ただのかわせみ
2025-07-18 21:09:12
2111文字
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スネフロ南国SS

機体ぶっ壊したスフがリゾートに送り込まれるはなし

「え~~~~」
フロイトの不満そうな声が格納庫に響く。
「いや、隊長が運用計画ガン無視するからですよ」
整備担当の社員がフロイトに言った。
フロイトは運用計画を上回る出撃を行い、結果、整備計画がおじゃんになって部品が足りず、しばらく出撃できないとのことだった。
「部品っていつ来るんだ?」
「AOG(※AC on Ground速達の意)で二か月ですね~」
「二か月!??!?!」

突如、格納庫の扉が開き始めた。オープンフェイスが帰投してきたのだった。
なにやら焦げ臭く、担当整備士がメンテナンスハッチを開ければジェネレータの回路が焼けていた。
「これは……試作武器が出力オーバーしたな?サージでジェネまでやられてる」
整備士がそう言うと、スネイルはため息をついた。
「担当者は一体なにをやっているのです。修理にどれほどかかる?」
「ここのPCB基盤は他の星系で作ってるから二か月くらい来ないね」
「二か月!?!??!?!?」

~~~

ふたりはアーキバス所有のリゾートがある惑星に降り立っていた。
「出撃できないし、有休消化と福利厚生でバカンスかぁ……
フロイトはアロハシャツ姿で砂を踏みしめながら呟く。周りは絶景のビーチだ。
「出撃以外にも仕事はあるのですが」
スネイルは気候に適した軽装ながらも、小脇に端末を抱えていた。
「まあ、今は大きな戦乱もなさそうだしな。温存しておきたいんだろ」
フロイトはスネイルの端末を取り上げる。
「こんなものは没収だ。楽しまないとな」
スネイルの顔を下から覗いて、水鉄砲で撃った。
スネイルは面食らい、濡れた顔を手で拭う。
「何を!」
「油断してたな」
「こんなことをするのはあなたくらいですよ……





フロイトがにやりと笑って言った。
「初撃は俺が取った。次はどうする!?」
スネイルは眼鏡を掛けなおす。レンズが白く光った。
次の瞬間、フロイトは空を舞った。スネイルが首根っこを掴んで海に放り投げたのだ。
波打ち際に盛大な水しぶきが上がった。フロイトは浮かび上がり、真っ青な空を仰ぎ見る。
「お前……やりすぎだろ」
「強化人間に肉弾戦で挑むほうが悪いです」
「ははっ、墜落したのに痛くないぞ!すごいな、水がクッションになってるのか」
「そこで喜ぶんですか、あなたは」
スネイルが波打ち際まで歩み寄ると、フロイトは砂の上に寝転がったまま、じっとスネイルを見上げる。
「なにか文句でも?」
「いや」
フロイトは濡れた前髪を払って、くしゃっと笑った。
「お前といると、故郷にいたときの夏を思い出すよ」
「それは……良い記憶ですか?」
「さあな。でも、今は楽しい。だからいい」

~~~


「飲むか」
ふたりは小さなヴィラのような宿に身を寄せていた。
「なんですか、その液体は」
「酒らしい」
フロイトは瓶を抱えていた。青い液体の中にキラキラとした深緑色の粒子が舞っている。
「怪しすぎます」
「なんでも試してみたほうが楽しいだろ」
フロイトは栓を開け、酒だという液体をグラスに注いだ。
スネイルはまったく、と呟き、眉間にシワを寄せながらもグラスを取った。
カラン、とグラスが触れ合う音がして、ふたりは静かに口をつけた。
口の中に冷たい感覚が広がる。
「妙な味です」
「異国感があって、イイ」
「どんな味でもそう言うんでしょう、あなたは」
瓶が半分ほど空になったとき、フロイトは椅子にもたれかかりながらだらけた声を出していた。
「うん、いい気分だ」
「頬が赤いですね」
「俺が寝たら運んでくれよ」
「甘えるな」

~~~

現地の酒が効いたのか、ふたりは、一人で寝るには大きすぎるベッドに横になっていた。
「懐かしいな。こうやって兄弟と一緒に寝たりしなかったか?」
「うちは仲悪かったので。そういうことは誰ともしませんでした」
「もう家の人間もみな死にましたし……一生そういうことは無いでしょう」
「ふーん……じゃあこうやって過ごすようなやつは俺だけってことか」
「まあ、そうなりますね」
フロイトはひっそりと心の奥で微笑み、スネイルを見つめる。
「俺も、俺の世界に付き合ってくれるのはおまえだけだよ、スネイル」

~~~

スネイルはカーテンの隙間から入ってきた朝日で目を覚ました。
「重い」
スネイルの腕の上にはフロイトの体が乗っかっていた。
起きなさい、とスネイルがフロイトを揺すると、フロイトは少し掠れた声で
……おはよう」
と言った。
スネイルは痺れて石のようになった腕を振りながら言う。
「相変わらず寝相が悪い」
「コーヒーでも淹れるから許してくれ。俺の得意分野だ」
「まさか缶を開けるのが得意という意味ではないでしょうね」
「淹れるって言っただろ。じゃん。買っておいたんだ。ここらへんの名物コーヒー」
フロイトは豆の入った袋を取り出した。パッケージに謎の生物のイラストが描かれている。
「土産に持って帰ろう。オキーフが喜ぶぞ」
……味は確かなんでしょうね」
スネイルの心配をよそにフロイトは湯を沸かす準備をする。こうしてまた一日が始まるのであった。