
と敢えて触れずに流したブライトだったが、その意味を知るのはこのすぐ後、艦の案内された時のことである。
***
「えっ!ブライトさん!?あれ、なんか老けました
…
?」
「なんだ、ブライトも来たのか。久しぶりだな」
「
………
おい、説明しろアムロ。説明してくれ今すぐに!」
「ははは」
所変わって艦のブリッジである。案内されたそこにいた数人の中、見覚えのある顔が二つ。とてもよく似た二人がブライトに話しかけてきた。ブライトをこの場まで連れてきた男ともよく似ている。
ーーつまり、アムロ・レイである。
一人は懐かしい少年の姿をしていた。身に纏うのは連邦の少年兵用の制服
……
ちなみに29歳のアムロは正規兵の制服である。まろい頬がまだ幼さを残している。その頬を二度打ったことを、ブライトはよく覚えていた。一年戦争時代の、15歳のアムロ・レイだ。
もう一人は見覚えのある黒いフライトジャケットを羽織った青年だった。少し陰を含む眼差しはブライトもよく知るもの。こちらもアムロ・レイである。ジャケットから見て、カラバに所属していた頃のアムロ・レイだろう。恐らく22歳頃の。
そしてブライトの隣で苦笑する、ブライトの知らない未来のアムロ・レイ。29歳男性。
アムロ・レイが三人いる。あまりに非現実的な状況に、ブライトは眩暈がしそうだった。
『元の世界の元の時間』ーーアムロがさらりと話したこの言葉、実はとんでもなく深い意味がある。
召喚に時間軸は特に関係ない。すなわち、違う時間軸の同一人物が召喚できるということだ。あまりに近しい時代だと喚べないようだが、数年単位になると可能だとか。
そんなこんなで、この異世界に三人のアムロ・レイが集うという恐ろしい事態になっていた。そして三人共に現役のパイロットである。ブライトはまだ敵対存在であるエイリアンとやらがどんなものかは知らないけれど、アムロが三人いる時点で勝利は確定ではないのかと思ったりもした。そう思えるほどブライトはアムロの実力を買っている。
しかもーーそう、しかも、だ。なんと赤い彗星も三人いた。
ご存知シャア・アズナブルである。一人はとても見覚えのある姿で「やあブライト艦長」と片手を挙げて笑っていた。クワトロ・バジーナなどと飄々と名乗っているが、どう足掻いてもシャア・アズナブルである。どうやら異世界でも公然の秘密らしく、22歳のアムロを含め、艦のメンバーの数人は微妙な表情をしていた。もう外せそのサングラス!ときっと皆が思っている。
クワトロより年若く、不思議と似合う仮面をつけたシャアとも出会った。ブライトも写真で確認したことがある赤い彗星と呼ばれた青年。彼からすれば、赤い彗星と言えばこちらの姿の方が馴染み深い。社交辞令的な挨拶の後、シャアは「いつかホワイトベースの艦長だった貴方も来るかもしれませんね」と意味深に言って去って行った。勘弁して欲しいと切実に思う。
「もう一人のシャアはいないのか?」
「今はいない。あいつ、一応俺たちの纏め役的な立ち位置にいるからな。こっちの世界の人たちとの交渉とかであちこちに行くんだ」
「そうなのか」
かつてエゥーゴの指導者として立ったクワトロの姿を思い出す。確かにカリスマという点ではシャアに勝る者もそういないだろう。ブライトの知る彼より歳を重ねているのなら、より重厚なプレッシャーを持つ指導者へと変貌しているのかもしれない。
そこまで考えたところで、ふと気付く。そう言えば異世界に来る前の自分は、何をしていたのだったか?
クワトロがエゥーゴの代表となったことは覚えているのに、その後の戦況が曖昧だった。
……
少しアムロに似ていた少年の姿が脳裏を過ぎる。カミーユ・ビダン。Ζガンダムの乗り手。そう、カミーユは、どうなったのだったかーーーしかし思い出せない。
「思い出せないのは、そういう仕組みらしい」
思わず立ち止まったブライトの心境を察したのか、はたまた彼自身にも思い当たる節があるのか、アムロが静かに口を開いた。
「この世界の人たちにとって俺たちはあくまで戦力なんだ。とにかく戦ってもらう必要があって、仲間内でいがみ合っている場合じゃない。いろんな世界から召喚されてるけど、俺とシャアみたいな関係の奴もいるし、それこそ殺し合った奴らもいる。
…
詳しくは聞いてないが多分、過去に死んでいる人も召喚されてると思う」
「
……
そうか」
「だから、召喚される前の記憶が結構曖昧になってる人も多いよ。軋轢を生まないようにしてるんじゃないかな。15歳の俺なんてホワイトベースのこととガンダムと、シャアとラ、
……
そのくらいしか覚えてないし、当時の戦況の進み具合も上手く思い出せないみたいだった」
「
…
アムロ、お前は覚えているのか?その
…
俺たちや、エゥーゴがどうなるのかも
…
」
「ああ。知っている」
でも、言えないんだ。アムロは少し眉を下げながら続けた。『そういう仕組み』なのだと。
「恐らくだが
……
戦いが終わって元の世界に帰る時に、ここでの記憶も消されるんじゃないかと思う。じゃなきゃ、敵味方関係なく、こんなに無作為に召喚するわけないからな。だから
…
まあ、ここでの生活は、夢だと思ってたらいいと思う。都合の良い夢さ」
アムロの瞳は深く静かな色をしている。思わず魅入っていたが、不意に彼の視線はブライトから逸れ、艦の窓へ向かった。外側に広がる宇宙は、ブライトもよく知る自分たちの世界のものとよく似ている。
アムロはじっと暗い宇宙空間を見つめていた。やがて暗闇の中、少しずつ近付く光にブライトも気付く。それは一隻の艦だった。
「
…
帰ってきたな」
ぽつりと落ちた声は、途方に暮れたように揺れている。そのくせ眼差しは焦がれるように、近付いてくる艦から離れない。
ああ、とブライトは頷いた。あの艦にはシャアが乗っているのだろう。きっと34歳のシャア・アズナブルだ。目の前の旧友と同じ時代から来た男。あのアムロにこんな顔をさせるなど、どれだけ時が経とうと因縁とは本当に根深いものだと思わせる。
都合の良い夢ーーアムロとシャアが並び立ち、共に戦い生活する、未知なる異世界。はたして誰にとって都合が良い夢なのか。ブライトは薄々勘付くも、口には出さなかった。ただ諦めるように一度、ため息を吐き出したのだった。
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