はくう
2025-07-18 20:36:40
3330文字
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【mhyk】予言の子供が最初に石にするのはフィがいい(よくない)

何かのきっかけでミチルがフィガロを石にしてしまい、その石を食べて莫大な魔力を得たミチルが予言通りの事件を起こしたら最悪だなと思って書きました。
勢いのまま思いついたネタをとりあえず書いた状態なので描写が甘いです。あとでちゃんと完成させたい
※フィガロが最初から石になってます。

フィガロと喧嘩したミチルが魔法を使って、運悪くフィガロを石にしてしまう。
「フィガロ先生……?」
 目の前のマナ石は答えない。
「いつもの冗談ですよね? 全然笑えないです。怒りますよ」
 ミチルは目の前のマナ石がフィガロだったものだと理解していた。これはいつもの冗談じゃない。
 フィガロは石になってしまった。
 そう認めてしまうと、ミチルはとてつもない寂しさに襲われた。フィガロはもうどこにもいない。
(フィガロ先生の、石……
 北の国では、マナ石を食べることが弔いだとミスラから聞いた。ルチルはそんなの酷いと泣きそうな顔をしていたが、今のミチルには北の国で弔う人の気持ちがわかる。大切な人と、ずっと一緒にいたいのだ。
(強い魔法使いの石を食べると飲み込まれるからって禁止されてるけど、フィガロ先生の石なら、大丈夫だよね……?)
 フィガロは南の魔法使いだ。優しくておおらかで、少しだらしないところがあって、治療魔法が得意で、強い魔法は使えない。それが、ミチルの知っている「フィガロ・ガルシア」という男だった。
 ミチルの視界はとめどなく溢れる涙でぼやけていた。ミチルは手探りで冷たいマナ石を漁り、小さな欠片を手に取った。
 フィガロが隠し事をしていることは気づいていた。どうしてレノックスはフィガロのことをたまに「フィガロ様」と呼ぶのだろう。長い時間を生きている双子やオズと家族のように親しげに会話しているのは何故? 南の魔法使いで強い魔法を使えないはずなのに、いつも格好つけて一人で解決してしまうのはどうして?
 それを聞く相手はもういない。ミチルはそれらの疑問を見ないことにして、冷たいマナ石を口に含んだ。

