夢子レイモンドさんと出会ってから、あっという間に月日は経ち。
ふとスタジアムの裏の公園に再び訪れてみた。
あれから何度かフェニックス兄弟の試合のチケットを購入しようとしたのだけれど、人気があって手に入らなかったのだ。
「だからといって、ここに来ても仕方ないと思うんだけど
…」
あの時と同じように缶コーヒーを飲みながら、幸せそうに遊ぶ家族連れをボーッと眺める。
「また会えるかも
…って
…期待するだけ無駄だよなぁ
……」
ブラックスピネルのブレスレットに話しかけるように小さく呟く。
そんな時
……トントンと肩を叩かれ振り向くと、そこに立っていたのはサングラスはしているが
…この眩しいくらいの赤毛と鍛え上げられた身体
…忘れもしないマッドフェニックスことレイモンドさんだ。
「よう!久しぶりだな!」
サングラスを外すと、相変わらず人懐こい笑顔で言った。
「
……えっ?本物!?どうしてここに?」
私は思わずベンチから立ち上がり、彼を見上げる。
「ん?あぁ
…今日は打ち合わせで来てて、仕事終わりにランニングでもしようかと思ったら
…見覚えのあるブレスレットと面が見えたからよ」
そう言うと彼はベンチにドカッと座った。
そして、立ち上がったままの私を見上げながらニヤリと笑う。
「そのブレスレット
…つけてくれてるんだな」
「あ
……はい。お守りみたいな物なので
…」
私はブレスレットに触れて微笑む。
それを見た彼は嬉しそうに笑い、
「俺も、またお前に会えて嬉しいぜ」
そう言って私の頬に手を寄せると、軽く撫でる様にして離れていく。
(あれ?
……私、なんでこんなドキドキしてるんだろ?)
そんな私に気付かないのか、彼はサングラスをかけ直すと前を向いたまま話を続ける。
「お前
……あの時、俺の試合観に来てただろ?」
「え?なんでわかったんですか?」
私は驚いてベンチに座ると、彼の肩に触れる。
彼はチラとこちらを見てフッと笑うと、また前を向く。
「試合中、たまたま視線の先にキラキラした顔で両手を握りしめて応援してくれてたヤツがいてさ
…」
「えっ
…?」
まさかあの時の自分に気付いてくれていたなんて思っていなかったので、思わず恥ずかしさで赤くなる。
そんな私を見て彼は続ける。
「なんでか、その日だけは
…ソイツの真剣な
…でも興奮した様な顔が忘れられなくてな
…公園で出会った時は驚いたぜ」
「その節はお見苦しい所を見せてしまいまして
…」
私は恥ずかしすぎて俯くが、彼は気にした様子もなく言った。
「俺は嬉しかったけどな。お前みたいな
…見た目だけじゃなく、試合を楽しんでくれる熱心な女子ファンは珍しいからな」
「そう言ってもらえると嬉しいんですけど
…本当は最初からファンだったわけじゃないんです。初めてプロレスの試合を観た初心者だったんです」
にわかすぎて申し訳なく、彼の顔が見られない。
「でも、心から楽しんでくれてたんだろ?」
その言葉に一瞬彼の方を向くと
…膝の上に肘を立て、頬杖をつきながらこちらを見つめている。
「はい。正直、興奮しました。想像していたよりも、アクロバティックで
……カッコいいな
…って
…!」
わ、私
…何言って
…。
慌てて口を押さえるが、彼は嬉しそうにワハハと笑う。
「俺達ルチャドールのスタイルは、派手さが売りだからな♪」
そんなやり取りをしていると
……突然彼は立ち上がり私の腕を掴んで言ったのだ。
「
……なぁ、この後時間あるか?」
「へっ!?えっ
……あのっ!?」
急な事に驚いている私に、構わず彼は続ける。
「俺の泊まってるホテル来いよ。ルチャドールがどんなものか教えてやるぜ!」
「いやっ!その
…でも
…」
私は首をブンブンと振り断るが、彼は腕を掴んだまま言う。
「だから
…興味ねぇのかよ?
……ルチャドールにも
……この俺にも」
ニカッと笑い。サングラス越しでもわかる程ギラギラとした瞳で見つめてくる彼にドキッとする。
「俺さ、女子でプロレス自体に興味持ってくれて
…レスラーとしての俺を好きになってくれるヤツがいるって、スゲェ嬉しいわけ!そんなヤツには、もっと楽しめる様に教えてやりたいんだよ!」
そして、更に顔を近づけてくる。
「なぁ
……ダメか?いいだろ?試合の映像もいっぱいあるぜ?」
彼の熱心な眼差しに
……思わず頷いてしまった。
******
彼に連れられてやってきたのは、スタジアムから少し離れた場所にあるホテルだ。
中に入りフロントに軽く手を上げ挨拶すると、私の腕を引いてエレベーターに乗り込んだ。
そして部屋に入るなり、私をベッドに座らせテレビのスイッチを入れる。
画面には激しい動きで闘う彼等が映し出される。
「スゲェだろ?ルチャドールってのは、こうやって派手に飛び回って魅せる試合をするんだ」
私の隣にドカッと座り画面の説明をする。
これはこういう技、このタイミングが難しい
…など一生懸命解説をしてくれている。
そして今度は
…私の肩を抱きグッと引き寄せ、興奮した様に画面を指差す。
「見ろこれ!この時の試合が凄かったんだぜ!額を3針も縫ってさ
…」
「
……っ!」
彼との距離がゼロになり
…私は思わずビクッと体を震わせる。
彼はそんな私に気付いて言った。
「あ
…悪りぃ!つい興奮しちまって
……」
そして私から離れようと立ち上がるが、私は思わず服の裾を掴んでしまった。
「あのっ!違うんです!」
彼は驚いた様子でこちらを見て言う。
「
……ん?何がだ?」
自分の行動に驚くと同時に、恥ずかしくなり俯きながら呟く。
「その
……嫌とかじゃないんです
……逆に色々知れて嬉しかったです
…ただ
…」
スカートをギュッと握りしめながら、呟く。
「ただ
……その
…レイモンドさんの逞しい体とかくっついて
…こんなに近いと
…恥ずかしくて
……」
真っ赤になりながらも、なんとか彼に気持ちを伝えようとする。
彼はそんな私を見つめ、暫く黙っていたが
……やがてゆっくりと口を開いた。
「
……お前さ、彼氏とかいねぇのか?」
そんなストレートな質問に思わずドキッとするが、私は素直に答えることにした。
「いないですけど
…」
彼は私の答えを聞くと、何故かホッとしたように息を吐く。
そして真剣な表情で言ったのだ。
「お前
…筋肉好き?」
「
……へ?」
(な、何を言って
……??)
私が混乱しているのをよそに彼は続けた。
「プロレスで怪我をしない為には筋肉は絶対に必要だし。密着して恥ずかしがるくらいなら、好きなんだろ?」
急に筋肉談義を始めたかと思うと、ニカッと笑って上着を勢いよく脱ぎ始める。
「え!?ちょっ
…!」
シャツの下から現れた肉体美に思わず目が釘付けになる。
着痩せするタイプなのか、思ったよりも筋肉質で逞しく
……ゴクリと唾を飲み込む。
そのままズボンのベルトに手をかける彼を見て慌てて止める。
「わわわ!ちょ、ちょっと待って下さい!」
「あ?なんだよ?」
「なんで脱ぐんですか!?しかも下は
…脱がなくても
…」
そんな私の反応を面白がるようにニヤリと笑うと、私の手を取り
…胸筋の辺りに触れさせる。
「どうだ?これが筋肉の鎧だ。確かめてみろ
…」
そう言いながら胸筋から腹筋にかけて私の手を滑らせる。
筋肉質な厚い胸板から見事に割れた腹筋の感触にドキドキしてしまう。
「うっ
……わ
……」
思わず手を引っ込めようとすると、今度はそのまま腕を引かれ彼の胸にダイブしてしまった。
「あっ
…!」
慌てて離れようとした時にはすでに遅く、私の体はすっぽりと彼の腕に収まってしまう。
そして耳元で囁くように言われた言葉に私は更に動揺する事になるのだ。
「なぁ
……なんで赤くなってんだ?もっと色々触っていいんだぞ?」
「えっ!?いえっ!そのっ!」
焦って離れようとするが、彼は私の体を更に強く抱き寄せる。
「
夢子……俺さ、お前の事
…もっと色々知りてぇな
……」
そう熱く見つめられ
…心臓の速さとは反対に、時が止まった気がした
……。
はい、今回はここまでです!
これ以上は皆様に引かれたくないので、自重して終わりにしますw
怖いもの見たさ
…そして貴女も好きね~♪な方が、万が一いらっしゃる場合はパスワードやXの裏垢で載せる
…かどうか考えたいと思います。
それでは、ここまでお読み頂きましてありがとうございました!
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.