 *

 眠れないミスラを寝かしつけるために手を握っていた賢者が急に連れられた場所には、地獄のような笑い声が響いていた。
「ミチル……?」
「あははは、あはは!」
 笑い声をあげている少年は、本当にミチルだろうか。いつもの優しい彼はどこへ行ったのだろう。彼の足元にはマナ石が散らばっている。ミチルは気が狂ったように笑いながら、泣いていた。
「ミチル、あなた……フィガロの石を食べたんですか!」
 ――フィガロの石?
 焦ったようにミチルに駆け寄るミスラが発した言葉が、賢者の思考を鈍らせる。フィガロとは、南の魔法使いの、あのフィガロのことだろうか。つまり、ミスラはそこに散らばっているマナ石が、フィガロだと言ったのだろうか。
 賢者はこの世界に詳しくないし、魔法も使えない。魔力であれがフィガロだと感じることは出来ない。世界最強のオズの名がいろいろなものに付けられているように、フィガロの名前もつけられているのだろうか? 「オズの爪痕」みたいに、「フィガロの石」という何かがあるのだろうか?
 何も出来ず突っ立っていると、黒い突風が吹く。いや、違う。ファウストだ。冷静沈着な東の先生役の彼がこの場に走ってきたのだ。彼のサングラス越しの紫の瞳が、驚愕に揺れる。
……フィガロ様…………
 石を見て、ファウストは確かにそうつぶやいた。そこで賢者はようやく確信した。あのマナ石はフィガロらしい。北の魔法使いとして長い時を生き、今は南の魔法使いとして生きていたフィガロは、何故か石になってしまった。賢者はスクリーン上の映画のように現実味を感じなかった。フィガロの石の横で笑い狂っているミチルも、彼の肩を掴んで名前を呼ぶミスラの声も、どこか遠い。
「ちょっと、見てないで手伝ってくださいよ。フィガロがいない今、誰がミチルを助けてやれるんですか?」
 賢者と同じく呆然としていたファウストは、ミスラの声で目が覚めたらしい。ミチルの名前を呼びながら彼に駆け寄る。
「フィガロの石を食べたのか? 意識が飲み込まれかけている」
「多分ね。まったく、あの人が南の弱い魔法使いの振りなんてするから、こんな厄介なことになるんですよ。この兄弟に強い魔法使いの石を食わせるなって言ったの、あの人なのに」
「言ってる場合か!? ミチル、僕の目を見なさい。魔力に飲み込まれてはいけない。ミチル、自分の名前を思い出すんだ」
「ファウスト……
 子供が見たものの名前を呼ぶように、ミチルはファウストの名前を呼んだ。虚ろなその声は、先の見えない穴を覗いているような心地になる。それを間近に見ているファウストは一切動揺せず、力強く頷いた。
「そうだ。僕はファウスト。自分の名前は言えるか?」
「ファウスト、ファウスト!」
「それは僕の名だ。君の名前はミチル。ミチル・フローレスだよ」
「ミチル、あなたね。二度も同じことをしないでくださいよ! ミチル、ミチル!」
「ミ…………う、う、うわあああああん!」
 ミチルは突然泣き出し始めた。子供のように泣き叫ぶミチルの名前をミスラとファウストが呼ぶ。感情の制御が出来ていないミチルを目の当たりにして、賢者の背筋が寒くなる。賢者の魔法使いは一人減ってしまった。目の前で、もう一人減ろうとしている。
 何かしなきゃ。でも、自分に何が出来るのだろう?
 ミチルを押さえつけるのに忙しそうな二人に声をかけるのを躊躇っていると、背後から軽い足音が二つ聞こえた。
「スノウ、ホワイト」
 振り返った先に、想像した通りの双子の魔法使いの姿があることに賢者は安堵した。この魔法使いは魔法舎で一番長く生きている。きっとこの場を救ってくれるはずだ。双子は賢者に微笑みかけた後、この場の惨状を見据えた。
「ミチルよ。フィガロを石にしてしもうたのか」
「あやつも南の魔法使い。運命には逆らえなかったのじゃな」
 この空間で、彼らだけが冷静だった。まるで、いつかこうなることをわかっていたように。
「どういうことですか……?」
 双子が笑みを浮かべる。可愛らしいはずのそれが、ひどく恐ろしい。スノウとホワイトの小さな唇が交互に言葉を発する。彼らの黄色の瞳は星のように不思議に光っているように見えた。
「我ら、チレッタが身籠っていたときに、予言をした」
「チレッタが次に産む子は、いずれ南の魔法使いを滅ぼす」
「そして生まれたのが、ミチルじゃ」
「ミチルの命と引き換えに、チレッタは石になってしもうた。次はフィガロか」
「寂しいのう」
「悲しいのう」
 賢者と、ミチルを救おうとしている二人の魔法使いたちは、言葉を失った。ミチルが、南の魔法使いを滅ぼす? そんな馬鹿な。ミチルが、ミチルのものとは思えない声をあげる。
「それにしても、フィガロの石を食べるとはの」
「ミチルが魔力に飲まれんかったら、強大な力を手に入れるじゃろうな」
 それこそ、南の魔法使いを滅ぼせるくらいの。
 ミチルはそんなことをする子ではないのは、これまで一緒に過ごしてきたから十分わかる。でも、今暴れてるミチルを見ると、彼が本当に南の魔法使いを全員石にしてしまうのではないかと疑いが生まれる。
「賢者」
「賢者よ」
「は、はい!」
 スノウとホワイトに呼ばれて、賢者は背筋を伸ばす。双子の手には、魔道具の人形が握られている。
「我ら、これでもフィガロの師匠での。弟子が果たせなかった仕事は引き継ぐつもりじゃ」
「今のミチルは、南の魔法使いを全員石にするやもしれぬ。フィガロはこうなったとき、ミチルを石にするつもりじゃったろう」
「今から、賢者の魔法使いがもう一人いなくなる」
「すまんのう、賢者」
「ま、待って……
「させませんよ」
 賢者が双子を止めるよりも先に、ミスラが立ちはだかる。ミスラはチレッタと約束をしている。ミチルを守れなければ、ミスラの魔力は失われる。
「ミスラよ、そこを退くのじゃ」
「嫌です」
「僕も、ミチルを石にするのは反対だ。まだその予言が現実になるか、わからないだろう」
 ファウストがミチルを双子から隠すように抱き寄せる。ミチルが楽しそうな笑い声をあげる。
「そうですよ。もしかしたら、予言を回避する方法が見つかるかもしれませんし」
 賢者の言葉に、スノウとホワイトは目を細めた。
「我らの予言は外れん」
 声を揃えた双子の言葉が、不吉に響いた。